彼が、手術室に入っていく
俺らはそんな彼を黙って見つめた。
誰もが、微動だにせず、
ただ黙って、下唇を噛んだ。
そして、扉が閉まった後の数秒
沈黙が流れた
それを破ったのは、
こさめ
こさめちゃんだった。
こさめ
こさめ
こさめ
こさめ
俺らの前でそう声を張るこさめちゃんの手はきつく閉じられていて
そして、目からは涙が流れていた。
すち
暇ちゃんが帰ってきたら、笑って 迎えてあげよう。
絶対帰ってくるから。
俺らは看護師さんに移動させられて
その場所にある椅子に座った。
みんなは話しているけど、
不安という感情は、 溢れ出ていた。
俺だって、同じだった。
膝の上で震えている手。
その手を握ってくれる人が、
今隣にいない。
なんで君が、そんな思いをしなきゃ いけないの?
俺は目を瞑った。
手の震えは、いつの間にか収まっていた。
『はいっ、チーズ!』
『うわっ、!?もう撮れた?!』
『やべっ、目瞑ったかもw』
『ま、それも一つの思い出じゃね?』
『もう一回撮り直そうか?』
『そうするぅ?』
『いや、いいっしょ。』
『そっちの方が、』
『俺らっぽいし!』
『wwwそうだなw』
『ちょ、おい!いるまわらうな!w』
『でもこさめら六人で一つだし?』
『欠けずに馬鹿なのがこのグールプだしねw』
『馬鹿とか言っちゃだめだよぉw』
『すちも馬鹿だろw』
『“ポカリスエット?”とかw』
『もーらんらん!!』
『えまって!空めっちゃ綺麗!』
『みことちゃんと話しきけww』
『えでもほら!綺麗だよ!』
『そうだねww』
『ま、こんなことあって、俺らだし?』
『ッはははっ、ww』
『さすがだわお前w』
『やっぱ雰囲気係!』
『イケメンだしね!w』
『ッそうよ?イケメンよ俺』
『ッww』
『やっぱ、そんなとこあってものー…
ひまなつ ひまちゃん だよ なっちゃん
LAN
すち
目が覚めると、目の前にらんらんの顔があった。
LAN
すち
LAN
らんらんはそう言って、 俺を覗き込み、
頰に手を当てて、ゆっくり撫でた。
ひんやり、頰に線が引かれた気がした
すち
泣いていたらしい。
今のは、…夢?
俺は、らんらんの手に自分の手を重ねた。
すち
LAN
すち
LAN
そう言ってらんらんは椅子から一枚の写真を撮る。
すち
LAN
すち
LAN
すち
LAN
すち
全員で来る 約束をしたー…
LAN
らんらんの声が震えてくる。
俺がまだ高校生の頃の話。
ほんの少しだけ、昔の話。
俺らは彼の手術の成功を祈るだけ。
みんな俺らのもとに集まって、
ひまちゃんとの昔の話を言い合って
涙を流しながら、
手を握った
ぐっと、ずっと、
神に祈った。
医者
LAN
いるま
みこと
医者
医者
すち
その報告を聞き、みんなは、 両目から、堪えた涙を大量に溢し、
その場に崩れ落ちた。
いるま
いるま
みこと
みこと
こさめ
こさめ
LAN
みんなが泣き崩れる中、
らんらんは、へたん、とその場に崩れ
両目から涙を流して、 少しだけ口角を上げて、
顔や耳を真っ赤にして
俺の手を握っていた。
LAN
LAN
すち
すち
すち
すち
縋るように、らんらんは 俺に身を寄せ、
ゆっくりと、俺の胸元に、 顔を当てた。
LAN
すち
すち
すち
LAN
LAN
LAN
俺の胸に顔を当てたまま、
らんらんは泣き叫んだ。
初めて見たらんらんのその叫びに
みんなは、更に涙をそそられた。
いつの間にか、先生の目にも、
涙が溢れていた。
白くて、暖かい。
そんな光の中、俺は
浮いている感じがした。
…俺は、
こさめ
…こさめ、?
LAN
いるま
LAN
LAN…、?いるま?
みこと
みこと…も?
俺、病気なって…、
死んだんじゃ…、?
すち
すち…?これ、走馬灯?
そう思った瞬間、みんなが胸の中に飛び込んできて、
一斉に声を揃えて、
こう言った。
みんな
暇72
…青い空の下。
雲ひとつない、快晴の下。
俺らは、みんなで寝転んでいた。
風はフェンスを揺らす。
鳥は静かに飛んでいる。
太陽は俺らを照らす。
もう2度と、来ることがないと思っていたこんな日常
俺らはそれを謳歌する。
大好きな君と、
死にかけた俺が、
またもう一度、手を繋いだ。
もう一度、
死にかけた俺と
大好きな仲間が
笑い合えた。
死にかけた俺と、
死んでも失いたくないみんなが
こうやって再び生きることができた。
今日の空は、あの日に似ていた。
青い青い空の下。
雲ひとつない、快晴の下。
不吉な予感はしなかった。
ただ今日が一番、いい日になるという
最高な予感がした。
俺が病気になった日?
違う違う、そんなんじゃない。
一番大変だった、本当
お前俺の首絞めるんだもん。
あんときはまじ死ぬかと思った。
優しい君だから起こしてしまった、
そうでしょ?
…二人とも、無事で良かった。
君が飛び降りた日。
…もっと、いい感じなのがいいな…
…んー、なんだろ、
あっ、そうだ。
あの日のことはこう呼んでやろう。
お前の記憶がなくなって すげぇ大変だったんだから!
君の記憶が、 途絶えた日。
すち
すち
暇72
暇72
すち
〜end〜
コメント
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完結おめでとうございます!(><) めちゃ神のような泣ける作品でほんとに枕がびしゃびしゃです泣 これからも頑張って下さい!