ハク
ちょっとソウさん!今いいかしら?
ソウ
はい、何ですかお義母さん?
ハク
今月の仕送りはまだなの?
ハク
結婚当初から毎月10万、送ってって言ったわよね
ソウ
お義母さん、その事なんですが……
ソウ
流石に10万は無理です。以前の5万でもキツいくらいですよ
ハク
あのねソウさん、あなたはメイと結婚したのよね?
ハク
義理とはいえ私の息子になったのよね?
ソウ
はい、それはそうですが……
ハク
なら、義理の母である私の言う事を聞くのが筋よね?
ソウ
いや、それは……
ソウ
本当に困ってるなら多少援助しますが、僕たちにも生活が……
ハク
はあ?あなた稼いでいるのよね?
ハク
稼いでいるなら家族の私にもお金寄越しなさいよ
ソウ
生活していけるくらいには稼いでますが、余裕がある訳では……
ソウ
それに子供ができた時のために貯金しておきたいですし
ハク
子供なんて生まれるかどうか分からないじゃない!
ハク
まだ生まれてこない子供より、今生きている私に尽くしてよ!
ハク
メイには優しくして、義母の私には優しくできないの!
ソウ
そういう訳ではないですが、流石に10万は……
ハク
あなた、月に30万は稼いでいたわよね?
ハク
前に家に行った時、通帳見たわよ
ソウ
お義母さん、僕の通帳見たんですか?
ハク
何よ、娘の夫の通帳見て何か悪いの?
ハク
それだけ稼いでいるなら、10万なんてはした金でしょ?
ソウ
そんな事ないですよ!人生何があるか分からないですし
ハク
そのくらい稼ぎがあるなら十分よ!私に頂戴!
ソウ
だから、10万は無理ですって!こっちにも生活があるんです!
ソウ
妻のメイとも話し合って決めたんです
ハク
そのメイを育てたのは私なんだけど?
ハク
その私に感謝の意はない訳?
ソウ
感謝が無い訳ないですが、仕送りする理由にはなりません
ソウ
メイにも送らなくていいって言われてるので
ハク
あいつ……余計な事を!
ソウ
本当に困ってるなら多少は援助します。しかし10万は無理です
ソウ
しかもたまにならともかく毎月なんて……
ソウ
いくらお義母さんの頼みでも、それはできません
ソウ
そもそも、10万って何に使うんですか?
ハク
それは……ちょっとしたものよ!
ソウ
とてもちょっとしたものを買うような金額ではないですが……
ソウ
お義父さんだってまだ定年にはなってないですし
ソウ
特に生活に困っているとは思えませんが……
ハク
男のソウさんには分からないかもしれないけどね、
ハク
女は何かとお金がかかるのよ!
ハク
黙って10万寄越しなさい!
ソウ
申し訳ないですが、用途も分からず大金を渡す訳にはいきません
ソウ
メイに迷惑をかける訳にもいきませんし
ハク
ああもう、強情な人ね!
ハク
何でメイはこんな男と結婚したのかしら?
ハク
お父さんも挨拶に来て結婚認めちゃうし!
ソウ
それについては本当に感謝しています
ソウ
それでこそ、お金には代えられないくらい
ハク
私はお金に変えて欲しいのよ!
ソウ
とにかく、これから仕送りの連絡は受け付けません
2週間後
ソウ
お義母さん、少しいいですか?
ハク
何?ソウさん。私これからショッピングで忙しいのに……
ソウ
一昨日家に来た時、置いていたお金盗みましたよね?
ハク
はあ?変な言いがかりはよしてよ
ハク
私は盗ってないわ
ソウ
とぼけないでください、お義母さんがお金を抜き取っているの、
ソウ
メイが見ているんですよ。写真も見せて貰いました
ハク
隠し撮りしてたの?最低!
ソウ
最低なのはお義母さんですよ
ソウ
あのお金はメイとデートに行くためのものです
ソウ
明日は2人の結婚記念日だったので
ハク
別に5万くらいはした金じゃない!
ハク
ソウさんならすぐ稼げるでしょ?
ソウ
そういう問題じゃないです!
ソウ
実の母親とは思えない所業に、メイは今泣いてますよ
ハク
何よ、家族なんだからいいじゃない!
ハク
稼いでいるんだから私にも恵んでよ!
ソウ
お義母さん、この前お義父さんから聞きましたよ
ハク
は?何よ?
ソウ
この前会った時、相談したんですよ
ソウ
お義母さんから仕送りをするように迫られてるって
ソウ
そしたら、お義父さんもお義母さんに5万程月に渡してるって
ハク
そ、それじゃ足りないのよ!
ハク
私には色々と欲しいものがあるの!
ソウ
お義父さんから5万も貰っているのに足りないって……
ソウ
一体何に使ってるんですか?
ハク
そ、そんなのあなたに関係ないじゃない!
ハク
あなたは黙ってお金を渡してくれればいいのよ!
ソウ
はあ……あんまりこんな事言いたくないですが、
ソウ
どうしてメイはまともなのにお義母さんはこうなのか……
ハク
とにかく、家族なんだから別に使ったっていいじゃない!
ハク
あなたはメイの夫でしょ?
ハク
なら私がお金を使っても別にいいでしょ!
ソウ
では、金輪際仕送りはなしにしてください
ハク
はあ?
ソウ
今までは我慢してきましたが、もう我慢できません
ソウ
メイとも相談して決めました。お義父さんからも貰ってるんですし
ソウ
これ以上お金を取られると、あまり考えたくはないですが、
ソウ
お義母さんと縁を切る事も考えないといけません
ハク
何でよ!たかが5万くらいで!
ハク
家族間でのお金のやり取りなんて普通でしょ?
ソウ
だとしても、黙って持っていくなんてあんまりですよ!
ソウ
一番辛いのは俺じゃなくてメイなんですから!
ソウ
メイの事も少しは考えてくださいよ!
ハク
何よ?メイは私の娘なんだから!
ハク
何があっても私の事を見捨てないわよ!
ハク
誰が育ててきたと思ってるの?
ソウ
メイを立派に育ててくれた事には感謝します
ソウ
お陰で素敵な妻と結婚出来ましたから
ハク
でしょ?ならその恩返しをするべきよ!
ハク
メイを立派にに育ててきたんだから!
ソウ
いえ、それとこれとは別です
ソウ
とにかく、もう仕送りはしませんからね!
その日の夜
ソウ
メイ、大丈夫か?俺がふがいないせいで……
メイ
ううん、大丈夫だよ。私はソウと一緒にいられるだけで幸せだし
ソウ
ごめんな、せっかくの結婚記念日にと貯めていたのに……
メイ
大丈夫、でも別の日にまた行きたいな
メイ
私と初めてのデートで行ったあのレストラン
ソウ
メイがいいなら別の日に行こう!
ソウ
俺も行きたかったし
メイ
うん。それとね……
メイ
一昨日みたいな事ってさ、また起こらないとも限らないじゃない?
ソウ
まあ、そうだな……あのお義母さんの事だし
ソウ
メイのお母さんという事もあってか、あまり無下にできないし
メイ
ソウ、私覚悟してるよ
ソウ
ん?どういう事?
メイ
お母さんと縁を切る覚悟
ソウ
メイ……
メイ
私もね、お母さんだからあんまり強く言えないって気持ちもあった
メイ
でも、流石に今回の事は許せない
メイ
この話、お父さんにも相談したの
ソウ
というと?
メイ
お母さん、次もきっとお金を取っていくと思う
メイ
お金を引き出さなきゃいいって話かもだけど、
メイ
そうなればきっと私たちの財布から抜き取っていくと思うの
ソウ
まあ、あんまりこんな事言いたくはないけど……
ソウ
多分そうだね。きっと言うだけじゃ聞かないと思う
メイ
でしょ?だから少し懲らしめなきゃなって
ソウ
いいのかい?一応君のお母さんなんだよ……
メイ
心配してくれてありがとう。でもいいの
メイ
私はもうあの人の娘じゃなくて、あなたの妻なんだから……
ソウ
メイがいいなら俺も協力するよ
ソウ
俺ももうメイの夫である訳だしね
ソウ
それに、これ以上お金を取られるのも嫌だし
メイ
私の方こそありがとう。私の味方をしてくれて
ソウ
当たり前だろ?今は俺たち2人なんだからさ
ソウ
ところで、お義母さんを懲らしめるってどうするの?
メイ
実はもう既に考えてあるの
メイ
それはね……
1ヶ月後
ハク
ちょっとソウさん、なんて事してくれたの!
ソウ
何ですか?お義母さん
ハク
よくも……よくも私に恥をかかせてくれたわね!
ソウ
は?何の事ですか?
ハク
あんたの家から貰ったお金
ハク
最初の1枚以外全部白紙のメモ帳じゃない!
ハク
札束かと思ったのに!
ハク
お陰で友達と外食に行った時、奢ろうとして恥をかいたわ!
ハク
友達全員から笑われて、おまけにお父さんには怒られるし
ソウ
ああ、あれですか
ソウ
まさかあんなに簡単に引っかかるとは思いませんでした
ソウ
お義父さんから話を聞いた時、メイと2人で笑いましたよ
ハク
何ですって?あれあなたの仕業なの!
ハク
酷い!
ソウ
酷いのはどちらですか?
ソウ
そんな事が起こる時点でお義母さん、
ソウ
また僕たちの家からお金を盗ろうとしましたね!
ハク
何よ?家族なんだからいいじゃない!
ハク
お金のやり取りくらい日常茶飯事でしょ?
ソウ
いや、お金を盗るのが日常な訳ないでしょう!
ソウ
家族かんでも窃盗は成立するんですよ!
ハク
はあ?そんな訳無いでしょう!
ハク
警察は民事不介入よ!
ソウ
いや、窃盗は刑事事件扱いですから!
ハク
大体、そんなに騒いでいるのはあなただけでしょう?
ハク
メイは私の娘なんだから、許してくれてるわよ!
ソウ
いや、今回の作戦はメイが考えたものですよ!
ハク
え?メイがそんな事する訳……
ソウ
いえ、メイはもう覚悟を決めました
ソウ
俺もですが
ハク
覚悟?
ソウ
ええ、お義母さんと……
ソウ
最悪絶縁する覚悟です
ハク
え、ええ!
ハク
嘘でしょ?メイが……
ソウ
お義母さん、僕もメイもこんな事はしたくありません
ソウ
だから、今まで盗っていったお金を返してください
ハク
はあ?無理よ
ハク
私働いてないし!ずっと専業主婦だったもの!
ソウ
もし返してくれるなら、お義母さんとは縁は切りません
ソウ
今までの仕送りも水に流します
ソウ
これも、メイと話し合って決めていた事です
ハク
そんな事言われたって……
ソウ
前にも言いましたが、お金を抜き取るお義母さんを見た時、
ソウ
メイは泣いていたんですよ
ソウ
自分のお母さんがそんな事をする人だったなんて
ハク
そ、それは……
ソウ
俺の事は別にいいんです。でもせめてメイの事を考えてください
ソウ
あなたの娘なんですから
ハク
っ、ああもう!2人揃っていちいちうるさい!
ソウ
え?お、お義母さん?
ハク
親の私が欲しいって言ってるんだから、黙ってよこしなさいよ!
ハク
私は親なんだから、親が子供のお金を使って何が悪いの?
ハク
むしろお金を渡さないあなたたちが悪いのよ!
ソウ
……そうですか
ソウ
お義母さん、さっきのは最後のチャンスですよ
ハク
はあ?チャンス?
ハク
義理とはいえ親に向かって……
ハク
そもそも、あなたがメイと結婚すること自体反対してたでしょ!
ソウ
それは以前に聞きましたし、お義母さんの考えは分かりました
ソウ
残念ですが、メイと決めた通りにする事にします
ハク
決めた通りって、どうするのよ?
ソウ
今まで渡したお金、全額お義母さんに請求しますね
ソウ
ちなみに払えるかどうかは関係ないです
ハク
は、はあ?どういう事よ?
ソウ
言った通りですよ。俺はメイの味方なので
ソウ
それにお義母さん……
ソウ
僕たちから盗ったお金、若い男に貢ぐために使ってますよね?
ハク
はあ?今度は何を言いだすの?
ソウ
もうネタは上がってるんですよ
ソウ
最近、やたら家を空ける事が多くなったそうじゃないですか
ハク
そ、それは……
ソウ
お義父さんも不思議に思って、探偵に依頼したようです
ソウ
証拠もありますから、言い逃れはできないですよ
ハク
あ、遊びだったの!
ハク
本気じゃないの!
ソウ
本気かどうかは関係ないですよ
ソウ
僕たちから盗ったお金をそんな事に使っていたのが問題なんです
ソウ
お金、全額請求させてもらいますからね
ハク
ねえごめんなさい!メイやお父さんにも何とか言って!
ソウ
残念ですが、もう無理です
ソウ
メイももう、覚悟を決めました
ソウ
それでは、後はお父さんと話し合ってください
後日談
ソウ
その後、お義母さんはお義父さんから離婚を突きつけられ、
ソウ
取ったお金と盗んだお金に加え、慰謝料を請求されたそうです。
ソウ
今は義実家を追い出され、バイトを掛け持ちしながら
ソウ
アパートで一人寂しく暮らしているそうです
ソウ
僕は取り返したお金でメイと改めて記念日デートに行きました。
ソウ
これからはお義父さんと協力し、メイと家庭を築いていきます。