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これは 架空の物語ではない

遠くない未来 必ず現実となる 物語である

昼食を終えた楠本は、地震でめちゃくちゃになったキッチンを母と一緒に片付けていた。

2024年9月4日(水) PM2:09

- 52h 03m

さっきから天井からドタドタと音が響いている。おそらくは父だろう。

父は寡黙で、いつも前触れもなく行動をしている。まさに不言実行だ。

恭子

イタっ

まさき

えっちょっと大丈夫!?

恭子

割れた皿で指切っちゃった

恭子

このくらい平気

まさき

(…本当に大丈夫?)

まさき

そういえばね、
友達のお母さんが、揺れたとき包丁で指切ったって

恭子

あらら…怪我しちゃったのね

まさき

傷は浅かったみたい

まさき

こういうのってニュースに出てくるけが人に含まれるのかな

恭子

さあ…考えたこともなかったわ

多分含まれないぞ

まさき

うわっ

恭子

びっくりした、いつからそこにいたの!

廊下に抜けるドアの前に父が立っていた。両手に何か箱のようなものを持っている。

病院に運ばれないと、けがをしても行政が発表する情報には集計されないんだ

母の問いを無視して、右手の箱を床におくと、おもむろにキッチンへと歩きだした。

父はキッチンに入ると、左手の箱を開けた。

中から絆創膏を取り出し、母の手をとると、母の指に絆創膏を巻いた。

恭子

あっ…ありがと…

まさき

救急箱?それ

恭子

救急箱ならもっと大きいのがそこの棚に入っているじゃない

あれでは外に持ち出せないだろう、小さいのを作ったんだ

まさき

あそこに置いた箱は?

工具箱だ

恭子

…急にどうしたの?

棚を壁に固定しようと思って

恭子

恭子

もしかして、のりちゃん?

…そうだ

まさき

のりち…のりさんって誰?

恭子

あれ、話したことなかったかしら

恭子

お母さんとお父さんの大学の同期でね…

1989年1月5日(木) AM11:53

当時、私達は帝都大学教養学部の2年生だった。

手話サークルに所属していた私達は、いつも自然と一緒に行動していた。

楠本 恭子

あっ、稔!

小柳津 智人

おっ、恭子ちゃんおはよう!

比金 稔

俺たちこれから学食に行くんだけど、恭子ちゃんもどう?

楠本 恭子

いくいく!

私達は学食へ向かった。

定食を作り会計を済ませ、 先に席についた私は、他の二人を待っていた。

来年度から、私は文学部へ、 稔とのりちゃんは理学部へ進学することが 決まっていた。

比金 稔

悪い悪い、丼物の列長すぎて遅れた

楠本 恭子

全然待ってないよ!

楠本 恭子

じゃ、いっただきま~す

小柳津 智人

いただきます

志が同じだった彼ら二人は、普段から会話も専門的だった。

小柳津 智人

先月さ、茨城沖で地震あったじゃん?

比金 稔

プレート境界のやつ?

小柳津 智人

そう

小柳津 智人

あの後ね、異常な地殻変動が観測されたんだって

小柳津 智人

約一日で南関東がわずかに隆起したらしい

比金 稔

へぇ〜なんか怖いね、でも観測機器の異常とかじゃないの?

小柳津 智人

そうかもしれないけど、もし地殻変動だったら面白くない?

比金 稔

調べて見る価値はありそう

小柳津 智人

小柳津 智人

俺これを研究テーマにしようかな

比金 稔

まだ専門科目も始まっていないのに早くない?

小柳津 智人

まあそうかもしれないけど、遅すぎるよりはマシでしょ

比金 稔

…いや、考えてみたら面白そうだぞそれ

比金 稔

ゆっくりとプレート境界が滑ったのか、

比金 稔

地震でプレートが動いたぶん、地下の流体が移動して起きたのか

小柳津 智人

だろ?ワクワクするでしょ?

比金 稔

よし、俺もそれを研究する!

楠本 恭子

あの〜盛り上がってるお二人さん

楠本 恭子

そっちから誘っておいて、話題から私を置いてけ堀にするの酷くない?

比金 稔

いやつい盛り上がっちゃって

小柳津 智人

ごめんごめん(笑)

このとき私は知らなかったけど、

南関東の地下で何が起きたのか、 この後二人で真剣に議論をしたそう。

そして1年後、二人は本当にこのことについての研究を始めた。

2024年9月4日(水) PM2:19

まさき

え、お父さんって大学で地震を研究してたの?

恭子

そうだ。大学院まではな。

まさき

それで今の仕事に就職したのか〜、知らなかった!

恭子

…違うんだ

まさき

え?

恭子

…あなた、大丈夫?

…もうお前も来年は高校生だ

進路の話をする機会も増えるだろう

親がどうして今の会社に入ったのか、気になることもあるだろう

だからいつかは話さなければならないと思っていた

智人と母さんと3人でつるんでいたときはな、智人とはまだ普通の友人だったんだ

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