夜の散歩コース

これは、私が実際に体験した出来事である。

私は犬を飼っている。大型犬だ。犬種は話と関係ないので伏せておこう。

その日私は仕事から帰って外は暗くすでに23:00を回っていた。

夜に犬の散歩をする際はいつも比較的、明るくて人通りが多い場所を散歩する。

だがその日は不思議と家から約徒歩20分の山の方の人通り通りの少ない場所を散歩コースにしてしまった。

人通りが少ない散歩コースと言えど日中はたまに行く散歩コースだ。道もそれなりに知ってる。だが

散歩コースに入ると、昼間と全然違う雰囲気が漂っていた。そう、まるで違う別世界みたいだった。

その散歩コースには石で出来た橋がある、昼間散歩する際は普通に通ってたが渡ろうとしたら何故か急に怖くなってきた。

不気味な感じがした。渡ってはいけない感じがした。だが大型犬の散歩は1時間程しなきゃ運動にならない。まだノルマは達成出来ていない。

我慢して渡ることにした。橋を渡る最中、犬が唸り声をあげた。普段吠えない犬がだ。ますます不気味になった。

あまりに犬が吠えたりするもんで怖くなって引き返そうとしたその時

前方から赤いワンピースを着た髪の長い女の人が歩いて来た。その時の時刻はおそらく深夜0：00を過ぎていただろう。

こんな時間に？と思って更に怖くなった。

よく見ると右手に、向こうから見て左手に何か持ってる。警戒のため凝視するが暗くてよく見えない。

女の人はまっすぐ歩いてくる。一方通行なのでこのままだとすれ違う。怖くなった。引き返そうともしたが今引き返したら避けているみたいで失礼かなとかその時は思っていた。

そう、変質者だった場合なにされるか分からないからだ。それに左手に何か持っているし。私はこのまま橋を渡る事にした。

だがそれと同時にすれ違う際は顔は見ないでおこうと決めていた。ちなみに犬は唸るのをやめていた。怯えている様だった

女の人が歩いて来てる、私も歩く、ちょうどすれ違った時、

横目で見られている様な気がした。

無事にすれ違った。内心私は左手にナイフかなんか持っていて通りすがりに斬りつけてくるかもと警戒していたのでホッとした。

その後も私はまっすぐ歩く。正直後ろを振り向いてさっきの女の人を確認したかった。左手に持っていた物が気になるのもあるが

だが、今振り返ったら相手も振り返ってそうで怖くて振り返れなかった。しばらく歩くと古い民家がある。民家が見えて来たら少し安心してきた。だが、私の家はここから徒歩40分くらいだ。そろそろノルマも達成した頃だし、帰ろうとして振り返ると

さっきの女の人が100m程先に立っていた。そう、ついてきていたのだ。

私は怖くなった。顔を見ようとしたが暗くてよく分からない。ただ、赤い服を着ているのは分かる。左手に持っていた物も暗くて見えない。

私が振り返り向こうの存在を知ると私の方に猛ダッシュで走って来た。ものすごい速さだった。

私は犬のリードを引っ張って思いっきり走った。この時ばかりは学生時代に陸上部に入っててよかったと思った笑

走りながら振り返るとやはりまだついてきている。よく聞くと奇声の様な声を上げながら追いかけてくる。

私は叫んだ。「助けてー！」

すると古い民家のうちの１つの玄関の灯りがついてドアが開いた。

私はすぐに玄関に入った。久しぶりに走ったもんでその時は息が苦しかった。犬もクタクタだったと思う。ちなみにその民家は古くて横スライドのドアの玄関でした。

犬の散歩してて、○○橋を渡った辺りから赤い服を着た女の人に追われているんです！

おじさんは凄く驚いた表情をしていた。鬼の形相で猟銃を持って来た。

おじさんは猟銃の散弾銃を振りかざしながら怒鳴っている。

橋がどうしたか聞こうとすると…

ドアを凄い勢いで叩いている

ねえ！なんなのあれ⁉︎

おじさんを見ると散弾銃を持ったまま震えていた。

おじさん！撃って！私は言った

低くて鈍い音が響いた。一瞬何が起こったか分からなかった。そう、おじさんが散弾銃を玄関に向かって発泡したのだ。

おじさんと私は未だに震えていた。

発泡後、ドアを叩く様子はなくなった。気配もない。

やっつけたかな？

さっきの幽霊なの？

でも助かりました。ありがとうございます！

おじさんの家の玄関は横スライドで薄い曇りガラスだ。たしかに見ようと思えば見えただろう。実は私も気になっていて見ようとしたが犬が私の足に噛みついたのだった

そのため、注意がそれて見れなかったのである。

おじさんの問いに対しこう答える

見れなかったです。何かを持っていたのは分かっていたんですが…

何を見たのか尋ねても「あれは見るもんじゃない」と言って教えてくれない。

おじさんはそれだけ教えてくれた。

その後近所の人が発泡音を聞いて警察に通報した。数10分後に警察が来た。

私たちは警察に説明した。だが半信半疑だったと思う。

その一週間後、私は改めてお礼を言おうと昼間におじさんの家に行った。正直怖かったが、昼間なら平気な気がした。友達も数人連れていった。

おじさんの家をノックするが返事がない。しばらくノックしていると

近所の人が来て数日前に急に亡くなったと話す。

え？お礼に来たんですけど…亡くなったんですか？

そうですか…

その瞬間私はゾッとした。

もし私もあの時左手の物を見ていたら…と思うと怖くて仕方がなかった。

おじさんは何を見たのだろうか。あの女の人は左手に何を持っていたのか今でもたまに気になる時がある。