目が覚めた。
はっきりしない頭で状況を見る。辺りはもう直ぐ暗くなる事を告げて居た。
太宰 治
中原 中也
太宰は傍の椅子に座り、本を手にして居る。
太宰 治
微笑み乍ら云う太宰に、中也が少しだけ安心した。
もしも寝言で暗い事を云って居たら、なんて思って居たから。そんな事したら、彼を心配させて仕舞う。
太宰 治
ぐっと背伸びをして、太宰が本を片付ける。
中也は小さく頷き、帰り支度を始めた。
秋の日は釣瓶落とし、とは良く云ったものだ。
暗い、闇が、街を飲み込む。
家に着く頃には太陽が半分になっていて。
中原 中也
太宰 治
同じ家に入ると言うのに、そんな会話を交わして。其れがさも当たり前の様に。
微笑む彼の姿が、やけに嬉しかった。
太宰 治
中原 中也
中也自身も微笑み、自室(と云うべきかは分からないが)へ戻った。
と
其の時。
中原 中也
扉を閉めた途端に、襲ってくる吐き気。
中原 中也
頭痛。
視界が暗くなる。
平衡感覚が無い。
堪らず其の場に倒れ込む。
痛い。
脇腹が、痛む。 非道く、只管に、非道く。
白瀬に殴られた箇所が。
否、
其れだけじゃない。
今迄怪我をして来た処が、引き裂かれる様に痛む。
中原 中也
何故か? そんなのは分からない。
否、判っているのかもしれない。
純粋で、透明な。
中原 中也
中原 中也
判っている、筈だ。
汗がフローリングに落ちる。
判っている。
白瀬も。フョードルも。言っていたのだ。
『罪ヲ犯シタ者ハ罰ヲ受ケルガ然リ。』
中原 中也
中也の目が焦点を失う。 口元が笑った様に歪んだ。
中原 中也
痛くて痛くて仕方ない筈なのに。
何処か、身体の奥の奥の何処かが、ぽっかりと乾風が吹いた様に冷えた気がした。
痛みが引いた後。
太宰の元へ向かった。
そして告げた。
中原 中也
太宰は少しだけ驚いた顔をした。
でも、深追いは良くないと思ったのか直ぐに「そう、分かった」と言って笑った。
太宰 治
中原 中也
後に太宰は後悔する。
この時、もっと気遣う言葉を掛けられていれば。
この、笑顔の微かな歪みに、気が付けていれば。
もっと、早く手を打ってあげられていたら。
彼が求める言葉を 見付けてあげられていたなら。
〝あんな事〟にはならない筈だったのに。
コメント
21件
/ いやもう神ですよ(?)内容が! もうハマっちゃいますねぇ、(*´`*)
本当に見るの遅れた…通知働けよ…。 絶対みーちゃんの事は見捨てない! 今でも十分不穏な感じなのに更に不穏にしていくみーちゃん鬼畜だぁ( ᐛ ) 今回も何処までも凝ってて最高でしたわ…。スマホ頑張って
待ってました!!もうありがとうっ2ヶ月経ってもクオリティ落ちないの神すぎ。ほしのっちは悪くねぇぜ!!