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翠は目にも止まらぬ早さで走り出し
駅の地下通路へ消えていく
逃げ足だけは一級品なので
放置しても特に問題はないだろう
それよりも
問題は別のところにある
川沿いを歩きつつ
夏空の写真を撮影しているドッペちゃ
それ自体は微笑ましい光景である
額縁に収めたい程に絵になっている
だが
周囲が非常によろしくない
人の理を外れた大学生共が
悪霊のようにドッペちゃに付き纏っているのだ
当のドッペちゃは撮影に夢中なので
半袖チェックシャツの魑魅魍魎には気が付いていない様子だった
桃
桃
紫
桃
桃
確かに異様である
あそこまで人数が多いと
もはや少年を介した競技だとでも説明されたほうが腑に落ちる
監視をしてくれと頼んだのは俺だが
おはようからおやすみまで暮らしを見つめろとは言ってない
紫
紫
桃
紫
紫
桃
桃
頬を膨らます桃を見る限り
今は精神が安定している
ドッペちゃの前で理性を失って
ドス黒モードを発動する心配はなさそう
桃
桃
紫
紫
俺たちは橋の脇にある石段を下り
川沿いの土手に降りる
ドッペちゃとの距離はおよそ二十メートル
風良し
日差し良し
空腹感もまるでない
ドッペルゲンガーと相対するには絶対のコンディションだ
俺の足音に反応したドッペちゃが
こちらを見る
ドッペちゃ
ドッペちゃ
満面の笑みである
どう捉えても
俺に対して心を開いている
あとは適当に洒落込んだカフェにでも誘えば
情報を引き出すことなど造作もないだろう
これにて戦の下地は整った
さぁて
見せつけてやろうぜ桃
絆ってやつをよ
爽やかに片手を挙げたその瞬間
俺の視界が空を捉えた
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