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四 月 の 終 わ り 、春 の 空 気 は ま だ 柔 ら か い 。
橙 は 今 日 も 机 に 向 か い 、真 剣 な 面 持 ち で
ス ケ ッ チ ブ ッ ク に 鉛 筆 を 走 ら せ て い た 。
隣 の 席 で 俺 は 数 学 の 問 題 を 解 き な が ら 、
ち ら り と そ の 横 顔 を 盗 み 見 る 。
赤 。
昼 休 み 。
私 は 体 育 館 裏 の ベ ン チ で 、
ス ケ ッ チ ブ ッ ク を 抱 え た ま ま パ ン を 頬 張 っ て い た 。
そ こ へ 赤 く ん が 無 言 で 座 る 。
彼 が こ こ へ 来 る の は 珍 し い 。
橙 。
赤 。
橙 。
私 は 慌 て て ペ ー ジ を 閉 じ る が 、
赤 く ん は ペ ッ ト ボ ト ル を 差 し 出 す 。
麦 茶 だ 。
赤 。
橙 。
橙 。
力 を 込 め る が 開 か な い 。
赤 く ん は 黙 っ て 取 り 上 げ 、軽 く ひ ね っ て 開 け た 後 返 し た 。
橙 。
赤 。
だ が 、そ の 頬 は わ ず か に 赤 い 。
私 が 麦 茶 を 飲 み 、
橙 。
と 笑 う と 、
赤 く ん は ふ と 真 面 目 な 声 を 出 し た 。
赤 。
橙 。
言 わ れ た 俺 は 瞬 き を 二 度 。
橙 は 照 れ た よ う に 頬 を か き な が ら 続 け る 。
橙 。
橙 。
橙 。
心 臓 が 跳 ね た 。
こ ん な に 音 が す る の か 、と 俺 は 自 分 で 驚 く 。
赤 。
か ろ う じ て 捻 り 出 し た 低 い 声 。
橙 は 嬉 し そ う に 目 を 細 め た 。
橙 。
そ の 瞬 間 、春 の 光 が き ら め き 、
俺 の 視 界 が わ ず か に 揺 れ た 。
呼 ば れ 慣 れ な い 名 前 。
だ が 悪 く な い 。
橙 。
そ の 声 が 耳 の 奥 に 残 る 。
俺 は 頷 き な が ら 、
胸 に 芽 生 え た 小 さ な 芽 を 確 か め て い た 。
赤 。
放 課 後 。
廊 下 で す れ 違 っ た 橙 は そ っ と 囁 く 。
橙 。
そ の 甘 い 響 き に 、
俺 は 返 事 を す る 代 わ り に 小 さ く 手 を 振 っ た 。
隣 の 席 の 天 然 少 女 は 、彼 の 日 常 に 色 を 塗 り 始 め て い る 。
＿ ま だ 描 き か け の 絵 の よ う に 、 二 人 の 物 語 は こ れ か ら だ 。
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