若井滉斗side___
電車に揺られ
目を瞑りながら
たどり着いた小さな村
静かで、でも決して暗くはない
平凡で地味な村
でもその静かで落ち着いた雰囲気にほっと息をつく
元貴をいるためだけにとどまり続けた都会は
元貴との思い出が多過ぎた
夜淡く光るネオンライトや
お洒落で綺麗なカフェも
都会の全てに惹かれるけれど
俺はやっぱりこんな静かな村の方がいい
とにかく、誰も俺を探せない場所に行きたかった
俺の母親はひどい心配性で
事あるごとに俺を縛り付け
交友関係まで制限した
恋愛も親が決めた子以外との友情はいらない
そんな母親から逃げ出して
出会ったのが元貴だった
omr.
親から逃げてきたものの、住む家がない
そう正直に話すと元貴は快く俺を家に入れてくれた
その時元貴はまだ俳優としてデビューはしていなかった
俳優になりたいけれどオーディションに落ちる日々を送っていた
だからだろうか
元貴は泥酔するまで酒を飲む時があった
何かに取り憑かれたように酒を煽り
次の日は決まって熱を出して寝込んだ
俺は必死に止めた
元貴の体が壊れそうだったから
でもそれは、突然終わりを迎えた
俺の腕を掴み
元貴はこっちを焦点の合っていない目で見上げた
omr.
そんな静かな声と共に
ある夜、俺と元貴の体は一つに重なった
______
その日から何ヶ月かたち、元貴は俳優として世に出ていった
映画の主演に抜擢され、
その映画が注目を集め
それからドラマや朝ドラなど、活躍の幅を広げ
元貴は念願の俳優になった
ミステリアスな風貌に整った顔
声のトーンも落ち着いていて
演技も群を抜いて上手かった
彼は瞬く間に人気を上げ
テレビにもドラマにも引っ張りだこだ
日本人なら誰もが知っているような
そんな有名俳優になった
そのせいか、彼と同じ家に住んでいても
彼に会えない日が続いていった
そんな中唐突に訪れたあの別れの日
あの時言った言葉
後悔していないと言ったら嘘になる
生半可な気持ちで付き合ってなかったからこそ
元貴のことがちゃんと好きだった
体からはじまった交際であっても
ちゃんと本気だった
けれど、元貴の元に戻る勇気は無い
駅のベンチに腰掛けて
ふつふつと湧き上がる未練の気持ちに蓋をする
言いたい言葉も聞きたい気持ちも沢山ある
そのくせに何が言いたいか自分でもわからない
でも、もういいんだ
もう、元貴のことを考えるのはやめたんだ
でも、たった一日元貴の匂いに
触れていないだけで寂しくなる自分がいる
あの細くてでも艶やかな声が忘れられない
その言葉で、もう一度俺に話しかけて欲しい
嘘の『愛してる』でもいい
その言葉で俺をもう一度騙してほしい
心がカラカラになるくらいに
もう一度俺を力ずくで取り返してほしい
でもその願いは叶わない
俺が見てきた大森元貴は
もう俺だけのものでは無いのだから
こんにちは
♡700ありがとございます 💬たくさんうれしい
♡と💬たくさんください
次回大森さんサイドです それではまた
コメント
6件
mtさん視点…!どう考えてるのかなぁ🤔気になって仕方ない🫠
次元さん視点ですかありがとうございます 待ってましたよ元さん視点
うわぁ、、、そうか、、、、、 嘘でもいいから愛を感じたいって、 切ないなぁ、、 wkさぁん、、、 mtさんも迎えに来てあげて、、、 追いかけてきてよ、、、