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弘世竜也は、放課後の美術室にひっそりと立っていた。
窓から差し込む夕陽が、並んだ作品たちを淡く照らし、その中の一枚に竜也は釘付けになっていた。
竜也は昔から、心を掴まれるものが好きだった。
絵も、音楽も、本も 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
「自分の感情を動かしてくれるもの」が、他の誰よりも大切だった。
だから、その絵を見ていた。
ふと、背後から透き通った声がした。
井端芳里(いばたかおり)
びくっと肩が跳ね、振り返る。
そこに立っていたのは、長い黒髪を耳にかけ、静かな笑みを浮かべた先輩だった。
井端芳里。
竜也の一つ上の学年。
どこか掴みどころのない、だけど目を離せない雰囲気を持っている人。
井端芳里(いばたかおり)
そう言って、芳里は絵に視線を向ける。
竜也は頷くことしかできなかった。
胸が急に騒ぎだして、言葉が喉につかえた。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 その瞬間からだった。
竜也の心が、芳里に奪われたのは。
その日を境に、竜也は芳里のことを知ろうとした。
名前、好きなもの、得意科目、苦手なこと。
同じクラスの倉木菜乃花(先輩)からも少し情報を聞けた。
そして4日後の放課後。
胸がつぶれそうなほど緊張していたが、竜也は思い切って芳里を呼び出した。
弘世竜也(ひろせたつや)
断られるのが当たり前だと思っていた。
声も震えていた。
だけど、芳里は小さく息を吸い、よく見れば頬をほんのり赤くしながら言った。
井端芳里(いばたかおり)
その一言は、竜也にとって人生が変わるほどの温かさを持っていた。
こうして、二人の恋は始まった。
しかし、その幸せが長く続くとは、まだ誰も知らなかった。