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ばりばりむしゃむしゃ

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ばりばりむしゃむしゃ

1 - ばりばりむしゃむしゃ

♥

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2024年03月12日

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ぽかぽかと暖かいある日のこと。

キレイな花がたくさん咲いている花畑で、虫たちが楽しくお喋りしていました。

いもむし

あはは!

バッタ

あはは!

いもむし

今日はあったかくって、気持ちいいなぁ。

バッタ

花の蜜も美味しいなぁ。

ちょうちょ

今日は絶好の飛び日よりだわ!

いもむし

あはは!

ちょうちょ

あはは!

するとそこへ、一匹の黒くて大きなくもがやって来ました。

くもはみんなに挨拶しました。

くも

や、やぁ…!

しかし、誰も返事をしません。

それどころか、くもの姿を見るなり、嫌そうな顔を浮かべました。

バッタ

やだやだ、この場所にふさわしくない奴が来たよ。

いもむし

怖い怖い、きっとボクたち食べられちゃうよ。

ちょうちょ

わたしのキレイな羽に、くものすが着いちゃうわ!

虫たち

「「「あーあ、早くどこかに行ってくれないかなー?」」」

くも

……。

くもは静かに花畑から去りました。

くもの家に戻ったくもは、虫たちに言われた事を思い出して、ポロポロ涙を流しました。

くも

うぅ…うぅ…

くもの家は、薄暗い森にあります。

くもはその森にある木の中に住んでいました。

くも

くすん…うぅ…

ひとりぼっちのくもの泣き声が、家の中で響きます。

くも

うぅ…うぅ…

くも

なんでみんな、ぼくを除け者にするんだろ…。

くも

いもむしさんのように、のんびり穏やかに見えないから?

くも

バッタさんのように高くジャンプ出来ないから?

くも

ちょうちょさんのように、キレイな羽を持ってないから?

くも

ぼくがくもだから?

くも

みんなを食べる、悪いくもだから?

くも

ぼくはそんな事しないのに…どうしてみんなは決めつけるの?

くも

うぅ…くすん…

くも

寂しいよ、ひとりぼっちは寂しいよ。

くも

うぅ…うぅ…

暗い木の中で、その日くもはずっと泣き続けました。

次の日、くもは昨日とは違う花畑にやって来ました。

ハチ

あはは!

トンボ

あはは!

その花畑も、虫たちで大賑わいです。

今日こそは、と思い、くもは虫たちに話しかけました。

くも

や、やぁ…。

くもが声をかけると、虫たちは一斉にくもを見ました。

虫たち

……。

たくさんの目が、くもの事をジッと見ます。くもはびっくりしました。

すると、その目がまたあの嫌そうに見るものの目に変わりました。

トンボ

怖い!食べられるぞ!!

ハチ

なんだあいつ!おれたちを食べに来たのか?!

トンボ

早く逃げろ!

ハチ

あっちに行け!じゃないとおれの針で刺しちゃうぞ!

ハチに追いかけられ、くもは慌てて逃げました。

くもの家に戻ったくもは、虫たちに言われた事を思い出して、またポロポロ涙を流しました。

くも

どうして…どうして…ぼくばっかり…

静かな木の中で、くものすすり泣く声だけが響きます。

泣いても泣いてもどれだけ泣いても、ひとりぼっちのくもを、嫌われもののくもを、なぐさめてくれるものはいません。

くも

うぅ…うぅ…

暗い木の中で、その日もくもはずっと泣き続けました。

ある日の事でした。

くもが外にいると、ポツポツと雨が降って来ました。

くも

雨が降って来た!早く帰らないと!

くもは慌てて帰りました。

すると、くもの家がある木の葉っぱに、一匹のちょうが雨宿りをしていました。

しかし、雨が強くなってきて、捕まっている葉っぱは今にも落ちそうです。

心配になったくもは、ちょうちょの近くまで登り、話しかけました。

くも

ちょうちょさん、ちょうちょさん!大丈夫?

カラスアゲハ

大丈夫じゃないー!

くも

ち、ちち近くにぼくの家があるよ。そこで雨宿りする?

カラスアゲハ

するー!

ちょうちょはパッと葉っぱから手を離しました。

カラスアゲハ

ぬれちゃう!早く行こ!

くも

わ、わかった!

くもは雨に濡れないように気をつけてながら、案内しました。

木の中の家に帰って来たくも。でも、今日はひとりじゃありません。

カラスアゲハ

おじゃましまーす。

くも

ど、どうぞ…。

くもの家にやって来たちょうちょは、キョロキョロあたりを見渡します。

カラスアゲハ

へぇ、木の中にうちがあるんだ。くもなのに、珍しいね。

くも

あ、ああうん!キツツキが作って出て行った後のを、ぼくが勝手に貰ったんだ。

くも

ぼく、あんまり糸で家作るの、得意じゃなくて…。

カラスアゲハ

そうなんだ。けど、このおうちもステキだよ。今日はありがとう!

くも

う、ううううううん!き、きき気にしなくていいよ!

カラスアゲハ

ふふ、そんなに緊張しないで。

カラスアゲハ

雨が止むまでの間、お世話になるね。

くも

う…うん!ずっとここにいて、いいからね…。

くもの家で、ちょうちょが濡れた羽を乾かしていると、くもが話しかけました。

くも

ね、ねぇ…。

カラスアゲハ

どうしたの?

くも

きみはぼくの事…嫌いじゃないの…?

カラスアゲハ

嫌い?なんで?

くも

だ、だだだって、ぼくはくもだよ…?

カラスアゲハ

うん。

くも

きみの事、食べるかも…って…

カラスアゲハ

食べるの?

くも

いやっ、ちがっ、食べないけど…

カラスアゲハ

じゃあ大丈夫だね。

くも

で、ででででもっ、ぼくこんな見た目だし…

カラスアゲハ

うん。かっこいいね。

くも

か、かかかかっこいい?!

カラスアゲハ

うん。かっこいい。

くも

そ、そそそんなわけないよ!

くも

それだったらちょうちょさんの方が…

カラスアゲハ

かっこいい?それは嬉しいな、ありがとう。

くも

う、うん!ぼくなんかより全然!!

カラスアゲハ

そんな事ないよ!かっこいいよ!

くも

え、ホントに…?

カラスアゲハ

うん!

くも

それは…嬉しいなぁ…!今までそんな事言われた事無かったから、嬉しいや。

カラスアゲハ

ふふ、くもくんとは、喋ってて楽しいな。

くも

ぼ、ぼくも!ちょうちょさんとお喋り出来て楽しいよ!!

カラスアゲハ

ふふ、それは嬉しいな。

2人はたくさんお喋りをしました。

たくさんお喋りをした次の日の朝。くもは目覚めました。

くも

う、う〜ん。

手足をピンと伸ばして、ゆっくりと動きます。

近くでは、まだちょうちょが眠っていました。

くも

楽しかったなぁ…。

くもは昨日の事を思い出します。

くも

……。

くもは、なんだかちょうちょの羽に触りたくなりました。

ちょうちょが起きないように、恐る恐る、手を伸ばします。

くも

あと少し…。

しかし、あとほんの少しといったところで、ちょうちょがパチリと目を覚ましました。

カラスアゲハ

うーん!おはよ!

ちょうちょはくもの行動なんて、つゆ知らず、ちょうちょはくもに元気よく挨拶をしました。

くも

おっ、おおおはよ…。

くもは慌てて手を引っ込めました。

カラスアゲハ

今日は晴れたかな?まだ雨降ってる?

くも

えっ、ええと…

くも

ちょっと見てくるね。

そう言ってくもは、外の様子を見に行きました。

くもは穴からヒョイっと顔を出すと、空を見ました。

くも

あっ…まだ雨降ってる…!

昨日ほどでの雨ではありませんが、まだポツポツと雨が降っていました。

くもはドキドキしました。

くも

これでまたちょうちょさんと…!

くもは急いでちょうちょの元へ戻りました。

くもはちょうちょに、まだ雨が降っている事を伝えます。

カラスアゲハ

…そっか。

くも

雨が止むまで、ここにいなよ!

カラスアゲハ

じゃあ…今日もお世話になるね。

くも

うん!

こうして今日も、くもとちょうちょはたくさん話しました。

たくさんお喋りをした次の日の朝。くもは目覚めました。

起きてすぐ隣を見ると、まだちょうちょが眠っています。

くも

……。

今度こそはと思い、またくもはちょうちょの羽に触ろうと、手を伸ばしました。

しかし、また触れる直前、ちょうちょはパチリと目を覚ましました。

カラスアゲハ

ん〜!よく寝た!

くも

おっ、おはよう…。ちょうちょさん。

カラスアゲハ

おはよう!

ちょうちょは羽をゆっくり広げて、体を伸ばします。

カラスアゲハ

ねぇ、今日は晴れたかな?

ちょうちょの言葉に、くもはドキリとしました。

くも

…また見てくるね。

くもは雨が降っている事を祈りながら、穴から顔を出しました。

くも

……。

睨むように空を見ると、今日は曇った空模様でした。

くも

……。

くもはちょうちょの元へ戻ります。

カラスアゲハ

ねぇどうだった?晴れてた?

くも

…晴れてなかった。

くも

今日も…やめといた方がいいかも。

カラスアゲハ

…そっか、ごめんね。今日もここにいていい?

くも

うん。気にしないで。ずっとここに、いていいからね。

あの日からくもは、嘘をつくようになりました。

カラスアゲハ

ねぇ、今日は晴れたかな?

くも

ううん、今日は雨が降ってたよ。

カラスアゲハ

ねぇ、今日は晴れたかな?

くも

うん、だけど鳥達がたくさんいたよ。今日は危ないからやめておこう。

カラスアゲハ

ねぇ、今日は晴れたかな?

くも

うん、だけどね。今日は風がとっても強かったよ。これじゃあ、気持ち良く飛べないよ。

カラスアゲハ

…….ねぇ、今日は晴れたかな…。

くも

今日もだめ。だって、人間がいたんだもの。きみはキレイだから捕まっちゃう!だからここにいないと!

カラスアゲハ

…………ねぇ、今日は…

くも

だめだめ!今日はハチたちが…

カラスアゲハ

……ねぇ、今日は…

くも

……だから……

毎日毎日ちょうちょは尋ねて、毎日毎日くもはダメだと言い張りました。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……

ちょうちょがくもの家に来て、もう何日目の朝を迎えたのか、くもが忘れた頃でした。

カラスアゲハ

ねぇ…

くも

ん?あぁ、今日は雨が降りそうだよ。外はどんより暗いから、きっと強い雨になる。だから、今日もダメだよ。

カラスアゲハ

……。

くも

ね!だから今日もたくさんお話ししよう!!

カラスアゲハ

ねぇ…もうそろそろ外に出るよ。

くも

……は?

カラスアゲハ

もうずっとここにいるわ。…ここが嫌なわけじゃないの。だけど、空を自由に飛びたいの。外に出たいの。

くも

……。

カラスアゲハ

鳥が飛んでいても、風が吹いていても、人間がいても、雨が降っていても、今日飛びたいの。また空を見たいの。

くも

……じゃあ、今日はやめておこう。明日、また明日そうしよう。

カラスアゲハ

ううん、大丈夫。心配しないで。

カラスアゲハ

今はまだ雨降ってないんでしょ?
なら今のうちに出て行くわ。

くも

ねぇ、待って…ちょっと…待ってよ…

カラスアゲハ

今までありがとう!お喋りすっごく楽しかった!!じゃあね!!

ちょうちょが外に出ようと、羽を広げた、その時でした。

くも

待って!!

今まで聞いたことのない大きな声で、くもがちょうちょを呼び止めました。

カラスアゲハ

どうしたの?

くも

……最後に、ちょうちょさんの羽に触りたい。

カラスアゲハ

羽を?

ちょうちょがゆっくり羽を動かすと、黒い羽がキラリと蒼く光りました。

くも

うん。ちょっとだけ、ほんのちょっとでいいんだ。お願い。

ちょうちょはしばらく考えると、頷きました。

カラスアゲハ

うん、いいよ!長い事お世話になったもの!

ちょうちょは、くもに背を向けて、キレイな羽をピンと広げました。

くも

……。

くもは優しく、ちょうちょの羽に触れ

るやいなや、くもは力いっぱい掴みました。

カラスアゲハ

!!やめて!!羽が!

ちょうちょの悲鳴も気にせず、くもはちょうちょの羽を

ガブリと噛み付きました。

カラスアゲハ

やだっ!!やめて!!助けて!!やだっ!!!!

ちょうちょは泣き叫んで、必死に抵抗しますが、大きくて黒いくもはびくともしません。

カラスアゲハ

羽が!!やめて!!お願い!!

ばりばりむしゃむしゃ ばりばりむしゃむしゃ

くもはちょうちょの羽を食べ続けます。

ばりばりむしゃむしゃ ばりばりむしゃむしゃ

カラスアゲハ

いやだ!!お願い!!誰か…

ばりばりむしゃむしゃ ばりばりむしゃむしゃ

ばりばりむしゃむしゃ ばりばりむしゃむしゃ

ばりばりむしゃむしゃ ばりばりむしゃむしゃ…

いつも薄暗い森の中。

でも今日は、一段と暗い模様。

曇りだった空は、今じゃ雨が激しく降り続いていました。

カラスアゲハ

……。

カラスアゲハ

……どうして…なんで…なんで…?

ちょうちょは今にも消え入りそうな声で言いました。

くも

……。

くもはジッとちょうちょを見ます。

くもの目に映るちょうちょは、キレイなキレイな羽を持つちょうちょは、

今じゃ見る影もありません。

カラスアゲハ

うっ…うぅうう…うわぁぁぁぁぁ!!!

ちょうちょはわんわん泣きました。

床に散らばるキラキラした羽のカケラを抱き寄せて、わんわん泣きました。

けれども羽は戻りません。

くも

ねぇ

くもは泣き続けるちょうちょに近づいて行きます。

カラスアゲハ

ひっ…!いっ、いやだっ!!来ないでっ!!!

くもは足元に落ちていた羽を気にせず、ぱきりと踏みました。

くも

ねぇ、ちょうちょさん。ちょうちょさん。

くも

その羽じゃ飛べないね。外に行けないね。

くも

でも大丈夫だよ!

くも

ここにずっといればいい!

くも

ここなら安全だし、食べ物もぼくが取ってきてあげる!

くも

だからね、これからもずっと、ぼくと一緒にいようね!!!

カラスアゲハ

ぁ…ぁ…

ちょうちょは足を振るわせながら、なんとかくもから逃げようとしました。

くも

………。

くも

……次は、足かぁ。

ばりばりむしゃむしゃ ばりばりむしゃむしゃ…

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