如月 裏

きらの部屋

出会って間もない話

東卍メンバーになって そこそこ周りと仲良くなって 俺もここにいていいんだって思えた そんな瞬間の話

そう言って タケミチと千冬は去って行った

タケミチと千冬の帰り道

生きる気力がなかった

どこかに行ってしまいたかった

また大切な人を失った

また守れなかった

家族がそうであったように──

言葉に出せない

この気持ちをどう表していいのかわからない

ただ目の前にあるのは

大切な人を失ってしまったという事実だけ

二度と会えない

頭ではそうわかっていても

どこかに行けば会えるんじゃないかって期待してる

本当はどこかにいるんじゃないかって

違う

俺は場地に恋愛感情があったわけじゃない

きっと誰が死んでもこうなる

だって俺を“仲間”だって言ってくれたのだから

場地との出会いなんて良くなかったけど

幸せだったな

場地は面白かったな

ペヤングを千冬と半分コにしてんの見るの好きだったな

まぁ俺は1人前食ったけど

「好きだった？」

そう聞かれれば俺は心から言うだろう

って

俺が人を好きになる資格なんてないから

場地のことは好きじゃない

会えるのならば

もう一度会えるのならば

12年後

未来

☠🎃Happy Halloween🍭🍬

街に出ればハロウィンで賑わっている

そして

12年経っても俺は場地に会いたいと思っている

これを人はなんて言うのだろう

言葉では発音が同じだから

俺がどこに行きたいかなんてコイツらは知らないんだろうな

12年も前の話をグダグダと抱え込んでるの重いよな

疲れるし

だから早く捨てたい

早く場地に会いたい

（墓がないのでイメージに一番違い場所を）

花垣side

また

違うところを見ている

12年前に死んだ人が生き返るわけない

そんなこと分かりきっているはずだろ

場地くんが死んだことを報告した時

彼女は泣かなかった

涙をこぼすことなく俺らの話を聞いた

弱いところを見られたくないから涙を流さないんだと思った

だけど、瑠璃ちゃんから涙を流したなんて報告聞いてなかった

瑠璃ちゃんですら泣いた話を聞いてない

まぁ泣いたなんて話聞かないか、普通

そうだと思ったから瑠璃ちゃんは問いただしたらしい

答えは 「泣いてない」

泣いたと思った

場地くんのことを大切にしている彼女なら泣くと思った

プライドが高いから泣きたくても俺らの前じゃ泣かないんだと思った

それでも

泣くと思ったのに

涙を流した人は

その人の死を受け入れているから泣くのであって

泣かない人は

その人の死を受け入れていないということ

死を受け入れれば もう会えないと思い涙が出る

受け入れてなければ その人がどこかで生きていると信じているので波が出ない

どれだけ場地くんのことが好きなんだろう

確かにヒナが死んだ時、俺は泣いた

何度も何度も涙を流した

それでも過去に戻れば会えた

だけど彼女は二度と会えないんだ

何度目の前で好きな人が…大切な人が死んで耐えられるわけがない

俺だってメンタルにくるのに

過去に戻れなくて

二度と会えない

そりゃツラいよな

そりゃ精神的ダメージくらうよな

あれからきらちゃんの心からの笑顔を見たことがない

大変なことが色々あったから

彼女が生きていてくれるだけでも

俺も千冬も大丈夫だけど

彼女が死んだ時

千冬は大丈夫だろうか

場地くんが俺らに託した

“きらを頼んだ…”

あの言葉を叶えるべく俺らは頑張っているのに

もし死んでしまった時

俺らが死んだ時に場地くんに合わせる顔がない

無理に生きてくれなんて言えない

簡単に「わかるよ」なんて言えない

彼女のツラさは彼女にしかわからないのだから

同じように大切な人を失っても

人によって感じ方は違うのだから

それでも彼女が前を向いて生きていけるように

俺らが手を差し伸べるしかない

俺はヒナを守ることが優先だけど

千冬は違う

お願いだ、千冬

きらちゃんを守ってやってくれ

場地くんから託されたんだ

だから

どうか

お願いだから

in海

花垣たちは帰った

今は俺一人だ

違う

大切な仲間だ

かけがえのないもの大切な人

だからその1人が欠けるのは

俺にとって耐えられないことで

二度と会えないって頭ではわかってても

どこかにいるって信じたい

俺の大切な人

どこにいますか？

会えますか？

会えるなら返事をしてください

笑ってますか？

笑ってるなら嬉しいです

元気ですか？

1人ですか？

あの世で友達でもできましたか？

12年後の未来ではみんな楽しくやってます

あの花垣が一番隊隊長です

笑っちゃいます

でも一生懸命です

本当に良い奴です

千冬は一番隊副隊長のままです

花垣の部下って立場です

2人ともそこそこ仲良くやってます

俺は東卍を抜けました

今は芸能界にいます

女優をやってます

なぜかそこそこ売れてます

場地

あの世で何してる？

俺らの事見てるか？

ありがとう

俺の大切な仲間になってくれて

俺の大切な人になってくれて

俺もそっちに逝くからな

12年何やってたか、って？

死のうとする度に花垣たちが止めてくるからタイミング疑ってた

12年も生きてたんだ

頑張っただろ？

死にたかったのに生かされてるんだ

生き地獄だよな

今から行くよ

あ、千冬は連れて来ねぇから安心しろよ？

千冬には生きててほしいからな

俺みたいにならないでいてくれて嬉しいよ

さようなら、みんな

ありがとう、みんな

天国で

ああ、千冬の声がするな

ついに幻覚まで聞こえたか

あ、なんだ……幻覚じゃなくて現実か

海に入って俺は寝ようと思った

目が覚めたら天国だからな

きらを引き上げて

俺が「死なない」って言ったら

心から喜ぶ

コイツら見てると

俺が馬鹿らしく思うよ

本当にちっぽけだな俺って

幻覚だってわかってても

場地の声が聞けただけでこんなに嬉しいなんてな

じゃあな、場地

二度と会えねぇけど

次会う時は数十年先の話だ

待ってろ、俺の大切な仲間

2人「“いってらっしゃい”と“おかえり”を言うので！」

笑顔でそんなことを言う二人を見て

俺もつられて笑顔になるのだった

END