あのとき君は

そう言って見せてきたのは

長嶺（優奈）が好きなぬいぐるみ

長嶺は無邪気に笑う

その笑顔はとても可愛く

守りたくなるような

そんな笑顔である

今高校最後の冬

長嶺は成績優秀

おまけに先生からの信頼があつく

大学の推薦で合格した

まだ進路が決まっていない俺にとって

大学が決まっているのは羨ましいし

頭が良くないため

長嶺と同じ大学にはいけない

ずっと隠してきた

長嶺をどう思っているか

でもまぁいいか

長嶺からは友達としか思われていないしな

仁はそう言いながらニヤニヤする

これはまずい

でも誤魔化すのもなー

長嶺は少し悲しそうな顔をした

やはり長嶺は鈍感だ

ここまで気づかないとは

いい機会かもしれない

今日の帰り勇気を出して言おうか

見上げてくる顔はとてもかわいい

そう言ったとき

優奈の携帯が鳴り出した

そう言って携帯を片手に教室から出て行った

長嶺は顔見知りが少ない

顔が広くない

凄いモヤモヤしたままただ長嶺を待っていた

帰り道

改めて言おうとすると怖い

一年弱ぐらい

ずっと好きだったから

部活で長嶺が他の人から僻まれていた時

１人で抱え込んでいた時

そんな時から守りたくなる感情があった

いつのまにか好きになっていた

でも友達としか思われていなくて

これを機に少しでも振り向いてくれるといいな

去年までは俺のほうが小さくて

やっと追い越した身長

そのせいか見上げるように見る長嶺がすごく愛おしい

言ってしまった

長嶺の顔はまた悲しそうな顔をしていた

なぜか泣きそうな顔をしている

一瞬意味がわからなかった

長嶺は泣きそうになりながら謝った

そこからの帰り道は

気まずくならないように他愛のない話をした

いつもと変わらないふざけた話をしながら帰った

家に帰って

たくさん泣いた

好きで

もう辛い

告白から何日か経ったある日のこと

朝用事があり早くに学校に行った

えっ？

何聞いてるの？

まだ立ち直れていない俺は

その場にいるのがつらく

その場から去った