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木兎

赤葦、好きだ

赤葦

…えっ……

先輩からの唐突な告白に、俺は動揺を隠せなかった。

確かに、俺も木兎さんとは仲良いと思うけど…

黙り込んだ俺を見て木兎さんは俯いた。

木兎

あ…ごめん。やっぱ変だよな。男が男を好きなんて…。

赤葦

木兎さん…。えと、本気…ですか?

木兎さんは気まずそうに頷いた。

赤葦

…分かりました。あの、少し時間をもらえますか?その…ちょっと、混乱してて。

木兎

ん。わかった。ごめんな、急に変なこと言って。

走り去る木兎さんの背を見ながら、俺は鼓動の早い胸を押さえた。

木葉

え?木兎に…って、マジで言ってんの?

赤葦

はい。どうすればいいか、悩んでるんです。

赤葦の唐突なカミングアウトに俺は驚いた。

木葉

それで?お前はどう思ってんの?

赤葦

俺は…木兎さんのこと……。でも、やっぱ男同士って変に見られるかと。

好き、ではあるんだな。

そう察して俺は赤葦をまっすぐ見て告げた。

木葉

変じゃねえよ。お前が好きなら好きって言えばいい。大丈夫だ。

赤葦

木葉さん…。

こちらを見た赤葦はやがて何かを決意したようだ。

赤葦

ありがとうございます。俺、しっかり木兎さんに返事してきます!

木葉

ああ。俺がついてる。心配すんな!

木兎を探して駆け出す赤葦を見送り、俺は空を仰いで溜息をついた。

木葉

俺、何やってんだかなぁ…。

赤葦のこと、好きなのに。

木葉

…幸せにしてやれよ、木兎。

1人で帰る道の途中、俺は自分を呼ぶ声がした気がして立ち止まった。

赤葦

…木兎さん!!

木兎

へ?赤葦?

振り返ると、自分が今歩いてきた道の途中に赤葦が走っているのが見えた。

木兎

おーい、赤葦ぃーー!

俺が手を振ると赤葦は顔を綻ばさせた。

次の瞬間

赤葦の上気した顔が青ざめ、引きつった。

赤葦

木兎さん、危ないっ!!!

木兎

え…?

振り返ってやっと理解した時にはもう遅かった。

暴走したトラックが自分の目の前に迫っていたのだ。

ドンッという鈍い衝撃が全身に走り、俺の体は宙を舞った。

何か叫びながら駆け寄ってくる赤葦の姿を最後に、俺の意識は暗闇に閉ざされた。

医者

…19時53分……

医者の言葉を聞きながら俺はその場に呆然と立ち尽くしていた。

木兎さんが…死んだ?

ベッドの上の木兎さんはまるで眠っているだけのようで!今にも「赤葦!」とあの笑顔を見せてくれそうだった。

俺はベッドの横にしゃがみこみ、木兎さんの手を取った。 まだ、温かかった。

木兎さんの死が、受け止められなかった。

赤葦

木兎さん…?どうしたんですか、起きてくださいよ…。

その時、俺から連絡を受けた木葉さんが病室のカーテンを開けた。

木葉

あ、赤葦!木兎が事故に遭ったって言ってたけど…っ

赤葦

木葉さん…。木兎さんが、起きないんです。ずっと、寝てるんです。

気が抜けたように告げた俺と、目を伏せて病室を出て行く医者を見て木葉さんは全てを理解した。

辛そうにしながらも、ゆっくりと俺にさとすように言った。

木葉

赤葦…木兎はもう……。

赤葦

木葉さん…。嫌。そんなの、嘘です…。

徐々に温もりを失っていくその手を、俺は震えながらひたいに押し当てた。

赤葦

…木兎さん。なんで…なんで何も答えないんですか?

赤葦

ねえ…起きてよ!俺まだアンタに返事してないじゃないですか!言わせてくださいよ!!

赤葦

それにバレーももっと木兎さんとやりたいんすよ!また赤葦って、トスくれって呼んでくださいよ!!何本でも上げますから!だから起きて!!スパイク打ってるとこ見せて!

赤葦

死ぬなんて嘘だ!嘘って言ってよ!!「俺は130歳まで生きる」なんて言ってたじゃないですか!

赤葦

嫌だよっ…

赤葦

お願いだから…、起きてよぉ…

赤葦

……木兎さん…っ。

今まで、こんなに泣いたことがあったかってくらい泣き叫んだが木兎さんは目を覚ますことはなかった。

代わりに、温かさを失った手は、俺の手の中から滑り落ちた。

いつのまにか隣に来ていた木葉さんは、俺の肩を抱いて慰めようとしながら泣いていた。

俺たちはいつまでも泣き続けていた。

あれから数年後。

俺はとっくにあの時の木兎さんの年齢を越し、背も伸びた。

木兎さんがいなくなってからしばらくは塞ぎ込んでしまい、あんなに好きだった部活も出なかった。

そんな俺を木葉さんたちや音駒、烏野のみんなまでもが励ましてくれて今ではやっと普通の生活を送っている。

日向や黒尾さんは俺を慰めようとして逆に号泣してたっけ。

今日は木兎さんの命日。俺は1人墓の前にしゃがんでいた。

赤葦

木兎さん…あなたはいつも俺を置いて先へ行ってしまいますね。

墓石に刻まれたその名に触れ呟くと、木葉さんに声をかけられた。

木葉

赤葦…お前も来てたのか。

赤葦

木葉さん…。ええ、この日が来るとつい…思い出してしまって。

それから木葉さんもお参りをして、しばらく沈黙が続いた。

しばらくして木葉さんが切り出した。

木葉

なあ…赤葦。お前ってさ、まだアイツのこと引きずってる?

赤葦

え…?そ、それは…

木葉

俺、さ。高校の時からずっと赤葦に言ってなかったことがあるんだ。

赤葦

高校から?…何ですか?

木葉

あのな。…俺、赤葦のこと好きなんだ。ずっと…ずっと好きだった。

赤葦

木葉、さん…

木葉

正直、木兎のことで落ち込む、らしくないお前を見てんの辛かったよ。だから…これからは恋人として、お前を支えたいんだ。…俺と、付き合ってくれないか?

赤葦

…っ。

思いがけない言葉に顔を赤くしながら、俺はゆっくりと頷いた。

木葉さんに優しく抱きしめられ、その温かさに俺は思わず涙をこぼした。

−fin−

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コメント

34

ユーザー

感動😭 泣ける 木兎さんが死ぬなんて… 赤アジィィィ 木葉さァァァん

ユーザー

まじむっちゃ泣けます

ユーザー

ちょっ…おい…いい話だけどうちの× なジャンルや‪w

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