タッタッタ
コウ
ここは初めて来るな
黎
森の奥だしね
黎
ここから先は静かにね
コウ
ああ
明日
<コクン>
茂みの影から顔を出すと
鳥や鹿、ウサギなど
様々な動物が草原で遊び、くつろいでいた
明日
わあ
その楽しげな光景に
木霊さんは目を輝かせた
コウ
ここって
黎
周りの崖が高いだろ
黎
だから、天敵は周りからはやってこない
黎
ここに入るには
黎
さっき僕らが来た方向の道しか無い
黎
だから、動物たちの憩いの場なのさ
コウ
へえーー
僕とコウが小声で話して居てても
木霊さんは夢中で動物たちを見ている
明日
かわいい
明日
触りたい
そう言うと
木霊さんは茂みから出てしまった
黎
あっ
黎
近づいたら逃げちゃいますよ
僕は慌てて止めようとしたが
木霊さんは歩いて行ってしまった
明日
こんにちは
木霊さんが動物たちから少し離れた位置に
座って、手を前に出す
すると
動物たちは近づいてきた
鳥は肩に乗り
リスが手に乗り
鹿は側に座り込んだ
明日
フフッ
コウ
わあ
黎
これは
<コウ視点>
コウ
これはまるで
それはまるで
母なる大樹の元に
動物たちが集まり
やすらぎを得る
そんな光景だった
明日
あはは
明日
くすぐったい
明日
二人もおいでよ
オレと黎も木霊の元に近づく
それでも動物たちは逃げる様子は無かった
コウ
どうなってるんだ?
黎
たしか、木霊の家系は
黎
木の神を信仰していた
黎
その備わっている霊力が関係してるのかもね
明日
二人とも
明日
ほら
木霊はオレの手の上にリスを乗せた
温かいぬくもりを確かに感じる
リスはオレの腕を伝って
肩に乗ってきた
コウ
おお、かわいいな
黎の方にも鹿が近づいてくる
黎
わあ、こんにちは
黎は少し驚いたが
変わらない優しい笑顔に戻った
明日
楽しい
木霊はそう言ってウサギをなで続けた
明日
バイバーイ
木霊は動物たちに手を振り
オレらはその場を後にした
タッタッタ
コウ
木霊はともかく
コウ
オレらもふれあえるとは思わなかったな
黎
うん
黎
僕らは普段から狩りをしたり
黎
植物を採取してるのに
コウ
なっ、絶対嫌われてると思ってた
明日
そんなことないよ
明日
二人は生きるために狩りをしたりしてる
明日
生きるための狩りとサツリクは違う
明日
命は生きるために命を取り、そして取られる
明日
自然はそれを理解してるの
明日
二人は命を生きるために取って
明日
命を無駄にしてる訳じゃ無い
明日
動物たちもわかってる
明日
黎が木に引っかかって怪我をした鳥を助けた事も
明日
コウが溺れてた子鹿を救ったのも
明日
動物たちは知ってる
明日
大丈夫
明日
二人はちゃんとこの森の一部になってるよ
黎
なるほど
九歳の木霊の言葉に感心してしまった
これが木霊の家系なのか
さすがだと思ってしまった
コウ
木霊はすごいなー
オレは木霊の頭をなでた
明日
ふふ
黎
戻りましょうか
春の日差しがオレらを照らし
見守るように包み込んでいた







