ご飯を食べに外に出ると、小林の兄貴が門戸に凭れ掛かっていた。
速水泰輝
小林幸真
速水泰輝
小林幸真
小林は速水のパーカーのフードをわし掴み、速水を引き摺るようにして歩き出した。
速水泰輝
速水が抗議の声をあげるも
小林幸真
聞き入れて貰えなかった。
そして、小林は速水を引き摺ったまま、数m先にある花屋を訪れた。
小林幸真
小林の声を聞いて、頼まれていた品を入れた紙袋を大事そに抱えながら、店の奥から店員が出てきた。
花屋の店員
小林幸真
小林幸真
速水泰輝
店員は速水に品物を手渡し
花屋の店員
にっこりと微笑んだ。
店員の指す、良かったの意味がなんなのか、速水は分からないままに、店員につられて笑顔で
速水泰輝
と、返事を返した。
店を出ると小林は
小林幸真
とだけ言って、首をしゃくる。俺の後をついて来いと言うことだろう。さっきみたいに、フードを掴んでこないとこをみると、紙袋の中身が、大事な物なのだという事が速水にも分かった。
小林は花屋の横道に入り、我が物顔で複雑な路地を抜けていく。
路地を抜けると、開けた場所に出てきた。都会に位置する空龍街に、こんな所がまだ残っていた事に対し、速水は瞠目している様子だった。
速水泰輝
速水が指差す方向に、小ぢんまりとした寂れた教会が建っていた。
小林幸真
かけっこと、可愛いらしい表現を使っているが、半グレを粛清した事を暗に指しているのだが
速水泰輝
天然な速水は、小林の言葉をそのままの意味でとった。
小林幸真
速水泰輝
小林の言葉の意味を、イマイチ掴めてない様子の速水を後目に、小林は教会に向いて歩き出す。
段々と教会に近づいていくと、屋根の十字架は傾き、屋根自体も今にも崩落しそうな雰囲気を漂わせ、壁の塗装も所々剥げており、長らく人の手が入ってない事が分かる。
速水泰輝
疑問に思いながらも、速水は小林の様子を見守る事に徹する。
小林が扉に手を掛けるとギギと鈍い音を立てながら、扉が開く。
教会の中は外側と違っていた。少し埃っぽく、床に敷かれた赤いカーペットが所々が傷んでいるだけで、ちゃんと手入れさえすれば、まだ使えそうではあった。小林は躊躇わず、中へと入っていく。それに習い、速水も後をついて歩く。
祭壇前に差し掛かると小林が足を止め、後ろをふり返る。
小林幸真
小林は速水から紙袋を受けとると、袋の中に入ってあった花束を大事そうに取り出す。
花束を片手に小林は、一歩、また一歩と速水との距離を詰めていく。
二人の距離がほとんど埋ると、やっと小林は歩みを止めた。
小林幸真
誓いの言葉と共に、小林は101本の真っ赤な薔薇の花束を速水に差し出した。
小林幸真
速水の目から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
速水泰輝
小林は速水の頬を伝い続ける涙を、ペロッと舐める。
小林幸真
進行役の牧師もいなければ、祝福してくれる参列者もいない。結婚式の定番の指輪もケーキもドレスだってない。とても結婚式の呈なんてなしてない。
ここにあるのは、寂れた教会と花束とお互いを祝福する言葉だけ。
それでも、俺たちらしくて良いとさえ思えるのは、きっと、祝福を分かち合える人が隣にいてくれる、今という瞬間そのものが、尊いからなのだろう。
おわり
あとがき 怒ってる時に流す涙は塩辛くて、嬉しい時に流す涙は、少し甘いらしい。感情によって分泌される成分が違うので、涙は3つくらい味が変わるらしい。 薔薇は色や本数でも花言葉の意味が変わります。101本の薔薇の花言葉は、これ以上ない程に愛してます、という意味です。 ウェディング企画参加感謝。 今回は企画だったので、イラストもついでに話に合わせて描いてみた。 ごく稀にマシな絵を描ける日もある。 明日、もりさこあげるかも。
コメント
13件
こばはや最高です!好き!お暇なときでもいいのでまたこばはやお願いします🥺
待って死ぬ_:(´ཀ`」 ∠):絵うますぎ何このストーリー最&高なんだけどマジはなえもんフォローしといて損はない
神すぎて🤦♀️