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僕が持ってるポケットは、なんでも出せる魔法のポケット。
お母さんがある日僕に言った。
母
お母さんは僕を、天界と人間界を繋ぐエレベーターに乗せて、 笑顔で見送ってくれた。
人間界に着いた僕は公園へ向かった。 神様は人間界に来ると、人間の姿と神様の姿を使い分ける。 神様の時は人間には見えない。 今は神様として、お母さんが言っていた少女を探した。
いつも一人でいて、 ジャングルジムの上で足をぶらぶらさせていて、 さくらんぼの髪飾りをつけている。 僕はその情報を頼りに公園を見渡した。
マチル
僕は人間としてジャングルジムの上にいる少女に話しかけた。 情報どおりの少女だった。
???
マチル
エリ
にこにこと話すエリちゃん。 僕と同じくらいの背格好で、ふわふわと風になびくワンピースを着ていた。
マチル
エリ
マチル
エリ
僕はポケットから板チョコを一枚取り出した。
マチル
エリ
エリちゃんはジャングルジムから降りると、 チョコレートの銀紙をびりびりに開けて食べ始めた。
エリ
マチル
エリちゃんの目が輝いた。
エリ
マチル
エリ
僕は人間界に来る前に一つだけお母さんに言われたことがある。
マチル
この言いつけを守らないと、僕は強制的に天界に戻される。 でも逆に、エリちゃんを立派にするか、 約束を破るかしない限り、天界には戻れない。
マチル
エリ
夕方五時のお知らせのアナウンスが流れる中、 エリちゃんは僕に手を振って、走って帰っていった。
エリちゃんはその日から毎日公園に来た。 でもお願いするのはお菓子ばかり。
マチル
エリ
マチル
エリ
確かに食べ過ぎはいけないけど、そこまで言う必要はあるのかな。
マチル
エリ
エリちゃんは夕方五時ぴったりに帰っていった。
その日から数日経ってもエリちゃんは公園に来なかった。 久しぶりにエリちゃんが来た時、その頬にはあざがあった。
マチル
エリ
あまりにもひどすぎる。 一日一個、食べていただけじゃないか。
エリ
マチル
エリ
エリちゃんは唇を震わせながらうつむいている。 また、夕方五時のアナウンスが流れる。
エリ
エリちゃんが僕に手を振ることはなかった。
そこから数年間、エリちゃんが来るまで眠っていた。 エリちゃんが公園に来た時、背は僕をはるかに越えて、 学年、組、番号が書かれた中学校の名札を着けていた。 僕の姿は変わらない。
マチル
エリ
マチル
僕はポケットから柴犬を出した。 エリちゃんは柴犬を抱き上げて言った。
エリ
マチル
エリ
夕方五時のアナウンスが流れ出した。 エリちゃんが深いため息をつく。
エリ
エリちゃんはそれだけ言って、とぼとぼと帰っていった。
その日からエリちゃんは、コロの餌だけを僕にお願いするようになった。 そして必ず夕方五時に帰っていく。 たった一時間、僕はエリちゃんにかける言葉を見つけられなかった。 そして最悪の事態が起こった。
エリちゃんがコロと公園外へ散歩に出かけた。 でも戻ってきた時、コロはエリちゃんに抱えられて、全く動かなかった。
マチル
エリ
よく見るとエリちゃんもぼろぼろだった。 顔や腕にあざがたくさんできている。
マチル
エリ
マチル
エリ
誰もいない公園に叫び声が響いた。 僕は焦って返答する。
マチル
エリ
エリちゃんはコロを公園の隅に隠して、 夕方五時のアナウンスとともに帰っていった。
僕はいつもどおり待っていた。 エリちゃんが「明日」と言ったから。 でも夕方五時を過ぎてもエリちゃんは来ない。 学校はもうとっくに終わっているはずなのに。
エリ
エリちゃんの声だ。 前を見ると、エリちゃんがこっちに走ってきている。 その後ろには知らない女の子がエリちゃんを追いかけていた。
エリ
僕のところまであとちょっとというところで、 エリちゃんは女の子に髪を掴まれた。
女の子
エリ
僕は何が起きているのかわからなかった。 でもエリちゃんが望むなら、僕はそれを出すだけだ。 ポケットから出したシャベルをエリちゃんに渡した。
エリちゃんはシャベルを受け取り、それを女の子の頭に振りかざした。 女の子はもう動かない。 エリちゃんは血で汚れた顔を服の袖で拭い、 コロと一緒にその女の子をシャベルで埋めた。
エリ
マチル
エリ
夜七時、エリちゃんは夜道を一人で帰っていった。
僕は公園で一人座っていた。 もう日付が変わろうという時間、 目の前に見えたのはエリちゃんだった。
マチル
エリ
エリちゃんは笑いながら涙をこぼしていた。 僕も胸が痛くなって、泣きそうになる。
エリ
マチル
エリ
さすがに察しがついた。でも、選択肢はないよね。 僕はため息混じりの返事をした。
マチル
ポケットからナイフを出してエリちゃんに渡した。 エリちゃんはそれを受け取り、僕を優しく抱きしめた。
エリ
僕の耳元で小さく囁く。 エリちゃんの声は妙に凛としている。
エリ
腹部に激しい痛みが走り、何かが滲むような感覚がした。 僕はそのまま倒れ込む。
マチル
薄れゆく意識の中、僕を見下ろすエリちゃんに尋ねる。
エリ
ポケットを奪ったエリちゃんは、どこかへ消えてしまった。 ポケットはきっと、普通の物になっているだろう。
マチル
僕は静かに眠りについた。