テラーノベル
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小さい頃は憧れの的の警察官も、 成長していくにつれて、恐ろしく見えるのはなぜだろうか。
きっとそれは、自分に罪の意識があるからなのだろうか。
それとも、自分にはもったいないくらいには真っ直ぐで、それぞれに正義を掲げているからだろうか。 眩しくて眩しくて、自分が惨めに見えてしまうからだろうか。
蘇枋
小規模なチームの抗争を高い場所から低いフェンス越しに見下ろす、1人の男がいた。 黒い上着のフードを深く被り、 高みの見物をするように、殴り殴られを繰り返す愚かな人間たちを、その冷たくも、赤い瞳で見下ろしていた。フードからちらりと覗く、赤い勾玉が着いた黄色いタッセルのピアスが、光の反射を受けて小さく光っている。
蘇枋
桜
薄暗く、少し広さのある路地裏。殺伐とした空気に飛び込んできたのは、眩しすぎるくらいに真っ直ぐな一人の人間。
白と黒とで半々に別れた髪に、 蜂蜜のようなキラキラとした琥珀色の瞳と、透き通り、ほんのり青さが見える、黒曜石のような瞳を睨ませて、抗争中の少年たちを逃がすまいと、唯一の逃げ道を、仁王立ちで立ち塞がる、警察官がいた。
その職業特有の制服を見た途端、 誰だ誰だと振り上げる拳を止め、ある1人を見つめていた少年たちが、顔色を変えて我先にと逃げ去ろうとしていた。
1人は彼を力でねじ伏せようと拳を振り上げ、1人は彼の隙間から逃げようと。その誰もが、警察官に捕まらないよう今できることを考えていた。
蘇枋
ただ高みの見物をしていた1人の少年は、逃げることもなくただ逃げ惑う少年と、1人の警察官の姿を見つめていた。
警察官は、少人数ではあれど、人数不利な状況だ。それでも、差なんて気にしないというふうに、圧倒的な力で、少年たちを最低限傷つけないように拘束して行く。
桜
桜
あっという間に少年たちを制圧した警官は、戦ったあとだと言うのに、ただじゃれあっただけだと言わんばかりに、涼しい顔をしている。さすがだと言うべきか。
桜
桜
ズボンのポッケに入っているスマホを取りだした警官は、誰かに通話をし始めた。 悪さをしていた少年たちは、1度署に連行され、話を聞かれるのだろう。
数分すれば、あの警官と仲が良さそうな黄色いたんぽぽの様な髪色の警官が来た。 少し話したあと、少年たちを連れ、この場を去っていった。 この場に残ったのは、白黒頭の警官と、面白いものを見るように景観を見つめる少年のみだ。
桜
蘇枋
蘇枋
蘇枋
フェンスをかるく飛び越え、奥から出てきたのは、ニコニコと貼り付けたような笑みを浮かべ、腕を後ろで組んで優雅に歩く1人の少年だった。
深く被っていたフードを下ろし、桜にだけ己の姿を明かした。
桜
蘇枋
蘇枋
蘇枋の話を聞いて、何度目かは分からないため息を着いた。いつも蘇枋と会う度に、この人は大きなため息を漏らす。
桜
蘇枋
桜
お前は俺が行くところにはだいたいいるだろ。特にこういう未成年が喧嘩をしているところにはな。と、その美しい横顔が呆れたような顔をした。
お互い軽口を叩いて和やかな雰囲気に見えるが、隙など一切なく、桜が蘇枋を捉えようとすれば、本気で技をかけられるか逃げられるかだし、蘇枋が桜を倒そうと仕掛けても、桜は簡単に交わし蘇枋を押さえつけ、捉えてしまうだろう。
それでも傍から見れば友人のように見えるかもしれない。
この少しの緊張感、空気のゆらぎは、お互いにしか分からないのだろう。
蘇枋
桜
そういった桜の腹あたりから、ぐぅ、といった音が聞こえてきた。あたりの暗さから夜に見えるかもしれないが、本当ならば今は昼時、お昼ご飯を食べていてもおかしくはない時間だろう。けれどここにいるということは、お昼を食べ損ねているのだろう。
蘇枋
蘇枋
桜
桜
蘇枋
ニッコリ笑って返せば、少し間が悪そうに、あー、という声が少し上から聞こえてきた。 並んで歩くと、そう身長差はないものの、桜の方が、少しだけ身長が高い。
桜
蘇枋
蘇枋
少し前、彼が好きだと言っていたサボテンのパン屋さんで、カレーパンを1つ買った。 自分が食べる訳でもなく、ただこの人に渡す為だけに。
この人は凄く、美味しそうにご飯を食べるから。
桜
蘇枋
蘇枋
美味しそうな見た目のパンに、ごくりと隣を歩く桜が唾液を飲み込んだ。もう一度力なく、お腹から情けない音がなり、 じっとカレーパンを見つめている。
蘇枋
桜
桜
蘇枋
少しだけ頬を赤らめて、カレーパンを受け取った桜は、袋を開き、豪快にパンを頬張り始めた。少し冷めているだろうが、それでも美味しそうにパンを食べている。少しのパンの匂いと、美味しそうなカレーの匂い。桜の食べっぷりにこちらまでお腹が空いてきそうだ。
蘇枋
桜
たしかにこの商店街のあちこちは、とてもいい匂いで広がっている。町の人間もいい人達ばかりで、この街は本当にいいところなのだとわかる。
桜
蘇枋
蘇枋
桜
桜くんは、必要最低限何も聞いてこない。 どこの学校だとか、昼間っからこんな怪しげなところで何をしているだとか。
初めて会った時も、そんな感じ。俺が何も関係してないと聞けば、それ以上は何も言わなかった。ただ他愛もない話をして、その場で別れる。最近はそれの繰り返しだった。
桜
桜
蘇枋
路地裏から出て、そこで俺たちは解散した。 きっとまた会うだろうが、桜くんはまたねとは言わない。そりゃそうだ。彼の行く先々は危険な場所なのだから。合わない方がいいに決まっている。けれどまた、俺は彼との出会いを求めて、フラフラ歩き回るのだ
蘇枋
誰にも聞かれていない小さな独り言を残して、フードをかぶり直した少年は人混みに紛れ消えていった。
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皆様お久しぶりです。どっかの誰かさん。です。初めましての方は初めましてですね。元アカウントには戻れそうになかったのと、書きたい物語が新たにできてしまったので、時間が出来た今、投稿させて頂きました🙇🏻♀️暫くは忙しい日々が続きそうなので、投稿頻度は本当に遅いのですが、気長にお待ちいただけると幸いです。 私のお話が、また誰かの心に届くことを願って、少しづつ頑張りたいと思います🙇🏻♀️