とある物書きの挑戦譚　【第一期】

第15話

とある物書きの挑戦譚【番外編】#3 ハッピーバースデー！アレン、アーク！

429

2021年07月10日

#ファンタジー

#転生

#転生モノ

#なんで？

#異世界転生

#異世界

シゼ

お兄様、

シゼ

クリームはこれくらいでよろしいでしょうか。

マーキス

うん。

マーキス

それをオーブンで30分ほど焼いて盛り付ければ完成だよ。

シゼ

上に乗せるクリームはこれですか？

シゼ

綺麗な紫色をしていますが…

マーキス

酸味の効いたベリーパウダーを入ってるからさ。

マーキス

メインのブドウの甘味を引き立てるためにカスタードの代用として用意したんだ。

シゼ

なるほど…分かりました。

シゼ

お兄様はすごいですね。

シゼ

お菓子作りがここまでお上手だとは思いませんでした。

マーキス

授業で作ったことがあるから慣れてるだけだよ。

マーキス

僕の行っていた寄宿学校では先輩との親睦会に向けて一年生がケーキを作るんだ。

シゼ

そうなのですね。

シゼ

（マーキスって料理男子だったんだ。インドア派とは聞いてたけど、意外…。）

シゼ

（しかも私より手つき良いし、知識もある。）

マーキス

シゼ。

シゼ

！

シゼ

はい。

マーキス

お城のことは考えてくれた？

シゼ

！！…

シゼ

…ごめんなさい、まだ答えは出せません。

マーキス

そっか。

マーキス

……まぁ、

マーキス

ゆっくり考えるといいよ。

シゼ

はい…すみません。

マーキス

謝る必要はない。

マーキス

それより、

マーキス

このタルトのことなんだけど

マーキス

もしイチゴのタルトを作るとなったらクリームは…

ガタガタガタッ！

（何者かが入ってくる）

シゼ

！

マーキス

なんだこの音…牛の大群でも入ってきたのかっ？

バタンッ！

（ドアが開く）

アレン

お嬢様ぁっ！！

アーク

見つけた…！！

シゼ

！…アレン、アーク。

マーキス

！

アーク

…。

アーク

（まさか店のほうにいたとは。）

アーク

（家の方にあった長男様のスケジュールメモの通りだな。）

アレン

お嬢様！

アレンがシゼに飛びつく

シゼ

おぅっ…。

アレン

お嬢様！…本当によかった。

アレン

大丈夫でしたか？…お怪我はありませんか？

シゼ

？

シゼ

う、うん…。

アーク

お嬢様。

シゼ

！…

アーク

今日は一日、私とアレンに何も言わずに何をしていたのですか？

アーク

おかげでこちらは家中を探し回り、

アーク

倉庫から屋根裏部屋まで行くはめになったんですよ。

アーク

…。

アーク

私達がどれだけ心配して、お嬢様のことを探したのかお分かりですか…！

（アークが珍しく怒鳴る）

シゼ

！…

アレン

アーク…。

マーキス

…それはおかしいな。

マーキス

出発前に僕が侍女に伝えたはずなんだけど。

アーク

！…

アレン

えっ…。

マーキス

2人とも一旦落ち着くんだ。

マーキス

今お茶を用意するから

マーキス

そこに座ってゆっくり話そう。

マーキスが説明したのは以下の通りだった。

マーキス

“掃除の後にアレンとアークのバースデーケーキを作りたい”

マーキス

それで来週の掃除を従者の代わりにやりたいのかい？

シゼ

はい。

シゼ

あそこには賄いを作る用のキッチンがありますから。

マーキス

なるほどね。

マーキス

でも、ちっさい君1人で料理なんてできないだろう。

マーキス

第一、材料はどうやって調達するつもり？

シゼ

昨日道案内した旅人の方からお金をいただいたのでそれで調達します。

シゼ

料理は簡単なレシピを元に作るので大丈夫です。

マーキス

…。

マーキス

ちなみに何を作るつもりだい？

シゼ

イチゴのタルトを作ろうかと。

マーキス

だめだ。

シゼ

！…

マーキス

暑いこの季節、イチゴは旬を過ぎてしまっている。

マーキス

使うならイチゴのよりブドウの方が美味しく仕上がるよ。

シゼ

な、なるほど…。

マーキス

それにタルトは簡単そうに見えて手間がかかる部分もある。

マーキス

僕が美味しいタルトの作り方を教えよう。

マーキス

その日は確かうちの店が休む日だったから…

マーキス

アレンとアークの誕生日の日、朝ごはんを食べたら僕と一緒に出かけよう。

シゼ

えっ…

シゼ

でも…お兄様…。

マーキス

いいからいいから。

マーキス

シゼがもし失敗して火事でも起こしたら大変だし、

マーキス

リアーナかシゼにはいつかタルトの作り方を教えようと思ってたんだ。

マーキス

タルトのレシピを持ってくる。

マーキス

ちょっとそこで待ってて。

シゼ

は、

シゼ

はい…。

そして当日

マーキス

…シゼ。

マーキス

その服は僕のお下がりじゃないか。

マーキス

靴もボロボロだし、

マーキス

他のものはないの？

シゼ

ありません。

シゼ

可愛いやつがあったんですけど、たぶんお義姉様に奪われました。

シゼ

…ごめんなさい。

マーキス

…。

マーキス

よし、買いに行こう。

シゼ

えぇっ…。

マーキス

人をもてなすときは自分も綺麗に着飾らなきゃだめだ。

マーキス

こっちにおいで、抱っこしてあげよう。

マーキス

その靴では足を怪我しそうで怖い。

シゼ

え、

マーキス

よっと。

ガシッ！

シゼ

うわっ…！

マーキス

それじゃあ行こう。

アレン

…つまり、

アレン

お嬢様は私達の誕生日を祝うための準備をしていたと。

マーキス

そういうこと。

マーキス

でも、

マーキス

僕の侍女が伝えてなかったのは申し訳なかったな。

マーキス

あとで注意しておくよ。

マーキス

あ、

マーキス

シゼ…そろそろ焼き上がったんじゃないかな。

シゼ

はい。

アーク

…。

アーク

お嬢様…。

シゼ

お兄様、ここにさっきのクリームを乗せるので合ってますか？

マーキス

あぁ、合ってるよ。

アレン

…。

アレン

アーク、早いとこ謝っときなよ。ｺｿｯ

アレン

お嬢様、折角お祝いしようとしてくださってるのに怒られたからきっと傷ついてるよ…。

アーク

…うん。

シゼ

……。

シゼ

よし、出来た…。

マーキス

お疲れ様、シゼ。

マーキス

じゃあ持っていこうか。

シゼ

はい。

アレン

わぁっ！美味しそう！

アレン

ベリーのいい匂いがします〜。

マーキス

焼き立てで生地が熱いだろうから、おしゃべりをしながらのんびりいただくとしよう。

シゼ

……。

アーク

…。

シゼ

ア、アーク。

アーク

はい…。

シゼ

お誕生日、おめでとう。

シゼ

…心配かけてごめんなさい。

アーク

！

アーク

…いえ、

アーク

こちらも、すみませんでした。

シゼ

あのね。

アーク

はい。

シゼ

いつも面倒見てくれてありがとう。

アーク

はい。

シゼ

今日はねお兄様の力もあるけど、初めてタルト作ったの。

アーク

はい。

シゼ

…食べてくれる？

アーク

…はい。

アレン

ちょっ、お嬢様！

アレン

私には何かないのですか？

シゼ

あるに決まってるよ。

シゼ

アレンがいないと毎日楽しくないし、

シゼ

アークと同じくらい感謝してるし、

シゼ

明るくて優しくて、すっごく頼れるアレンには何回も助けられてきたし

シゼ

お世話してくれるお姉さんがアレンでよかったって…いつも感謝してるんだよ。

シゼ

でも、2人一気に言うとさ…

シゼ

うわぁっ！

アレンとアークが同時にシゼに抱きつく。

シゼ

うぐぐ…

アレン

お嬢様…っ！

アーク

お嬢様…っ！

シゼ

ほらぁ…

シゼ

ごうじでぐるから、ぐるしくて喋れない…（こうしてくるから、苦しくて喋れない）

アレン

お嬢様ぁ…うぇへぇえええん…。

アーク

…うぅ…ッ。

シゼ

あ、

シゼ

暑い…。

マーキス

…。

マーキス

はいはい、2人とも離れて。

マーキス

折角タルトが出来たんだ。いただくよ？

アーク

！…すみません、長男様。

アレン

はぁい…。

マーキス

さ、シゼ。

シゼ

うん。

シゼ

アレン、アーク。

シゼ

お誕生日おめでとう、これからもよろしくね。

アレン

はい！

アーク

…はい。

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マーキス様がいい人すぎて泣いた

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