酷く蒸し暑い夏、
天使は死んだ。
とある少女にお願いをして
彼女は醜く朽ちていった
これは、天使に託された少女が、幸せを届ける物語。
第一話 『 誰かの天使が堕ちた日。 』
バサッ
來
白髪青目の謎の少女。
彼女の名は來(らい)。
とある天使に創られた、要らない少女である。
さて、突然だが………
さっき、彼女は何故「最悪だ」と言葉を溢したのだろうか。
答えは簡単。
“天使の罪を背負わされたから”だ
彼女、來を創り出した天使………“朱想(しゅそ)”とは
それはもうお人好しで、馬鹿な天使であった。
困っている人は無視出来ず、どうしても救ってしまう…………
そのせいで自分の魂を削っていることに気付かずに、朱想はずっとそんな生活を続けていたのだ。
だから、朱想は堕ちた。
自分の本当にやりたい事に気付かずに、人生を終えた。
來
最期まで、朱想はお人好しのままで
來を創り出し、紙切れを渡して
「ごめんなさい、頼んだよ」
そう言い残して、堕ちてしまった。
そこからはもう大忙し。
朱想のこれまでの記憶が、全て來の物となる。
妖精、AI、悪魔、人間………
名前が、性別が、年齢が
趣味が、特技が、好物が
家族構成が、頭脳が、人間関係が
細かい情報も全て、來の脳に送り込まれて行く。
勿論、激しい痛みと共に。
割れるような頭痛に5分ほど耐えても、記憶はずっと送り込まれてくるし、頭痛は止まらない。
………遂に気絶した來が、次に目を覚ましたのは三日後だった。
目を覚ますと、たくさんの記憶が頭の中でぐるぐると廻っている気がしたが…
気持ち悪く感じながらも、机に置かれた紙切れを手に取る。
來
來
こんな事をして、何の良いことがあるのか。
内心そう思っていたが、創ってくれた朱想には逆らいたくない。
來
來
來
そう、語りかけるように來は呟いた
もう二度と会えないことは分かっているのに。
來
この日から、來の、“やり残したリスト”を埋める旅が始まった__
続く