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華太と付き合っていると、和中の兄貴が公言したので、二人が交際している事は知っている。
でも、二人を見ていて疑問に思う事がある。
恋人同士の間には、恋人特有の空気感が存在する。ただ二人からは、希薄っていい程に、その空気を感じた事はない。双方ともに、公私混同を善しとしないタイプだが、どんなに隠すのが上手かったとしても綻びはあるものだ。そもそも、察する事に長けている俺が、感じとれない筈がない。
本当に、あの二人は付き合っているのか?
そう疑問を抱かずにはいられない。
それと同時に、ただ側に置くだけなら、置物でも置いとけばいいのに。置物で代用出来るのなら、自分に華太を譲ってくれれば良いのにとさえ思ってしまう。
アラームとは、別の電子音によって、眠りを妨げられる。
目を擦りながら、スマホを確認すると、一件のメールが届いていた。差出人は須永の兄貴。
珍しいこともあるもんだと思いながら、用件を確認する。
とり急ぎの用事でもなそうな内容だったが、須永の兄貴の意図する面白いもんとは何だろうか?
それに、一度起床してしまった手前、二度寝しようという気にもなれなず、仕方なく、顔を洗うために洗面所へと向かった。
何時もより、少し早めに組事務所に訪れた。朝早い割に(小林的には)組事務所には、思っていいたよりも人がいた。
そういや、その面白いもんって、何処で見えるんだ?場所、聞いてなかったな~と考えながら、応接室に入る。
応接室には、書類整理をする華太と、珍しく和中の兄貴が、横並びでソファに腰を下ろしていた。
小林幸真
部屋に入ってきた俺に、和中の兄貴が話しかけてくる。
和中蒼一郎
小林幸真
和中蒼一郎
小林幸真
俺の問いに、華太は首を横に振る。
小林幸真
そういえば、俺が部屋に入ってから、華太は一度も声を発していない。極道の世界は上意下達。礼節を何より、重んじる。そして、華太の兄貴分である俺に対して、この華太の態度は不敬にあたる。
小林幸真
威圧しながら問いかけるが、それでも口を開こうとせず、華太は困った表情を浮かべるのみ。
小林幸真
華太に詰め寄ろうとした瞬間、和中の兄貴が鞘を差し入れ、俺が華太に近づくのを制する。
小林幸真
和中の兄貴の意外な行動に虚をつかれ
小峠華太
和中蒼一郎
小林幸真
唐突に猫語を喋りだした華太にも驚き、思わず俺は、すっとんきょうな声をあげた。
小峠華太
華太は、一生懸命何かを伝えようとするが、何せ猫語だ。何を言っているのか分からない。
小林幸真
華太は慌てて、スマホの画面を見せてきた。スマホの画面に表示された文面を読む。
件名 ___________________________________ 須永の兄貴が、催眠術の腕前を披露して下さったんです。見ての通り、催眠術は成功したんですが、解除しても戻らなくて、流石に猫語では不便なので、今日は俺の代わりに、速水たちにシマの見回りを任せて、俺は書類整理をさせて頂いています。
どうやら、須永の兄貴の言っていた面白いもんとは、催眠術にかかって猫語しか話せない華太の事のようだ。
小林幸真
和中蒼一郎
小峠華太
騎士よろしく、和中の兄貴は華太を自分の方に引き寄せた。
小林幸真
猫語しか話せない華太は、何を言われても、言葉では否定も肯定も出来ない。否定も肯定も出来ないのなら、相手は自分の都合のいい方に、物事を解釈する事が出来てしまう。
小林幸真
華太に好意と故意を持つ相手から、華太を守るために、和中の兄貴が側についるのは明白。
和中蒼一郎
小林幸真
小峠華太
一応形だけでもと華太は、俺に猫語で礼を言う。
和中蒼一郎
小林幸真
俺は飯豊の稽古をつけるべく、応接室を後にした。
小林幸真
こんな面白いこと滅多にない。せっかくなら、俺も華太で遊びたい。
飯豊との稽古を終えた俺は、応接室へと勇み足で向かう。
応接室に続く廊下の角を曲がると、応接室の扉の前で、八の字を描くようにぐるぐると回る速水の姿が目にとまる。
小林幸真
速水泰輝
小林幸真
速水泰輝
速水泰輝
速水は言を濁した。
あの和中の兄貴が、華太に無駄鳴きをさせる筈がない。さっきだって、華太に喋るなと命じ、会話を禁じる事に躍起になっていたぐらいだ。 なら、中でナニをしているかなんて、想像はつく。
小林幸真
ま、俺は気にせず入るけどな
応接室の扉のドアノブを握ろうとした瞬間、独りでにドアノブが周る。
扉が開くと、中から和中の兄貴が出てきた。
速水泰輝
小林幸真
和中蒼一郎
速水が抱えていた書類を、和中の兄貴が受けとる。
速水泰輝
小林幸真
和中蒼一郎
それだけ言うと、和中の兄貴は、歩き去って行った。
小林幸真
嬉々として、応接室の中に入る。
華太で遊ぶ気満々だったのだが、残念な事に、件(くだん)の華太は、ソファで眠りについていた。
そして、すよすよと気持ちよさそうに眠る華太の傍らに、和中の兄貴が肌身離さず、持ち歩いている日本刀が立て掛けられている。
俺の物に触るな、という警告のためだけに、日本刀が置かれていてるのは一目瞭然。
分かりやすい独占欲。
小林幸真
柔い髪に指を絡めながら、ソファの上で気持ちよさそうに寝むる、ねこの額に口づけた。
おわり
あとがき 「彼女の事が好きだ!俺だったら彼女に、あんな悲しそうな顔させない」という少女漫画の定番の台詞から発生した話。 ただ小林ニキに至っては、諦めるとは一言も言ってない模様。 わなかぶウェディング話は完成したついでに、メールボックスの底からサルベージしてきたやつ。二年前くらいに 8割書いて放置してた話。こん時は、こばかぶ派やった。これとは別の、きたかぶベースのこばかぶ話が眠ってる。七割程度は書いてるんだけどな、仕上がる気がしない。