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動揺したように俺を見るみこと
そしてしっかりと俺の目を見て何かを考え込む様な表情
もうそろそろ、日も落ちる頃だろう
まだ日が短い春は
どこか寂しいような、そんな気がした
静かな海辺に着信音が鳴り響く
みこと
みこと
LAN
いるまの声は聞こえなかったが
会話の内容から恐らく「医者が呼んでいる」とかかな
みこと
みこと
みこと
LAN
LAN
みこと
みこと
LAN
LAN
みこと
そう言ってゆっくりと車椅子の車輪を回すみことを見送り
また夕日に視線を戻す
はぁ…
世界には沢山の人がいる
優しい人、明るい人、つらい人
沢山の人が居て、経済は回ってる
…でも
その中に…俺は要るのかな
俺という存在は…意味があるもの?
…タヒにたくはない
まぁ…別にタヒねって言われたらタヒぬけどさ…
タヒにたいわけじゃない
まぁ、かと言って生きたいわけでもない
…初めから俺という存在が無かったことにしたい
戸籍を消すとかじゃない
これまで出会ってきた"みんな"の記憶から消してしまいたい
俺という存在が、誰の目にも届かないでほしい
こういう感情をなんと表したら良いんだろうか
もう何もわからなくて
自分のやりたい事も
周りの気持ちも
俺の"自由"も
俺の"生きる"意味も
…もう、疲れちゃった
気づけば周りには誰も居なかった
先程まで元気に遊んでいた子供も
うるさかった車のブレーキ音も次第に聞こえなくなってくる
もう…何もわかり"たく"ない
気づけば俺はいつのまにか水中を漂っていた
呼吸が出来なくて
目も開けられなくて
身体が上手く動かなくて
助けてなんて言えない
そんな事望んでも居ない
…やっと一人になれた
やっと静かになった
やっと誰もいなくなった
俺の中に残っていた気色悪いモノも
全部浄化してくれるみたいだった
俺を包み込む水達は
"一緒に消えよう"とでも語るかのように
俺の体を暗い海の底に押し込んでいく
次第に頭が回らなくなり、意識が朦朧としてくる
…そんな中、誰かに「生きろ」とでも言われた様な気がしたのは
きっと気の所為だ
目を開けると見覚えがある天井がそこにあった
確か俺はさっきまで…
意識がはっきりしていなかったせいか
あの"夢"は見なかった
浜辺でみことを見送ってからの事もあまり覚えていない
隣から何かの気配を感じる
LAN
いるま
俺のすぐ横でいるまが丸くなって眠っていた
その表情はどこか苦しそうだった
まるで"悪夢"でも見るように。
俺はゆっくりと体を起こし、水を取りに行こうとする
いるま
いるまの寝言が聞こえる
…と同時に腕の裾を掴まれ、動けなくなってしまった
LAN
辛そうないるまを
無表情な、強張った様な顔をしてしまっていた事だろう
俺は最低な奴だ
救おうとしてくれるいるまにさえ
同情の欠片もないなんて。
いるま
いるま
いるま
LAN
誰も見ていないと分かっているのに
LAN
優しい、みんなが望む俺を演じ続ける
LAN
「永遠」なんてない
「ずっと一緒」になんか居られない
どうせすぐに消えて無くなっちゃうんだから
…俺の存在がさ
LAN
?
?
LAN
?
熱く火照った俺の体を覆い隠すように
優しく体を包み込む
そんな彼の体も微かに震えていて
まるで置いて行かないでと訴えかける様に。
LAN
LAN
そう言って泣き崩れる俺。
理由もわからず、ただ溢れてくる涙を止める事ができなかった
あーあ…
あと一歩でも踏み出せば、開放されるのに
…邪魔しないでよ…
この狭い世界から逃げ出したいだけなのに
なんでこんな時にまで苦しまなきゃいけないの…?
もう…疲れたのに
?
?
?
?
LAN
そう言い残して
…彼は俺の前から居なくなった
訳が分からなかった
今の今まで目の前にいたというのに
この一瞬で消えて無くなった 彼の体も、声も、存在も。
下の方からザワザワと人が集まってくる声が聞こえる
と同時に救急車のサイレンの音が鳴り響く
その瞬間
俺の中の大きなナニカが落ちたような気がしたのは
きっと気の所為だ
いるま
LAN
いるま
ものすごい形相で俺の肩を掴む
いるま
いるま
いるま
いるま
俺の安全を確認したいらしく、慌てた口調で問いかける
LAN
LAN
LAN
LAN
LAN
いるま
いるま
いるま
いるま
LAN
いるま
いるま
LAN
いるま
LAN
いるま
LAN