ジミン
ここから出られるようになったらね?
ジミンが俺にしたのはキスだけ。 してって我儘を言えないのは、こないだジョングクに全て暴露た時の前科がある事と、捨てられたくないという怯えからだ。
それでも名残惜しくて靴を履く前のジミンの背中に抱きついて胸に手を這わせる。
ジミン
そういうことしちゃダメだって。
溜息をついたジミンが振り向いて俺の腰を引き寄せる。 下半身がぴたりとくっ付いて"その気"になってるジミンが分かる。
ジミン
覚悟して俺に会える?
ホソク
ジミン
ジミンはそう言ってそのまま俺の後頭部に手を添えてぐっと深めのキスをしてくれた。 ジミンの舌が口内に入って来た事で、安堵するなんてイカれてる。
'またね'と俺の頭を撫でてジミンがいなくなった後で、ケーキの残骸とマグカップが2個置かれたテーブルを見て寂しさが込み上げてくる。 涙は出ないけれど、寂しい。
俺のジミンにはならなかった。 ジミンのモノになりたかったのに。
グク
自室のドアが開いた。 その声はジョングクのもので間違いないのだけれど、ベッドの上で布団もかけないまま横たわった状態の俺は、ただ返事をする気になれなかった。
静かな足音が近付いて来て、ベッドの一部が沈む。
グク
その名前が出てきて顔だけを上げると'分かりやす'と笑ったジョングクが俺と同じ様にベッドに横たわった。 更にベッドが沈む。
グク
意地悪な質問だ。
ホソク
ケーキだけ食べて帰った。
ホソク
グク
そう返ってきたけど、ジョングクの頬が緩んでるのは見れば分かる。 人の不幸は蜜の味ってこういう事なのか。
追い討ちをかけるなら出て行ってほしい。 今日は単純にヤらなかっただけじゃないから。
だからジョングクに背を向けて大きなガラス窓の外の景色に目をやる。
ホソク
ホソク
からかいたいなら後でにして。
涙は出ない。 ルブタンを投げるような男だから。 セリーヌのバッグまで投げたくない。
俺のベッドから降りて出て行く、そう思った。 なのにベッドの沈みは変わらないし、むしろ背中側が温かくなってジョングクの腕が俺のお腹に回されて。
グク
鼻を微かに鳴らしながら俺の頭に顔を近付けたジョングクが言った言葉にジミンが重なる。
"ホソギヒョンの匂いだ、俺の好きな"
寂しい。 ジミンが恋しい。
グク
身体を起こしたジョングクが俺を覗き込んできたけれど
ホソク
その顔を半ば睨むように見上げて言った。 物理的には泣いてない。 それは事実だ。
呆気に取られたような表情のジョングクの目が俺の顔をじっとただ見つめている。
ホソク
グク
ジョングクの言葉に心臓が揺れた。 顔に書いてある、嘘が下手、だからって分かる? 唖然とする俺の肩をジョングクがゆっくり押した後で、俺を組み敷いた。
グク
真正面から降ってきたそれにまたハッとさせられる。
俺の事を好きなジョングク、ジミンの事を好きな俺。 お互い一方通行で同じ気持ち。
グク
ジョングクの喉仏が上下して、ピアスの付いた唇が緩やかなカーブを描いて上がる。
グク
そんな事。
ホソク
ホソク
グク
グク
軽く声を出して笑うジョングクに俺だけが困惑している。 "好きなだけ"には語弊があるけれど、そういう事じゃなくて。 と、今じゃない押し問答を頭の中で繰り返しているとちゅっと音を立てて悪戯のようなキスが突然。
ホソク
それに面食らってると今度は直ぐにジョングクの舌が俺の唇を舐めた。 そしてふふふと笑って。
グク
ホソク
何故こんなに楽しそうなのか。 不審がる俺に尚も笑顔を崩さないジョングクが俺の腰の辺りから手を忍び込ませる。
グク
ヒョンが何回も俺の名前呼んでたから。
そんな事で? と思った直後にはジョングクの強引なキスによって考える事を放棄させられた
ジョングクはまるで前回とは別人のような抱き方をした。
それでも遠慮は一切なくて、俺の隙間に入ろうとしてるのが手に取るように分かった。 何故なら俺が少し大きな声を漏らしたり、思い切り反応して身体がびくついたりするとその度に譫言のように'好きだよ'とか'可愛い'とか、いやに優しい声で言っていたから。
ホソク
余りにも気恥ずかしいそれが止みそうになくて、余裕のない中でも、そう言わずにはいられなかった。 丁度俺の蕾に舌を這わせようとしていたジョングクが上目遣いで俺を見上げて
比較的可愛くて幼い目なのに、全くそうは見えなくてこの時間が途端に不思議に感じた。
いつも口角が綺麗に上がっている唇の中に舌が仕舞われると、そのまま俺の顔に近付いてきて
グク
完全に無秩序な俺の表情を隅々まで確かめるような視線を送る。 その中でもジョングクの右手は自由奔放に俺の身体を動く。
ホソク
ホソク
グク
ホソク
グク
嬉しそうなジョングクの顔が至近距離で、その見透かしにまた恥ずかしくなる
グク
グク
こんなに濡れてるのも可愛い♡
俺の顔を確かめながら捻るように指を押し込んできた。 腰から頭のてっぺんに突き抜けるようなその感覚に思わずジョングクの肩に強く爪を立てて耐える。
ホソク
耐えると言ってもどうにか意識を保てるようにという意味で、他は一切耐えられていない、我慢なんか出来ない。
恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい。
ジョングクにこんな事をされてる事も、しっかり興奮して娯しんでる事も、何度も好きとか可愛いとか言われる事も、キス出来る距離で溺れてる顔を見下ろされてる事も。
恥ずかしくて寂しさが遠のいていく。
これがジミンならーーー そう思う隙さえない。 ジョングクが絶え間なく、俺に逸楽の時間を与え続けてくれているから。