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第1話 - あ

2023年06月24日

#恋愛

結城真矢

アイ

ハルナさん、こんばんは！

ハルナ

こんばんは

アイ

ちょっとハルナさんに聞きたいことがあるんだけど、いい？

ハルナ

なんでしょう？

アイ

今度のお遊戯会あるじゃない？

アイ

あれでうちの娘が着る衣装をハルナさんに作って欲しいんだけど

ハルナ

え？

ハルナ

作るって、どういうことですか？

アイ

ほら、ハルナさんってデザイナーさんなんでしょ？

アイ

オシャレなお洋服をいっぱい作ってるわけじゃない？

アイ

だからうちの子の服も作って欲しいの

アイ

勿論、そんな本格的なものをお願いするつもりはないわ

アイ

仕事の合間に、ちょこ～っと作ってくれるだけでいいの

アイ

ね、お願い！

ハルナ

申し訳ないんですが、無理です

ハルナ

一言で服をデザインすると言っても、何日も何日も考えて考えて作るんです

ハルナ

そんな片手間に何かを作るなんて無理です

アイ

そんなこと言わずに！ね！

アイ

これも良い経験になるんじゃない？

アイ

子供用のお遊戯会の服をつくるなんて経験、そうそうできないでしょ？

ハルナ

私はフリーランスなんで子供用の服をつくることもあります

ハルナ

それに、アイさんにだけ作るなんて事できないですよ

ハルナ

そうなっちゃったら、他の子たちの服まで作らないといけなくなってしまいますし

アイ

いいじゃない！他の人には内緒にしとけば

アイ

だってこの前のお遊戯会の時、娘さんにすごい可愛らしい服着せてたでしょ？

アイ

他のママ友に聞いたんだけど、あれハルナさんがデザインして作ってあげたらしいじゃない

ハルナ

あれは、お遊戯会がちょうど娘の誕生日と近かったんです

ハルナ

だからプレゼントの一環として作ってあげたんですよ

ハルナ

普段ならそんなことしません

ハルナ

生地を発注したりするのも大変なんですから

アイ

えぇ～？じゃあ自分の娘だけにデザインして服作ってあげるの？

アイ

えこひいきじゃない？それって

ハルナ

そう言われても…

ハルナ

できないものはできないんです

ハルナ

すみません

アイ

なんだ、ハルナさんって案外ケチなのね

アイ

旦那さんも大手企業に勤める高給取りのサラリーマンらしいじゃない？

アイ

自分もデザイナーとかやってるし

アイ

そうやって、私達の事見下してるんでしょ

ハルナ

そんなことありません

ハルナ

誤解です

アイ

口ではいくらでも言えるもんね

アイ

今回の事、他のママ友にも伝えとくから

アイ

覚悟しといてね

ハルナ

そんな…

ハルナ

分かりました、なんとかしてみます

アイ

流石ハルナさん！じゃあよろしくね～

ハルナ

わかりました…

～数か月後～

アイ

ハルナさん、こんばんは！

ハルナ

こんばんは

ハルナ

どうかされましたか？

アイ

どうかされましたかって、どうかしないと連絡しちゃいけないの？

ハルナ

いえ、そんなことはないんですが…

アイ

私ね、ママ友から聞いちゃったのよ

アイ

ハルナさん家、もうちょっとで引っ越すらしいじゃない

ハルナ

ええ、まあそうです

アイ

だから小学校どこに通わせるかって話に全然乗ってこなかったのね！

アイ

私てっきり、ハルナさん家は小学校から私立に通わせるものだと思ってたわ

アイ

だから話に入ってこなかったのかなって

アイ

でもこれでわかった、引っ越すからなのね

アイ

水臭いわね～！言ってくれればよかったのに！

ハルナ

すみません

アイ

いいのよ別に！私たちの仲じゃない！

アイ

で、これも聞いたんだけど

アイ

引っ越し先…デ〇ズニーランドの近くらしいじゃない！

アイ

それって本当なの！？

ハルナ

ええまあ、本当です

アイ

羨ましいわね～！

アイ

ランドもシーも行き放題じゃない！

アイ

勿論年間パスポートも買うんでしょ？

ハルナ

それはちょっとまだ決めていませんが…

アイ

絶対買った方がいいわよ！

アイ

私の娘もランドが大好きでね！

アイ

ランドの近くにお友達が引っ越すから、いつでも遊びに行けるね！って言ったら

アイ

凄い喜んでたのよ～！

ハルナ

いつでも、ってどういうことですか？

アイ

え？泊めてくれるでしょ？

アイ

助かるわ～！あそこらへんってホテル代も結構するのよね～

アイ

ホテル代浮かせられたらその分グッズもいっぱい買えるし、娘も喜ぶと思う！

アイ

そういえば夏休み、ランドに行こうかって話を娘としていたところなの

アイ

久しぶりに行くから娘もすごい楽しみにしてるのよね

アイ

ありがとうね！

ハルナ

え？

ハルナ

いえ、泊めるなんてまだ決めてませんけど…

アイ

え？まさか泊めてくれないの？

アイ

ハルナさんってそこまでケチなの？

アイ

それとも旦那さんが高給取りで、住んでるお家もでっかいってのはウソだったの？

ハルナ

私は自分から夫の給料が良いなんて言った事はありませんし

ハルナ

家がでかいとも言った事がありません

アイ

そうなの？でも皆言ってるわよ？

ハルナ

皆さん噂とか大好きなので…

アイ

まあいいわ、でもランドの近くに引っ越すのは本当なんでしょ？

ハルナ

はい

アイ

じゃあ泊めてちょうだいね！娘すっごい楽しみにしてるから！

ハルナ

分かりました

ハルナ

交通費とか大変だと思いますけど、それでもよかったら…

アイ

大丈夫！車でいくから！

アイ

ありがとうね！助かるわ～！

～数か月後～

アイ

ねえハルナさん

ハルナ

アイさんこんばんは

ハルナ

どうしたんですか？

アイ

この間話してた、ランドの件覚えてる？

ハルナ

この間…って、春ごろ話してたやつですか

アイ

そうそう！忘れてないわよね？

ハルナ

本当に来るんですか？

アイ

勿論よ！もう少しで夏休みにはいるし

アイ

娘も大はしゃぎで毎日ワクワクしてるわ！

アイ

で、その事なんだけど

アイ

ウチだけじゃ悪いかと思って、オオニシさん家も誘ったの！

ハルナ

え？オオニシさん？

アイ

ええそうよ、知らない？

ハルナ

存じ上げてはいますが、あまりお話したことはないです

アイ

そうなの？じゃあちょうど良かったわね！

アイ

これを機に仲良くなればいいことじゃない！

ハルナ

でも、そんな急に人数を増やされても…

ハルナ

しかもオオニシさんもご家族でいらっしゃるんですか？

ハルナ

全員で何人くらいになるんですか？

アイ

私の家が私と娘と旦那の3人でしょ？

ハルナ

ちょっと待ってください、アイさんの旦那さんもいらっしゃるんですか？

ハルナ

前は娘さんと2人って仰ってたじゃないですか

アイ

そうなの、でもラッキーなことに旦那も休みが取れてね！

アイ

急遽旦那も行くことになったの

アイ

で、オオニシさんの家がオオニシさん、旦那さん、娘さん1人、息子さん2人

アイ

全員8人かな？

ハルナ

最初は2人って仰ってたのに

ハルナ

8人にまで増えたんですか

アイ

そうなの！ごめんね～

ハルナ

急すぎます

ハルナ

こっちにも用意とかがあるのに

アイ

大丈夫よ～お構いなく～

アイ

オオニシさんの家は大きい車持ってるから

アイ

それに乗せて行ってもらうつもりなの！

アイ

張り切って高級なレストランとかも予約しちゃった！

アイ

勿論オオニシさん家とワリカンだけどね！

アイ

じゃないとあんな高いお店、うちじゃとてもじゃないけど支払えないわ

ハルナ

そんな高いお店予約したんですか

アイ

そうなの

アイ

それはもうめちゃくちゃ高いお店！

アイ

じゃあ当日楽しみにしてるわね～

～数週間後～

アイ

ハルナさん！明日はお願いね！

ハルナ

ランドの事、ですか？

アイ

ええ、そうよ！

アイ

ハルナさん家がランドの近くに引っ越してくれてよかったわ～

アイ

これで何度も気軽にランドに行けるようになるから娘も大喜びよ！

アイ

明日が楽しみ、って今からはしゃいじゃってるわ

ハルナ

アイさん、本当にうちに泊まりにくるんですか？

アイ

ええ、勿論よ！

ハルナ

車で？

アイ

ええそうよ。オオニシさんの車でね

ハルナ

そうですか

ハルナ

太平洋横断大変だと思いますが、頑張ってください

アイ

へ？

アイ

太平洋？何の話？

ハルナ

私たちが引っ越したのは千葉県じゃありません

ハルナ

アメリカカリフォルニア州のアナハイム市です

ハルナ

夫のアメリカ転勤が決まって家族でアメリカに引っ越すことになったんですが

ハルナ

その引っ越し先の近くに、たまたま元祖ランドがあったんです

ハルナ

きっと、それを娘が「ランドの近くに引っ越すとお友達に話したんでしょう」

ハルナ

それが回り回ってアイさんの耳にも入ったんだと思います

アイ

そ、そんな

アイ

じゃあ明日私たちはどうすればいいの！？

ハルナ

さあ？太平洋を車で渡ればいいんじゃないですか？

アイ

酷い！私が勘違いしてるの分かってて何も言わなかったのね！

ハルナ

酷いのはどっちですか？

ハルナ

強引に人の家をホテル代わりに使おうとして、しかも勝手に他の家族まで誘って

ハルナ

娘さんが楽しみにしているなら、普通にご家族で行けばいいじゃないですか

ハルナ

なんでオオニシさんの家をタクシー代わりに、私の家をホテル代わりにしようとするんですか？

ハルナ

そのケチママっぷり、幼稚園でも有名ですよ

アイ

ケチママ？有名？

ハルナ

ええ、皆知ってますよ

ハルナ

アイさんがケチで強引で相手のことを何も考えないって

アイ

そんな…オオニシさんはどうなの！？

アイ

オオニシさんもあなたの家に泊まる気でいるのよ！？あっちも同罪じゃない！

ハルナ

オオニシさんはアイさんが無理矢理誘ったからでしょ？

ハルナ

おおかた、家に遊びに行ったとかなにかでオオニシさんの車を見たんでしょう

ハルナ

それで、見た感じかなり大きいからこの車が何人乗りかをさりげなく聞いて

ハルナ

これならタクシーとして使えるなと頭の中で計算したんでしょ？

ハルナ

だから今回、交通費を浮かせるためにオオニシさんも誘ったんですよね？

アイ

だからなんなのよ！

アイ

それのどこが悪いの？私が利用してあげてるんだから感謝してほしいくらいだわ！

アイ

あなたも意地悪な性格ね！

アイ

せっかくうちの娘も、オオニシさんの家も楽しみにしてたのに

ハルナ

本当に楽しみにしてたと思いますか？

アイ

え？

ハルナ

アイさんがオオニシさんを誘ったという連絡があった次の日

ハルナ

オオニシさんから連絡がありました

ハルナ

アイさんから強引に誘われたけど断り切れなかった、ごめんって

ハルナ

だからオオニシさんには伝えておきました

ハルナ

私が引っ越すのはアメリカのアナハイムだからそもそも来れないし、安心してって

アイ

あなた、オオニシさんの連絡先知ってたの！？

ハルナ

知らないのはアイさんだけですよ

ハルナ

そもそもアイさん以外のグループチャットもあります

ハルナ

私がアメリカに引っ越すことを知らないのはアイさんだけです

ハルナ

他はみんな知ってます

アイ

そんな…

アイ

じゃあ予約したレストランはどうなるの！？

ハルナ

さあ？今から頑張ってどうにか移動手段を見つければいいんじゃないですか？

アイ

義姉や姑にも、ランドのお土産買ってくるって約束してるのよ！？

アイ

うちの義姉も姑も意地悪で口うるさいから、お土産でなんとか機嫌取らないといけないのに

ハルナ

なんとか他のものでご機嫌とってみては？

ハルナ

アイさんが姑さんやお義姉さんに意地悪されようが私には関係ありません

ハルナ

アイさん自身があれだけ散々私に意地悪して迷惑かけたんですから

アイ

謝るから！

アイ

正直、嫉妬してたのハルナさんに

アイ

若くて美人だし、仕事はフリーのデザイナーとかいうかっこいい職業だし

アイ

旦那さんはイケメンで大企業に勤めるエリートサラリーマン

アイ

かたや私はスーパーのレジ打ちで…あなたが近くにいると惨めに思えるのよ自分が

ハルナ

だからって私に意地悪していい理由にはなりません

アイ

だって、夏休みの最中だから今からじゃ新幹線の席も取れるか分からないわ

アイ

ホテルもどこもいっぱいだろうし…

アイ

前日に予約が取れるホテルなんて、見つかるかどうか…

アイ

深夜バスだとつく頃には疲れちゃうし…

ハルナ

でも運転をオオニシさんの家にさせようとしてたんですよね？

ハルナ

オオニシさん達が疲れてしまうって、思わなかったんですか？

アイ

それは…

ハルナ

まあ頑張ってください

ハルナ

もう会う事もないと思いますが

ハルナ

お元気で

アイ

ちょっと待って！

アイ

ねえ、あなたのコネでどこかのホテル予約取れないの！？

アイ

レストランの予約キャンセルは前日じゃ100%なの！

アイ

しかも私だけじゃ払えない金額なの！

アイ

ねえお願い！どうにかして！

アイ

ねえ！！

～後日談～

ハルナ

オオニシさんから聞いた話によると

ハルナ

アイさんはその後人が変わったように大人しくなったらしい

ハルナ

ケチママ行動もしなくなり、人をやっかむ事もしなくなったという

ハルナ

今回の事で旦那さんに相当絞られたらしく、また義姉や姑からも散々言われているようだ

ハルナ

残念だが自業自得と言わざるを得ない

ハルナ

私はアメリカの地で、家族3人幸せに暮らしている

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結城真矢

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