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ねこねこにゃんこ
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#〔インターネット少年/少女〕
狸野 ゆゆせ
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配信が終わったあと、部屋には妙に静かな空気だけが残っていた。 さっきまで絶え間なく流れていたコメントも、明るく鳴っていたBGMもない。 モニターの光だけが淡く机を照らしていて、朝比奈ひかりは、ヘッドセットを外したまま少しだけ背もたれに寄りかかった。
朝比奈 ひかり
ぽつりとこぼすと、隣のモニター越しに、月城レイの声が返ってくる。
月城 レイ
それだけだった。 それだけなのに、なぜか妙に落ち着く。 ひかりは自分の膝の上で手を組み、少しだけ息を吐いた。 配信中は平気だった。コメントを拾って、話題を回して、レイの軽口にもちゃんと返せた。 でも終わってしまうと、張っていた糸が少しだけ緩む。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
レイはすぐに返事をしなかった。 キーボードを押す音だけが、しばらく小さく響く。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
ひかりは少しだけ笑った。 レイのこういう、言い切るみたいでいて優しいところが、たぶん少しずつ気になっている。
朝比奈 ひかり
言ってから、ひかりは自分の声が思ったより小さかったことに気づいた。 レイの方から、ふっと息を漏らす気配がした。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
その一言に、ひかりは少し黙った。
配信中のことを思い返す。 コメント欄に流れる質問、ふいにずれた話題、自分が答えるのに少し迷った瞬間。 そのたびに、レイは何気なく言葉を差し込んでくれていた。 大げさじゃない。 派手でもない。 ただ、ひかりが困らないように、自然に。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
レイは少しだけ沈黙して、それから短く返した。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
その言い方は軽いのに、どこか乾いていた。 ひかりは、画面の向こうのレイを見つめる。 直接見えるわけじゃないのに、なぜか、少しだけ伏せられた目元まで想像できた。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
言ってしまってから、ひかりは少しだけ後悔した。 あまり踏み込みすぎたかもしれない、と。 けれどレイは、怒ったような気配も、はぐらかすような気配も見せなかった。 ただ、少し長めに黙る。 その沈黙が、かえって返事よりずっと正直だった。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
そこでレイは言葉を切った。 ひかりは、続きがあるのを待つ。 けれどレイはそれ以上言わず、マイクの向こうで椅子を鳴らした。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
ひかりは目を瞬かせた。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
即答だった。 ひかりは、少しだけ黙る。 自分ではうまく隠していたつもりだった。 けれど、レイにはとっくに見抜かれていたらしい。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
レイはそこで、ようやく少しだけ笑った気配を見せた。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
ひかりは言いかけて、それから視線を落とした。 モニターの光が、机の端に淡く映っている。 さっきまでの賑やかさが嘘みたいに思えるくらい、部屋は静かだった。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
レイが、そこで初めて完全に黙った。 ひかりは、言ってから急に恥ずかしくなった。 そんなこと、わざわざ言うつもりじゃなかった。 けれど、さっきから胸の奥にあったものが、つい口をついて出てしまった。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
返事はすぐだった。 けれど、その声はいつもより少しだけ低かった。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
少し間が空いた。 ひかりは、モニターの向こうにいる相手の顔を見ようとするみたいに、自然と前のめりになる。 でも当然、画面に映っているのは静かな待機画面だけだ。 やがて、レイが短く答えた。
月城 レイ
その一言は、たったそれだけなのに、ひかりの胸を妙にあたためた。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
レイは少しだけ言い淀んで、それから続けた。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
ひかりは、思わず黙った。 今のは、何でもないふうに言われた。 でも、ひかりには妙に響いた。 自分が誰かの役に立っているなんて、あまり考えたことがなかった。 まして、それをレイが言うなんて。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
ひかりは、少しだけ笑った。 笑いながら、胸の奥がやわらかくなるのを感じる。 配信中も楽しかった。 でも、こうして終わったあとに交わす、何気ないやり取りのほうが、なぜかずっと残る。 コメントに見せるための言葉ではない。 誰かを笑わせるための声でもない。 たったひとりに向けた、少しだけ素の声。 それが、こんなにも落ち着くものだなんて思わなかった。
朝比奈 ひかり
気づくと、ひかりはそう言っていた。 レイが、すぐに返さない。 少しだけ間があって、それから小さく息をついた。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
ひかりはくすっと笑う。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
ひかりは笑いをこらえきれなくなった。 その笑い声に、レイも小さく笑う。 しばらく、ふたりとも何も言わなかった。 でも、その沈黙は気まずくない。 むしろ、言葉がなくても平気だと分かる沈黙だった。 やがて、レイが画面越しに言う。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
ひかりは少しだけ笑って、頷いた。 レイは、そういうふうに直接は言わない。 けれど、ちゃんと気にかけている。 それがわかるから、ひかりは安心できるのかもしれない。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
その言い方に、レイがほんの少し黙った。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
また少し、笑いが重なる。 やがてレイが、いつもの調子を取り戻すように言った。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
一瞬、ひかりは意味がわからなかった。 けれどすぐに、その言葉のやわらかさに気づく。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
レイは、少しだけ笑ったようだった。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
通話が切れる。 部屋に、また静けさが戻った。 けれど今度の静けさは、さっきより少しだけあたたかい。 ひかりは椅子の背にもたれ、目を閉じる。
“また言っていいから”
そんなの、反則だ。 何気ない顔で、どうしてそんなことを言うのだろう。 けれど、そういうところが、たぶん好きなのかもしれない。 まだ恋だなんて言えるほど、はっきりしたものじゃない。 ただ、レイといると呼吸が楽になる。
少しだけ素の自分でいられる。 そのことが、ひかりには何より大きかった。 窓の外は、もうすっかり夜だった。 でも、胸の奥には、さっきまでの配信よりもずっと静かな光が残っていた。
コメント
1件
おお…第2話、めちゃくちゃ良かったです。配信後の静かな余韻と、二人だけの素の会話が丁寧に描かれていて、胸がじんわりしました。特に「また言っていいから」のレイのセリフ、あれは反則級に優しいですね。ひかりが感じている「ちょっと素の自分でいられる」感覚に共感してしまいました。次はどんな配信になるのか、二人の距離がどう変わっていくのか、すごく楽しみです!