今日
私の大好きな人は人を殺した──。
梅雨明けのまだ寒さが残っていた あの日──。
まだ朝の四時だというのに、
ベッドの横に置いていたスマートフォンの着信音で目が覚めた。
眠い目をこすり、 スマートフォンの画面に目をやると、 彼氏から電話が来ていた。
純恋
もしもし…?
八雲
………
彼は何も言わない。
純恋
もしもし、聞こえてる…?
八雲
………
返事が無いので、 電話を切ろうと思ったが─。
八雲
ごめん……
彼は震えた声をしていた。
純恋
え……?
八雲
本当にごめん……。
純恋
何で謝るの…?
八雲
だって俺……
八雲
………
しばらくの間、無言の時間が続いた。
そして、彼は口を開く──。
八雲
俺……
八雲
今日……
八雲
人を殺しちゃったみたい…
純恋
え……?
思いもよらない発言に私は 困惑した。
純恋
人を殺した……?
八雲
うん……
どう返していいのか分からず 黙っていると、
彼は泣き出した。
純恋
分かった…
純恋
今からそっちに行くから…!
そう言うと、私は電話を切り、 服も髪もそのまま家を飛び出した。
彼のマンション下に行くと、
八雲
純恋…!!
彼はやつれた顔をして待っていた。
純恋
八雲……
純恋
ちゃんと説明してほしい…
八雲
うん…
八雲
実は、
八雲
純恋と同じクラスの███と昨日会ってて……
純恋
え、███?
八雲
そいつとちょっと喧嘩になっちゃって……
八雲
それで…
彼は一瞬口ごもった。
八雲
それで……
八雲
首を締めて殺した……
純恋
……
言葉が出てこなかった。
何と言葉をかければいいのか、
どんな顔をして聞けばいいのか、
分からなかった─。
八雲
まさか死ぬとは思わなかった
純恋
それで…███はどうしたの…?
八雲
隠してある…
八雲
そこの路地裏に…
純恋
……
純恋
埋めよう
咄嗟に口に出た四文字の言葉に
自分でも驚いた。
八雲
え…
純恋
誰にも見つからない所に…
八雲
でも、そんな事していいの…?
純恋
だってそうしないと八雲が…
八雲
………
八雲
分かった
八雲
▓▓山に行って埋めよう…
八雲
この死体を
純恋
うん…
そしてこの日
私達は死体を遺棄した。
誰にも見つからないように──。