今世の命運は

続く沈黙

大勢の人がいるのにも関わらず

ちくたくとすすむ時計の針

ぽちぽちと鳴るスマホの操作音

誰一人も喋ろうとはしない

落ち着かない者

寝る者

怯えるもの

じっと待つ者

1人が立ち上がると視線が集まる

期待をしたのか 驚いたのか

ひとつ 音が鳴った

数々の生活音の中からはっきりと聞こえた音

ドアの音

がちゃりと鳴って開く

声のする方向を皆が見る

特に体に支障はなさそう

喋るのが憂鬱そうで

難しそう

笑う顔はあの頃と同じで

顔がいいなとつくづく思う

鼻がつんとする

痛々しい傷跡

包帯を体に巻いて

暗い目をしている

目の下には隈がある

手の甲にはボディステッチがしてある

ポケットには刃が出ているカッターが数本入っている

絆創膏がところどころに付けてある

ポケットの反対側には薬の入った瓶

からからと音を立てて不気味

首には赤い痕があり

よく見ると手の形をしている

目を見ると涙が出ていた君

膝から崩れ落ちた桃色の印象の君

にこにこと笑っていた不気味な笑顔は

自然な笑顔で可愛らしかった

ずっと

俺のせいで

悲しませてしまったな

夢を終わらせてしまったな

こんな姿に

こんな心に

してしまった私をどうか許してください

俺を見る目は

カメラを向けるような目じゃなくて

優しくて

心地よくて

安心するようで

懐かしくて

忘れらなくて

大好きな目だった