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私があの子の背中を押しました

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私があの子の背中を押しました

1 - 私があの子の背中を押しました

♥

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2021年03月19日

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警察官

……清白、さん。正直に答えてくださいね

警察官

あなたが、花美さんを……?

私は、形のいい唇を三日月にして答える

清白 凛

はい、私が花美さんを殺りました

清白 凛

あの子を、殺しました

警察官

あなたを、殺害の罪で逮捕します、

清白 凛

どうしてです?何か問題が?

警察官

は?

警察官が、訳の分からない顔でこちらを見てくる

訳が分からないのはこちらの方だ

清白 凛

だって、ねぇ?みんな、あの子のこと…花美さんのこと、嫌いでしょう?ねぇ?

女生徒

そ、そんなことないよっ…。なんで勝手に決めるの……

清白 凛

……。まぁ、うん。普通そう言いますよね。ふふふっ。でもね、証拠があるんですよ。こっちには

女生徒

は、?

清白 凛

このノート花美さんのです

警察官

それが、どうしたんだ

清白 凛

あら?まだ分かりませんか?…このノート、ただの社会のノートなのにボロボロなんですよ。ところどころ破られていたりして、

清白 凛

ノートを開くと、ほら!『ブス、キモイ、タヒね、学校来るな』……これ、筆跡鑑定しちゃったら、誰の文字か分かるのなんて一瞬でしょうね

女生徒

っ!!!、でもっ、清白さんが花美さんを殺したのも間違いないじゃない!

警察官

っ、このノートは、預からせてもらう。だが、君が花美さんを殺したのもまた事実だ。故に一緒に来てもらう

清白 凛

……そうですか。分かりました

私はまた笑う

だが、疑問だ。なぜ逮捕されなくてはならないのだろう。なぜ?

私は頼まれたからやっただけ──

半年くらい前──

女生徒

きゃはははっ

清白 凛

(……ん?なんだか、教室が騒がしいな…。注意しようか……)

ガラガラ…

清白 凛

あの──っ!?

女生徒

だっ、誰だよっ!?

花美 琴音

っ!!?りっ、凛ちゃんっ!?ヤダっ!見ないでっっ!!

そこには、胸部分がさらけ出された琴音を、恐らくやったであろう女生徒が撮っているという地獄絵図があった

清白 凛

琴音っ!?君たち、琴音に何したんだ!!!?

女生徒

ひ、ひぇっ、清白じゃんかよっ、やっっっべぇ、逃げよ!

女生徒

チクられるかもっ!

女生徒達はそう言ってぎゃあぎゃあ騒ぎながら出ていった

清白 凛

琴音っ……、大丈夫っ……?

花美 琴音

……り、んちゃ…私っ……うっ、うぅ、ぐす

清白 凛

大丈夫だよ……。凛はここにいるから……。今は誰にも何もされないから……。安心して……

そう言って私は琴音に服を着せた

一方の琴音は、先刻の真っ赤な顔とは違い、真っ青な顔で俯き、震えていた

清白 凛

(先生呼んだほうがいいかな……)

花美 琴音

っ!まって!行かないで……、今一人になるの嫌なの…。先生にも言わないで欲しい……

清白 凛

でも……ぅん、琴音がそう言うなら分かったよ

清白 凛

また、こういう事があったら遠慮なく私に言って?

花美 琴音

うん。ありがとう、凛ちゃん

その時の琴音は少し、顔色がよくなってきていた

その後も幾度か琴音から相談を受け、ある日、話があると屋上に呼ばれた

清白 凛

おーい、琴音ー?来たぞー

花美 琴音

あ、……凛ちゃん。やほ

清白 凛

ぁ、うん。やほ

その時の琴音は悲しそうに笑っていた

清白 凛

(いつも私と話す時は、もっとキャピキャピしてるのに……。よほど嫌なことがあったのだろうか……)

清白 凛

今日はどうした?言ってみ?

花美 琴音

私を、押してほしいの

押す?琴音を?

清白 凛

どういうこと?

花美 琴音

私の背中を押して──

清白 凛

(ぁ、あ、そういう、ことか)

琴音は今、フェンスの端っこにいる。わかった瞬間、背中の毛が逆だった

清白 凛

私に、どこかダメな部分が、あっ、た?

花美 琴音

ううん。悪いのは私。毎回毎回いじめられる度に凛ちゃん呼んで、迷惑かけて、ごめんね

清白 凛

ぜんぜん、全然そんなの思ってない!!!!勝手に決めつけんなよ!!!バカ琴音!!!うわぁぁぁ!!!!!

花美 琴音

凛ちゃん……。でも、もう決めたんだ。楽に、なりたい

清白 凛

うっ、うっ、うぐっ、ぁぁぁぁ!!!!

花美 琴音

お願い、凛ちゃん

その時の私は酷い顔をしていただろう。鼻水と涙で顔はぐしょぐしょ。手で頭を掻き乱して髪型もぐちゃぐちゃ。呼吸が荒くなって、俯いている

決断できない。判断できない。私は琴音にいなくなって欲しくない。ずっとずっとそばにいて欲しい。でも琴音は違う。楽になりたい。琴音は楽に──

清白 凛

ぁ、ぅ、ゃだ……

私は琴音にいつまでも笑ってほしいから。ずっとずっとずっと、楽しそうにしていて欲しいから。だから──

そう考えると、体が前へ前へと進んでいた

花美 琴音

凛ちゃん…

清白 凛

琴音……っ

琴音は笑う、私も笑う。いつもみたいに綺麗じゃなくて、くしゃりと紙が縮んだみたいに

花美 琴音

元気でいなよっ!

清白 凛

お前もなっ!!!!

琴音は消えた

私の前から、消えた

目には綺麗な青空が写っている

清白 凛

ぁ、ぅ、うぅっ、天国でも見てろよっ!バカ琴音っっ、!!!!……ぐすっうわぁぁぁ!!!!!

その時のことを見ていた生徒がいた。そして、先生に言った。警察が来た

清白 凛

(これくらいで、この物語も終わりかな)

パトカーの中から見える景色を眺める

清白 凛

(流石にみんな、刑務所の中での話なんて聞きたくないだろうしね)

清白 凛

(これから多分私は、酷くなるだろうな)

清白 凛

(琴音、私ね──)

警察官

おい、何をしているんだ

清白 凛

なんでしょう。分かりません、私にも

私、多分ね、すぐそっちに行けると思うよ

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