こんにちは
今回は、ピースさんのコンテストに応募をさせて頂きます
本当は今回は見送らせて貰おうと思ってたんですが頭にネタが降ってきたもんで
前回賞を貰ったので2連続獲得目指して頑張ります
今回も今出てる分他の方の読ませて頂いたんですが、やっぱりエ○系が多くて
また浮かないか心配です(
では、はじめにいつも通り注意書き
この話はskfnの二次創作です。ご本人様に関係ない事を理解してください
コメントをする際は、検索避けをしてください
スクショ、拡散などの迷惑行為はやめてください
地雷さんはUターンお願いします(赤水)
では、お話スタート
2✘10年 7月
青空の下、4歳児の元気な声が響く
なつは友達数人と母親と、公園に遊びに来ていた
なつ
なつ
遠くの方でいいよと声が聞こえ、なつは伏せていたベンチから顔を上げた
なつ
なつ
なつ
ふと目に入ったブランコには、見覚えの無い子供が座っていた
その目はぼーっとどこかを見つめている
空の他人なのに、初めて見る彼が無性に気になって仕方がなかった
こさめ
ふいに、男の子が地面を蹴ってブランコごと宙に浮く
でもその顔は無表情で、何を考えているのか分からない
なつにとって大切な遊び場の公園でつまらなそうなのは、意外だった
なつ
こてっ、と首を傾げるなつだが、4歳の幼い頭では何が原因なのかなんて分かるはずもなかった
遊んでいる最中だが、心の中で謝ってブランコの子に近づいていく
なつ
1度呼びかけても、顔はなつの方に向かなかった
手すりに捕まって、身を乗り出してやっとなつに気づいたようだ
ブランコを降りて彼の方からも近づいてくる
なつ
なつ
水色の服を着た男の子は、少し笑ってこう言った
こさめ
こさめ
なつ
何を言っているか分からない、という顔をするなつ
その顔にまた少し笑って彼はこう言った
こさめ
なつ
なつ
思考を読んだのか、聞かれると思っていたのか
なつが口を閉じた後に、彼は声を出す
こさめ
こさめ
なつ
※3歳程になるまでに専門の訓練を受けると基本的な言葉を話せるようになるそうです
なつ
にこりと笑った子供は、たどたどしくもしっかりと発声する
こさめ
なつ
こさめ
なつ
名前が分かり、満足そうに頷くなつ
その時、後ろから友達の声がした
なつ
なつ
友達とこさめを交互に見るなつに、にっこり笑って手を振るこさめ
こさめ
なつ
なつ
なつ
なつ
こさめ
次の日
なつ
どやぁ...と効果音が付きそうな顔でこさめの前に立つなつ
今日もいつも通り、友達と遊びに来た...という訳では無さそうだ
周りには知らない子供しかいない
こさめ
首をかしげ、昨日と同じブランコからなつを見上げるこさめ
なつは、相変わらずのドヤ顔で右手の人差し指と中指を額に当てる
そして、胸の前で両手の人差し指を立てた状態からくいっと曲げた
そしてドヤ顔
なつ
驚いたように目を見開くこさめ
更になつは自分を指さし、手のひらに親指を当てる
なつ
ピースを下に向けた形、薬指と小指以外でOKサインのようなものを作った形
なつ
なつ
なつ
にかっと笑うなつに、こさめはぱっと目を輝かせた
なつより手馴れた様子でぱぱっと手を動かす
だが、あいにくなつが練習したのは自己紹介が出来るくらい
なつ
こさめが動かした手の意味を理解するにはまだ早かった
なつ
なつ
しょんぼりとした表情を見て察したのか、こさめはなつの手を取ってじっと見つめる
こさめ
なつ
こさめ
なつ
なつ
なつ
思い切り声を出した後に、耳が聞こえない事を思い出し、ジェスチャーで伝えようとする
まずは腕を曲げて走るようなポーズをする
なつ
なつ
こさめの肩に手を置いて
なつ
なつ
若干不安そうにこさめを見つめるなつと裏腹に、きちんと伝わった様子でこさめは数を数え始めた
こさめ
なつ
さすが子供、ひゅんと腕を降ってあっという間に逃げていった
こさめ
こさめ
こさめ
なつ
今まで走った反動から、2人揃って芝生に寝転ぶ
息を整えながら、こさめはなつの顔を見て声を出した
こさめ
なつ
なつ
ぴっとこさめを指さし、頷くとこさめはニコリと嬉しそうに笑った
2✘21年 4月
あれから11年。高校入学、初日。
高校でもこの腐れ縁は切れないらしい
こさめと俺は、またもや同じ学校同じクラスで高校生活が始まった
担任の教師が入学したてで静かな教室に声を響かせる
なつ
声が聞こえないこさめは案の定首を傾げる
こさめ
ふと何かを思い出したようにボソッと呟くと、スマホを取りだし何かを打ち込んでそれをこさめに見せた
こさめ
それを見たこさめがこくんと頷いて教卓の前に立つ
それを見て、生徒が困惑した表情になる
なつ
こさめ
こさめ
こさめ
その言葉に教室がざわつく
こさめ
こさめ
ボソッと呟いた言葉は困惑しているクラスメイトには届かなかったようだ
俺は少しだけ、胸がちくりとする
俺がこさめの事情を知ったのは会ってから長く経っていなかった
それを理解できたのは中学生の頃だけど
こさめは、4歳で両親を亡くしたらしい
親戚にも引き取る事が出来る人が居なく、施設に預けられた
言葉は話せるが耳が聞こえない、両親が居ない、引き取られることもない
会話にならないこさめは、施設でも多少疎ましく思われていたらしい
親を失った上に知らないところまで飛ばされて、不安ではなかったのだろうか
初めて会った時でもにこにこと笑っていて、幼くてもあの頃の自分と比べられない程精神が熟していたのかもしれない
色々不便だったはずだから、その時点で何か察して諦めていたのかもしれない
そういえば、声が聞こえないはずなのになんとなく聞かれている事が分かっている様子だった
俺の顔に出過ぎていただけかもしれないが
そんな事をぐるぐる考えているうちに、自分の番がやってきたようだ
前の席の生徒が椅子に座る
俺も、同じように前に出て話す
名前、通っていた中学校、好きな物、誕生日、挨拶
自己紹介のテンプレを済まし、さっと席に座る
こんな事、真面目にやるのも苦だ
やがて全員分の自己紹介が終わり、休み時間のチャイムが鳴る
俺は真っ先に、こさめの席に駆け寄る
ぽんと肩を叩くと、すぐに反応してこちらを見上げた
なつ
俺はそう言いながら手を動かす
俺らは基本、声に出しながら手話をする
こさめ
こさめも言葉は話せるから、普段あまり手話は使わない
でも、俺が参考になるからと手話も使って話してもらっている
こさめ
なつ
なつ
こさめ
なつ
こさめ
なつ
こさめ
なつ
俺が笑うとこさめも微笑む
ただ、声に出して笑う事は無いので少しそれが淋しかったりする
なつ
なつ
ひらと手を振ると、同じように顔の横で小さく手を振り返してくれた
入学から3ヶ月
なつ
いや、明らかに避けられている
朝はいつも一緒に行っていたのに行けないと連絡が増え、今では学校に行くと既に自分の席に座っている
放課後も声をかける間もなく帰ってしまうし、追いかけても走って逃げられる
そんな事が続くと流石の俺でもメンタルに来る訳で
どうしたものかと頭を悩ませていた
...と、いうわけで
今日からこさめの事を探ろうと思う
何をするかは単純
ただ後を付けるだけ
ストーカーでは断じて無い...はずだ
なつ
帰りは特に何も起きずに終わった
出るのが早いとはいえ、周りを気にしたりする様子もなくまっすぐ家に帰っていった
なつ
別に嫌われるような事をした覚えは無い
こさめとはこの11年間、お互いに嫌いになる事は無かったはずだ
勿論、俺もこさめも思った事は結構口に出すタイプだから意見の行き違いで喧嘩をしたことはある
でも、なんとなく離れていると嫌になってくるため自然と距離は戻ってくる
俺たちはなんというか、友達の垣根を越えた何かだと思う
なつ
なつ
考えていても埒が明かないため、一旦参考のために調べてみる
なつ
なつ
別に俺らは好みとか趣味とかが特別同じという訳では無い
お互いの好きな物について語り合うことだってある
ただ趣味が違うからって今更避けられるとは思わない
なつ
なつ
なつ
なつ
それに、こさめならそんな事本気にしない
なつ
なつ
なつ
なつ
検索してみても特にこれといったものは無いので、大人しく寝ることにする
なつ
なつ
こさめの施設では、高校からは自立して暮らさないといけないらしい
もちろん、足りない分は補ってくれるらしいが基本自分で稼がないといけない
俺はまだ家族と暮らしているから、そういう事を高校生でするのが凄いと思っている
バイトは、してるけどな
なつ
明日は朝が早い。今日はもう寝よう
次の日の朝6時半
こさめならこのくらい早くても家を出かねないので、曲がり角からこさめが出てくるのを隠れて待つ
頭にストーカーの4文字がチラつくが幼なじみの事が気になるんだから仕方ない
7時前くらいに、こさめが出てきた
なつ
なつ
なつ
少し胸がざわざわするのは、何故だろう
嫌な予感がする
20分程時間をかけ、学校に着く
またもや影からじっと見つめていたら
なつ
こさめが靴箱を開けた瞬間、沢山の紙屑が足元に落ちる
なつ
それを無言で拾うこさめを見て呆気に取られる
頭が追いつかない
更に、こさめの上履きから出てきたのは大量の画鋲
今の時代、本だとか映画だとかでした見た事がない、タチの悪いいじめを目にして、頭が真っ白になった
こさめの事を付けていた事も忘れて、靴のまま上がる
そのままこさめの肩を掴んでこちらに向かせると、驚いたような顔が見える
無理矢理向かせた反動で、こさめが手にした上履きが落ちて、画鋲のいやな音がした
なつ
なつ
なつ
なつ
なつ
なつ
ふと、こさめが俺の手を掴む
その顔は痛そうに顰められていて
感情が昂ったことで強くつかみすぎた事を理解する
なつ
あ
そうだ
こさめは声が、聞こえないんだった
何を言ったらいいのか分からなく、ただこさめを見つめる事しか出来ない俺に、彼は手話で伝えた
なつ
なつ
胸が波打つ
「なつくんの声が聞けたら良いのに」
悲しそうに泣きそうに、顔を歪めて笑ったこさめに俺の手が、緩んで落ちる
こさめが画鋲をケースに入れて上履きを履いている間にも俺は、何も出来ず突っ立っていたままだった
俺から逃げるように離れていった小さい背中を呆然と見つめる
心臓が痛い
声を聞きたい、なんて
俺にとってはごく普通のことが、彼には許されていない
そんな人が居るなんて事、分かってたはずだったのに
なつ
俺は額に手を当て、靴箱に寄りかかる
込み上げてくる何かを抑えるように口に手を当てる
ああ、気分が悪い
なつくんは、授業に出なかった
体調不良で、一限目が始まる前に帰ったらしい
こさめ
今朝の靴箱での出来事
こさめ
まさか後をつけてくるなんて
耳が聞こえないと物音にも気づけないから不便だ
さっきのなつくんの行動、表情、口の動き、性格
色々と考えれば、なつくんが言っていたことは何となく分かる
人一倍、友達思いだからなあ
こさめ
こさめは、なつくんに迷惑はかけたくないんだ
だって、小学校の時も、中学校の時も
ちゃんと耐えてたんだから
見つからなかったんだから
なのにアイツら、1人でいないとなつくんをターゲットにするとか言うんだもん
避けないといけなかったし、それでなつくんに何も無いならそれで良かった
でも、流石に隠し通すのは無理があったかな
こさめ
結局好きな人を傷つけてんじゃん
馬鹿だよ、雨乃こさめ
しかも、あの場に任せて自分の叶うはずの無い夢をなつくんに言って
こさめ
施設と親戚への仕送り、自分の生活費
バイト代はそこにほとんど使われるから、自分の耳のために何か買うなんて夢のまた夢だ
それに、耳が聞こえないってデメリットだけじゃないんだよ
悪口なんて聞こえないんだから、勝手に言わせとけばいい
なにも耳に入らなければ、気にすることも無いしどうでもいい
...なんて、ただの強がりなのにね
それから1週間、なつくんは学校を休んだ
さすがにこれ程長いと配布物も沢山溜まるもので
帰りの準備をして教室から出ようとした時、先生からぽんと肩を叩かれた
いつも通りスマホの筆談
「暇さんの家まで届けてくれない?」
そう言う先生の手には沢山のお知らせの手紙や授業で使ったプリント達
1人で居ろと言われているけど、これくらい別にいいだろう
頷いて、プリントを受け取った
なつ
なつ
なつ
なつ
色々な印刷物を並べて分類、一段落ついた所で伸びをする
あれから1週間、学校に行く時間を消費して考えた
その結果、俺が補聴器を買おうという結論に至った
何を言っているのかと思われるかもしれないが、俺は本気だ
どうせ趣味も無いし、アイツの望みを叶えられるならなんだってする
そのためにはまず、こさめと話さないと...
なつ
なつ
避けられていることをすっかり忘れていた
あれのせいで俺休んだってのに
早速目標をぶち壊されそうになり机に突っ伏す
と、下から母親の声が聞こえた
なつー、こさめくんが 来てるよー
え
なつ
こさめ
なつ
なつ
こさめ
どうしたらいいんだろ
前のこともあり、なかなか会話が続かない
こさめ
なつ
さっと立ち上がったこさめに、心の中で焦る
またもや反射的に手が出た
こさめの手首を掴むと、目を少し見開いてこっちを見てくる
俺は今回はちゃんと、手話で伝える
なつ
こさめ
あの後何を言われるのかと思ったら、補聴器をこさめにあげるだなんて
びっくりした
補聴器って高いものは50万とかするのに
わざわざなつくんのお母さんにも同行してもらって専門のところに連れていってくれるみたいで
バイト代が溜まるまで待ってくれと言われたものの
なんだか少し申し訳ない気持ちだ
自分のために使って欲しいと思うのが半分、嬉しいのが半分
ふと、自分の手首を見る
こさめ
久しぶりに触ってもらったな
あの暖かい感触を思い出して口が緩む
やっぱり、なつくんと話せるのが本当に嬉しい
こさめのために手話を覚えてくれて
はじめの頃はちょっとたどたどしかったけど、それでも自分のためにしてくれてるのが嬉しくて
なつくんは、なんていうか
こさめにとって必要不可欠な存在なのかもしれない
いつか、なつくんとちゃんと声だけで会話出来たらいいな
2✘24年 3月
もう、卒業の春だ
この3年間は時間が経つのが早かった
こさめのいじめに関しては
こさめに事情を話され、基本学校では話さないという結論に陥った
放課後には普段通り遊んだり話したりするようにして、学校で関われない分その時間が特別に思えた
それに、何をしてもこさめが反応しない
呼び出しても無視して帰る、など
そんな事を続けているうちに無くなっていったようだ
なつ
とまあ、そんな感じで2年に上がる頃にはもう学校内で一緒に居る事が多くなって
まあ、お互いにバイトで忙しかったりするからなかなか話せない時もあるけど
で、今日は俺にとって色んな意味で大事な日
なつ
まずはこの式を乗り越えないと
式後。
俺はこさめを自分の家に呼び出し、ソファに向かい合って座った
緊張からか珍しく真剣な顔をしている俺を見て不思議そうに俺を見つめるこさめ
こさめ
こさめ
なつ
心臓がどくどくと早く動く
からっと乾いた口を開いて、後ろ手に隠していたものを机の上に置く
なつ
こさめ
箱を見て首を傾けるこさめに、手振りで開けてみろと催促する
なんとなく期待するような顔をしながら開けるこさめ
箱の中身を見たこさめが、大きく目を見開く
なつ
驚きでものも言えないこさめに手話を駆使して一言伝えると、こさめは口をぱくぱくさせる
それがなんだかおかしく感じ、ふふっと笑い声が漏れ出る
こさめ
こさめ
なつ
不安そうなこさめに俺は、悪戯っぽく笑いかける
こさめは俺を見て、またちょっと目を開いて
嬉しそうに笑った
こさめ
なつくんが、付けてみて、と言っている
少し緊張しながらも、恐る恐る補聴器を手に取る
顔が強ばっている気がするが、ゆっくり耳に付けてみる。思った以上にひんやりする
なつくんと一緒に行って選んだやつ
専門の人に見てもらったものだから耳にぴったり収まっていい感じだ
なつ
ふと聞こえたその音で全身に鳥肌が立った
低いのか高いのかは分からないけど、落ち着くような綺麗な声
言わずもがな、なつくんの声だ
顔を上げて、なつくんを見る
こさめ
後の方の声が震える
好きな人の声が聞けて、ぼろぼろと涙が流れ落ちる
音がある世界ってこんな感じなんだ
普通の人がみんな感じている世界を体感して、嗚咽が漏れる
なつ
こさめ
いつの間にかこっちに来てこさめを抱きしめてぽんぽんと背中を叩いてくれるなつくんだってボロ泣きしてる
...本当に友達思いだなあ
なつ
なつくんは袖で涙を拭う
さっきの表情から一転、真剣な顔でこさめを見つめてくる彼に、少し狼狽える
少し恥ずかしくて、視線を逸らすとなつくんが間髪入れず言う
なつ
こさめ
これが、声が良いという事なんだろうか
柔らかい声に頬が熱くなる
どうにかしてなつくんの顔を見ると、彼も少し顔を赤くしている
2人で部屋の中、見つめあっている状況に心臓が早まる
なつくんが、心に決めたみたいに息を吸ってこう言った
なつ
こさめ
すき?スキ、...好き?
あの、好き?
絶対赤くなってる気がする
顔中が熱い
こさめ
上手く口が回らない
なつ
待って違う、断りたいとか思ってない
なつ
こさめ
なつくんが伝えてくれたように
幼い頭で必死に手話を覚えて話してくれたように
こさめもちゃんと言わないと
こさめ
この先の言葉を察したようだ
こさめは、笑みを浮かべる
ただでさえ涙でくしゃくしゃの顔につっと涙が零れ落ちた
こさめ
510タップお疲れ様でした
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