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嫌われてるはずの義理の弟(Dom)に面倒を見られる

第2話 - 困惑

2023年09月18日

#BL

#創作BL

北

朝日で自然に目が覚めた。

内原翔

うー…

内原翔

あれ、なんかすっきりしてる

内原翔

ってやばい！遅刻する！

いつも家を出る時間ぴったりで新幹線のごとく鞄を持って家を出た。

多田志摩

翔、寝坊しただろ〜

内原翔

あ゛ー、ギリ間に合ったー

いつもと違う様子の俺に親友の志摩が楽しそうな目で話しかけてくる。

多田志摩

なんかあったん？
昨日倒れたの運んだの俺な

内原翔

ああ、ありがとう。
でもなんかあったってレベルの話じゃないんだよな……

全力疾走していたおかげで忘れていた昨日の記憶がもわもわと頭の中に出現してくる。

多田志摩

え、ガチなやつ？

内原翔

うん、ここでは話せる内容じゃない

多田志摩

じゃあ放課後ファミレスでも行く？

志摩は一見ヘラヘラしてて何にも考えてなさそうに見えて、実は頭が良くて人の嫌がることは絶対やらないような信頼できる奴だ。決めた、こいつに相談してみよう。

内原翔

うん、行こう

笹原先生

内原！

内原翔

はい！

笹原先生

昼休み職員室に来るように

急に担任の先生に名前を呼ばれて驚いた。何か悪いことをしてしまったのだろうか？

笹原先生

内原

内原翔

あ、笹原先生

内原翔

僕なんか悪いことしましたっけ…

笹原先生

そうじゃない

笹原先生

昨日倒れたんだろ？

笹原先生

ちょっと確認させろ

内原翔

何をですか？

笹原先生

こっち来て

なんだが深刻そうな顔をしている。ただの睡眠不足なのに、申し訳ない。笹原先生は俺の担任の先生だ。爽やかで優しくてみんなに慕われている。

笹原先生

……

笹原先生

最近寝れないことはないか？

内原翔

あ！実はそうなんです

内原翔

ただの寝不足なんで気にしないでください

先生は俺の頬を下に引っ張って下まぶたを見たり、おでこを触って体温を確認したりなど、なにかを確認しているようだ。

内原翔

先生…？

笹原先生

…内原、お前今日もう帰って病院に

安達先生

笹原先生ー

笹原先生

！

安達先生

何してんの？
生徒の体触りまくって

笹原先生

…安達先生💢

笹原先生

邪魔しないでもらっていいですか

安達先生

何してるか聞いただけじゃん

安達先生

冷てー

内原翔

あ、すみません、僕本当に大丈夫なんで！！

内原翔

教室戻ります！

笹原先生

あっ、内原！

笹原先生

……安達先生のせいです

安達先生

大丈夫

安達先生

あいつ、多分もう相手いる

笹原先生

！

安達先生

つうか、そういうの俺に言えよ

安達先生

わざわざ呼び出さなくても俺ならすぐに

笹原先生

安達先生、生徒が呼んでますよ

安達先生

……はいはい

多田志摩

Subだって！？

内原翔

しー！静かにしろ馬鹿！

多田志摩

わ、悪い…

先ほどまでなんともないと言う顔で右耳のピアスをいじっていた志摩の顔つきが変わった。顔に汗をかいて前のめりでこちらを見てくる。

多田志摩

つかそれ、俺に言っていいの？

内原翔

え、言わないのか普通

多田志摩

相当な仲じゃないと言わないっつーか

内原翔

だって衝撃すぎて誰かに言わないと消化できねえよ

多田志摩

それもそうだけど…
だってダイナミクスって性別とはちょっとニュアンス違うし

志摩はいつになく真剣な目でこちらを見ている。それにしてもなんだか気まずそうにしている。

内原翔

なんだよ

多田志摩

つか、この際言うけど俺Domなんだわ…

内原翔

え

多田志摩

別に翔のこと仲良いって思ってないわけじゃないからな。
家族とパートナー以外誰にも言ったことないし

内原翔

は、彼女いたの？

多田志摩

は？何の話？

内原翔

今パートナーって言ったじゃん

多田志摩

あー、とりあえず勉強からだな

志摩は呆れたようにソフトドリンクをズズと吸った。

多田志摩

パートナーってのはDomとSubが結ぶ契約関係みたいなもので、恋人とは別なんだ。
まあ、パートナーと恋人を同じにする人が多数派だけど

内原翔

ふうん、でも志摩はそのパートナーと恋人ってわけじゃないんだな

多田志摩

まあ…そゆこと

志摩は何だか険しい顔をして答えた。もしかしたら何か訳ありなのかもしれない。

多田志摩

とりあえず、本屋寄って勉強用に買ったら？

内原翔

うん、そうする

多田志摩

つか、そもそもなんでSubだって発覚したわけ？

内原翔

ああ…俺弟いるじゃん、仲悪い

多田志摩

あー、再婚した親の連れ子だろ？
優等生だっていう

内原翔

うん。
そいつが昨日、俺が倒れたって学校から聞いたらしく、珍しく話しかけてきてさ

多田志摩

おう

内原翔

で、俺がSubで欲求不満で倒れたんじゃないかって言ってきて

多田志摩

そうだろうな

内原翔

そんなわけないって否定したんだけど、命令されて逆らえなくてやっぱりSubだって言われて

多田志摩

は……？？

内原翔

で、今日朝起きたらスッキリしてたから本当にSubっぽいなーって思って

多田志摩

ちょ、待て待て！！
今何つった？

内原翔

だから、朝起きたら…

多田志摩

ちげーよ！その前！

内原翔

え？なんて言ったっけ

多田志摩

命令されて断れないってつまり…

多田志摩

お前の弟がDomだってことだろ！

内原翔

え…そうなのか？

多田志摩

そーだよ！
しかもコマンド使われてるってことは、あっちはもうお前とパートナー関係を結んでるって思ってるかもしれないだろ！

内原翔

んん？
何をそんなに慌てて…パートナーにはならないって言えばいいだけだろ。
落ち着けよ

あまりの剣幕に少し引いてしまう。

多田志摩

そんな簡単な問題じゃないっつの！

内原翔

そーなのか…？？
まじでわかんねえ

多田志摩

いいか、これだけは約束してくれ。
ぜっったいに俺に相談したこと弟に言うなよ！

内原翔

お、おう。
わかった

内原圭悟

遅かったな

内原翔

…ちょっと本屋寄ってた

内原圭悟

ふーん

俺が帰ってくる音が聞こえたのか、待ち構えていたかのように部屋から圭悟がでてきた。なんだか圧が怖い。

内原圭悟

何買った？

内原翔

参考書、数学の

内原圭悟

みせて

内原翔

な、なんでっ、見せなきゃいけないんだよ！

内原圭悟

やっぱり、ダイナミクスについて勉強するんだろ

内原翔

……うるさいな、どけよ

内原圭悟

その本に書いてなかった？

内原翔

は…？

内原圭悟

「Domは独占欲が強い」って

内原翔

？

内原翔

何言って、ぅわっ！！

急に片腕をがっしりと掴まれ、圭悟の部屋に引きずられてベッドに投げられる。

内原翔

え、なにっ

内原圭悟

ファミレスにいただろ？

内原翔

！？

内原翔

(なんでバレてるんだ！？)

内原圭悟

何でバレたって顔してる

内原翔

！？

ベッドに転がされた後、仰向けの俺に覆いかぶさる。逃げられないように顔の横に両手をつけた。

内原圭悟

で？
何で隠した？

内原翔

べ、別に言わなくても、

内原圭悟

一緒にいたやつ、Domだよな

内原翔

！！

内原翔

（だからなんで知ってんだよ！！）

内原圭悟

何話した？

内原翔

何も話してねーよ！

志摩に絶対に何も言うなと言われたことを思い出して、必死で隠そうとする。

内原翔

も、どけよ

内原圭悟

"言え"

内原翔

っ、あ、

とにかく、奴の圧がすごかった。従わなければいけないと本能が警告を出しているみたいに汗が止まらない。ゾク、と体が熱を帯びる。

内原翔

（もうだめだ、志摩ごめん！）

内原翔

お、俺がSubだって言っただけだよ！
衝撃すぎて誰かに相談しないと無理だったし…！

内原圭悟

それで？

内原翔

お前とのこと話したら、俺と今日話したことお前に言うなって言われて…

内原圭悟

ふーん。
そいつの名前は？

内原翔

言ってもわかんねーだろ！

内原圭悟

言えって

内原翔

っ…、多田志摩っていう同じクラスの

内原圭悟

多田ね…。
へえー、覚えた

内原翔

もういいだろ！
どけよっ

内原圭悟

まだだ。
昨日俺が言ったこと覚えてないだろ

内原翔

へ…？

内原翔

（なんだっけ…？
あの時は頭真っ白になって、何にも考えられなかった）

内原圭悟

毎日面倒見てやるって言ったよな？

内原翔

（あ、そうだった…どう言う意味かわかんなかったけど…）

内原翔

うん…

内原圭悟

つまり、俺らはパートナーになったんだ。
意味わかるか？

内原翔

！！

内原翔

（やっぱり、志摩が言ってた通りだ。
勝手にパートナーにされてる）

内原圭悟

他のDomに相談するとかありえない。
俺にするべきだろ？

内原翔

パートナーとか、俺ダイナミクスのこととか何にもわかってねーし…

内原圭悟

だから、それを俺が面倒見てやるって言ってんだよ

内原翔

わ、わかったから、怖いって…

内原圭悟

怖くしてんだよ。
物分かりの悪いSubには躾が必要だからな

内原翔

もう、そういうのやめろよ！
見下したように言いやがって！
どけよ！

生意気な態度とプレッシャーに耐えられず、思わず圭悟の体を思い切り押して体勢を起こす。

内原圭悟

"Stop"

内原翔

っ

ベッドから立ち上がり部屋を出ようとしたが、圭悟からの一言でぴたり足が止まる。そんなの無視して部屋を出ればいいだろと思うものの、どうしてもダメなのだ。彼の言葉に従うことを体が求めている。

内原圭悟

俺から逃げられるなんて思うなよ

内原翔

急になんなんだよ、お前…俺のこと嫌いなんだろ…！

内原翔

今更仲良くできると思ってんのかよ！

内原圭悟

はっ、嫌ってるのはそっちだろ。
極力俺に会わないようにしてたくせに

内原翔

それはお前が嫌味ばっか言ってくるからだろ！

今更関わってこようとするなよ、と怒りが湧いてくる。会った時から俺ばかり圭悟と仲良くなろうと努力してた。それをいつも突き放してきたのはこいつだ。

内原圭悟

まだ気にしてんだ？
兄弟だと思ってないって言ったこと

内原翔

！！

内原翔

…お前、いい加減に

母

二人とも、お風呂早く入って！

内原翔

！

内原圭悟

すぐ入るよ、母さん

怒鳴りそうになったところ、母さんの声が聞こえて我に帰った。悔しそうに下唇を噛んで何も言わずにいる俺の代わりに、圭悟が返事をした。

内原圭悟

明日から俺が全部教えてやるから、寄り道しないで帰ってこいよ

内原翔

……

内原圭悟

"返事"

内原翔

！

内原翔

わかったよ…

俺は渋々そう答えた。どんなに嫌でも、奴の言葉には逆らいたくないと思ってしまう。

嫌われてるはずの義理の弟(Dom)に面倒を見られる

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