こんなことなら
右京
こんなに苦しいなら
右京
右京
人間に恋なんてするんじゃなかった
俺の名前は右京
こんなことを言って信じてもらえるかは 知らないが
とある神社に祀られている神である
ある秋の日の夕方
俺は神社でボーッとしていた
まだ10月の終わりだというのに
白い息が出るほど、外は冷えていた
右京
そんなことを1人ボヤいていた
18時。あたりは既に薄暗く、 とても静まり返っていることが
俺に孤独を感じさせた。
右京
と思っていたその時
神社までの長い階段を登る足音がした
右京
珍しいと思い乍、久しく見る人間に 興味が湧いたため 街へ行くのをやめた
暫くすると、階段から人影が見えた
そこには高校生ぐらいの青年が 立っていた
俺が遠目から青年を眺めていると
向こうも此方に気がついたようで、 ザッザッと足音を立て近づいてきた
俺は声をかけてみることにした
右京
少し緊張していたのもあり、 簡易的な挨拶になる
すると、青年は座っている俺と 目を合わせるためかなのか 俺の前に座り
日向
と、挨拶してきた
日向
と、青年が聞いてきたため
右京
と答えると、青年は驚いた様子で
日向
なんて聞くので
右京
と言うと、青年は固まってしまった。 少ししてから
日向
なんて言うから
右京
と言う。すると青年は
日向
なんて簡単に信じてしまった。 いや、事実なんだからいいんだけどね?
俺はふと気になったため
右京
なんて聞いてみた。
日向
青年はそう言って笑った。 彼のその笑い顔が、何故か愛おしく 思えた。
そんな事を思っていると、 突然俺の首に何かが触れた気がした。
何だろう。と思い彼を見てみると
日向
と、俺の首にマフラーを 巻いてくれていた。
キョトンとして彼を見つめると
日向
そう言って、俺の手を握った彼の手は とても暖かかった。
その後も数時間、彼と話していた
彼の名は日向(ひなた)と言った。
そろそろ20時になろうかという頃
日向
と、呟いた。 それが寂しく思い
右京
なんて聞いてしまった。 が、何も答えず彼は階段へ向かった。
言わなきゃよかったかな?と 少しばかり後悔していると 日向はもう階段を下ろうとしていた
すると突然日向は俺の方を向いて
日向
と、大きく手を振って帰って行った
その「また明日」の一言が とても嬉しかった。
今日初めて会った1人の人間の青年。
会ってそんなに時間は経っていないのに
何故か、もっと彼の事を知りたいと 思った。
その後も彼は宣言通り 毎日俺のところへ来てくれた。
とてもたわいのない話をするだけだが
その時間が俺にとっては幸せだった
俺は日向にいつのまにか 恋愛感情を抱いていた
これまたとある日のこと。
いつも通り彼は神社へ来ていたのだが いつもと雰囲気が違う気がした。
右京
なんて俺がいつも通り挨拶をすると 彼はこう発言した
日向
右京
日向
そう言って日向はいつも通り 俺の前に座る
日向
右京
日向は照れくさそうにこう言った。
日向
右京
突然の出来事に俺は固まった。
右京
日向
日向
嬉しかった。 何千年と生きてきた中で こんなことは初めてだった
日向
答えは一択。
右京
だって俺も好きなんだから 当たり前だよね!?
日向
右京
日向
こうして俺と日向の交際は始まった
それからのこと
相変わらず日向は毎日 俺の神社にやってくる
しかしそれだけじゃなくて
俺もたまに街へ下って
日向の家に行ったりした。
そして日向と体を重ねた。 何度も何度も。
とても幸せだった
だけどそんな幸せな日々が
ずっと続くわけもない
ついにその日は来てしまった。
それは...
日向の寿命だった
右京
日向
右京
日向
右京
日向
日向
右京
日向
日向
そういって日向は 息を引き取った。
泣いた。
とにかく泣き叫んだ。
けど
俺がどんなに泣いたところで
日向が戻ってくるわけじゃなかった
神様なのに
なにもできない役立たずの自分が
とにかく憎かった。
だからって消えることは不可能で
全てが嫌になった。
俺は神社へ帰ることにした。
あれからまた1年ぐらいたった 10月の終わり。
今日は日向と会って丁度 50年ぐらいだろうか
あの日と同じように 神社でボーッとしていると
人影が見えた。
そこに見えたのは間違えるはずもない 日向だった
そんなことはないと思ったけど
大好きな彼の姿を見て とりあえず抱きしたい。 と思い、走り。 彼に抱きつく
右京
けど彼は
日向
日向
そう答えた。 そんなこと、だいたいわかっていた
右京
悲しかった。 だがやはり見た目だけでなく どこか彼と同じところがあるように 感じた
そして、瞬時に俺は察した。
ここにいる彼は きっと日向の生まれ変わりなんだと。
右京
日向
日向
右京
日向
そう聞かれた。 俺は全てを説明した。
日向
右京
日向
右京
日向
日向
右京
日向
そう彼が言うので日向との思い出を 話した。
話しているうちに次第に打ち解け 盛り上がった。
生まれ変わりとはいえ、 やっぱり彼は面白く明るかった。
気づいたらまたあの時のように すっかり辺りは暗くなっていた。
日向
右京
日向
右京
そうして彼は帰って行った。
記憶は全てないとはいえ、 彼は彼だ。 何も変わっていなかった。
俺は
右京
なんて思いながら 「また来ます!」 と言った彼のことを 待ち遠しくして 明日を待つのであった。
それから彼は
"また"毎日毎日 俺に会いに来てくれた。
話していくうちに、
また日向と恋仲になっていた。
日向
右京
また大好きな人と暮らせる日々が 嬉しくて、幸せで。
けどやっぱり
そんな日々は長く続かない。
そう。
また日向は俺を残して 旅立ってしまった。
日向と過ごした時間は
俺の人生ではとてつもなく 短い時間の間で。
我儘でどうしようもない俺は また会いたい。 と思ってしまう。
また、彼は生まれ変わって俺の所に 来てくれる。
そう信じて あの神社で待ち続けた。
そしてまた月日がたち
10月の終わりごろ。
やはり日向は俺の所へ来た。
そしてまた恋仲に落ちた。
嬉しかった。
けれど
生まれ変わってくる日向と代償に
俺の心が壊れていく気がした。
そう、また当たり前のように
日向はまた 俺の前から消えてしまった。
きっと生まれ変わってくるだろう
そう思い神社で待つ。
そして彼は10月の終わりごろ
俺の所にやって来て
恋仲に落ちる。
それの繰り返しだ。
あぁ、また日向がやって来たようだ。
相変わらず来てくれるのか。
嬉しいなぁ。...
嬉しい...
あぁ、またか。
また来てしまったんだ。
日向の
寿命が
右京
右京
俺がどんなに嘆いても 彼は目を瞑ったまま 動きもせずに寝たきりだ
右京
俺の心はもうそろそろ 本当に壊れてしまうんじゃないか。
何度
あと何度 俺の前から消えていく彼を 見ればいいのだろうか。
俺がまた会いたいなんて 思わなければいい?
そんなことはわかっている
けれど彼を亡くすたびに
また会いたいと
どうしても思ってしまう。
右京
苦しい。
右京
そうして彼の儚い命は 俺の前でまた消え散った。
そうして俺はまた
日向と会ったあの神社で
待ち続けた
俺の心はもうとっくに
壊れきっていた。
けれど
彼に会いたい。その一心で
また生まれ変わった新しい彼を
1人ポツンと
待ち続けるのであった。
壊れてしまった自分自身の
心と共に。
あぁ...こんなに苦しいなら
人間に恋なんて するんじゃなかった
そう、これは
儚く散りゆくものに
恋をしてしまった
一人ぼっちの
いや、
"恋"という鎖に繋がれた
1人の神様のお話。
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
千景
コメント
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面白かったです!!