テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
日が暮れ 砂漠には、昼の暑さの代わりに
骨の髄まで冷えるような 寒さが忍び寄っていた
雲ひとつない空に 星々が瞬き始めている
夜風が砂粒をさらい 乾いた音を立てる中
俺は爽と並んで歩いていた
足元には まだ微かに残る痕跡
引きずるような靴跡に 破けた水袋、焦げた布──────
この先で 『何かあった』事は明白だった
俺が呟くと 爽は無言で頷いた
これは、ただの気配ではない
灼けた砂の奥に 酷く濁った『音』があった
鳴き声、砂を割る衝突音 金属のような摩擦音…………
────『厄災』だ
そう直感した瞬間 俺は駆け出した
爽も、すぐ追いついてくる
闇夜に光る星を頭上に 砂を蹴り、地を駆けた
辿り着いた先で、目にしたもの…
────砂煙の向こう
そこにいたのは 闇を纏った、巨大なムカデ
その群れが 2つの人影を追っていた
30代程の男性と 20代程の女性────
男性は必死に女性の手を引き 振り返る余裕もなく逃げている
女性は足を引きずり 肩からは血を流していた
逃げ場など、どこにもない
それでも 2人は走ることを止めなかった
────その姿を見た瞬間 俺の中で『何か』がはっきりした
俺は外套を翻し 空気を裂いて駆け込んだ
地面が砕けるほどの勢いで 厄災の前に降り立つ
砂が舞い 星の光さえ翳る中
俺の背に 黒い羽のような影が揺れた
厄災が、一瞬動きを止め 眼前の俺を視界に留める
鎌のような脚、鋭い毒牙
ギシギシ、と 甲殻の軋む音が響いた
それだけを、静かに告げた
敵意は、全て俺が引き受ける
────それが、『鴉』の矜持
一度、全てを失い 何も持たずに生き続けてきた俺が
再び、『誰か』を守る為に 自分で選んだ生き方……
俺は、剣を抜いた
星あかりのもと 銀の刃が一筋に光を放つ
────星降る砂漠に 静かに、戦いの始まりを告げた
コメント
1件
うん、凄いや、みんな凄いね神作品しかみんな作らないじゃん、