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とある物書きの挑戦譚　【第一期】

第5話 - トップならではの憂鬱

451

2021年03月07日

#ファンタジー

#転生

#転生モノ

#なんで？

#異世界転生

#異世界

シゼの家【ノーディン宅】

アレン

白くて、程よくぷにぷにした肌…。

アレン

前の奥様によく似たサファイアのような青い瞳

アレン

そして、

アレン

さらさらと揺れる絹のような黒髪…。

アレン

はぁ〜…

アレン

私のお嬢様が今日も可愛い…。

アレン

世界には可愛い人がいっぱいいるけど、

アレン

私のお嬢様が…

アレン

いっちばん可愛いっ。

アーク

！…

アーク

もう…姉さんったら。ﾊｧ…

アーク

お嬢様は、

アーク

“ノーディン家のお嬢様”でしょ。

アーク

お嬢様は僕達だけのものじゃない。

アーク

それにいつかはノーディンの名を胸に僕らを離れ、大きく飛躍なさるんだから。

アレン

うぅ…。

アレン

…“離れる”、なんて寂しいこと言わないでよ〜。

アーク

ごめん。

アーク

言いながら僕も少し心が痛くなった。

アレン

うぅ〜…。

アレン

やだやだやだ、ずっとお嬢様と一緒がいい〜。

アーク

…うん、……僕も。

アーク

あ！

アレン

！？ﾋﾞｸｯ

アーク

そういえば、今日って…

アーク

長男のマーキス様が帰られる日じゃなかったっ…？

アレン

えぇっ…！？

一方その頃

シゼは1人、店に残って掃除をしていました。

シゼ

お腹すいた…。

シゼ

あと暑い…、そして眠い…。

シゼ

（まさかアレンとアークが市場に行ってる時を狙って。）

シゼ

（義母さんがお店の鍵をこっそり閉めてただなんて…。）

シゼ

（名簿帳の計算間違ってますよーって言っただけなのに…。）

シゼ

（やることの酷さが増していってない？）

シゼ

はー暑い〜…

シゼ

（今頃アレンとアークはたぶんお風呂か夕食中だろうな…。）

シゼ

（心配して、迎えにきてくれたりしないかなー…。）

シゼ

…待ってる間、執筆中の小説の展開でも考えるか。

シゼ

（大まかなベースは私が過去に連載した切ない系の恋愛話）

シゼ

（大金持ちの家に生まれた子供と、不思議な力を持った女の子が悲劇に巻き込まれるの。）

シゼ

（男の子は、お金も名誉もあるけれど孤独な設定で）

シゼ

（女の子は“あること”を目的にそんな彼を助けようと考えるの）

シゼ

（その“あること”は…まだ考えてないけど、うーん…何か良いのないかな…。）

ガラッ！！

シゼ

うわぁっ！？

シゼ

（勝手に扉が開いた！？）

シゼ

だ、

シゼ

誰か、いるの…っ？

マーキス

…僕だ。

シゼ

っ…？

シゼ

だ、誰…？

マーキス

？…

マーキス

何を言い出すんだ君は

マーキス

僕だと言っているだろう。

シゼ

……。

シゼ

（どうしよう、全く分からない…。）

シゼ

（すっごく怖い。）

シゼ

（目の前の人は何？オレオレ詐欺ならぬ、ボクボク詐欺？？）

マーキス

……！

マーキス

あ、

マーキス

そっか。

マーキス

君、家出してたからその時に忘れちゃったのか。

シゼ

！…

マーキス

マーキス・ノーディンだ。

マーキス

リアーナの兄で、君とは血の繋がらない兄妹ってことになるな。

マーキス

つまり、この家の跡取りである長男だ。

シゼ

！…

シゼ

お、お兄…様…？

シゼ

（なるほど。）

シゼ

（この人がアレンが言ってた跡取り息子か）

シゼ

（確かに、目元がリアーナとよく似てる。）

シゼ

（にしても、体おっきいな…。）

シゼ

（がっしりしてて、大人みたい。）

マーキス

やはり忘れてたか。

マーキス

まぁそうだな、僕も2年前までは寄宿学校に行っていたし。

マーキス

跡取りになることが決まってからも仕事で忙しかったし忘れるのも無理はない。

マーキス

ところで、

マーキス

こんな夜遅くまで何してるんだ。

シゼ

！…

シゼ

えと、お店の掃除をしてて

シゼ

鍵が閉まってて出られなかったので、困ってました。

マーキス

ほぉ、

マーキス

もう一つの店の鍵を持ってた僕が来て運が良かったな。

マーキス

とっとと帰るよ。母さんが心配してる。

マーキス

僕の馬車に乗って、

マーキス

ほら行くよ。

シゼ

！…

シゼ

はいっ。

ｶﾞﾀﾝｶﾞﾀﾝｯ、ｶﾞﾀﾝｶﾞﾀﾝｯ… （馬車が進む音）

マーキス

随分お疲れのようだね。

マーキス

もう明日は休んだら？

マーキス

ヘトヘトな従業員なんて店からしたら不利益でしかないしね。

シゼ

は、はい…。

シゼ

（リアーナと義母さんに嫌がらせされるのが当たり前になってるからか、）

シゼ

（…このマーキスって人）

シゼ

（まだ喋って数分しか経ってないけど意外に優しい人だ…。）

マーキス

…。

マーキス

シゼ、なんか変わったね。

シゼ

えっ…

マーキス

家出をする前は人形みたいに無口で

マーキス

僕に喋ったことはほぼ無かったし、

マーキス

いつもムスッとしてたけど

マーキス

今のシゼはすごく人間味があるね。

シゼ

！…。ﾄﾞｷｯ！

シゼ

そうですか…？

シゼ

（転生してるから性格が違うなんて言えない…。）

マーキス

うん。

マーキス

でも、その方がいいよ。

マーキス

僕みたいになるよりは、大分マシだから。

シゼ

！

シゼ

お兄様、みたいにですか？

マーキス

うん。

マーキス

僕は跡取りではあるものの、人と接するのが苦手だからね。

マーキス

ふと気を抜いて素の状態でいると、

マーキス

いつも「何考えてるか分からない。」とか

マーキス

「冷たい。」って言われるんだ。

マーキス

だけど、商売を繁盛させるには周りとの人徳が必要だから、

マーキス

本当は犬とか、猫とかと一緒に1人でのんびりしたいけど。

マーキス

取引先に笑顔貼っつけて色々努力してる。

シゼ

…。

シゼ

…お兄様は、跡取りが嫌なのですか？

マーキス

はっきり言えばそうだね。

マーキス

でも残念なことに

マーキス

母さんに反抗したら君みたいにいじめられるかもしれないし。

マーキス

妹のリアーナは

マーキス

あまり頭が良くないからね。ｸｽｯ

シゼ

！…

シゼ

（私のお兄ちゃんのことめちゃさりげなくディスってる！）

マーキス

まぁ、辛いのは人付き合いだけだし

マーキス

心配しなくてもなんとかやっていくさ。

マーキス

それより、シゼ。

シゼ

？

マーキス

突然だけど、

マーキス

家を出て、お城で働いてみない？

シゼ

！？

シゼ

…えっ、

第5話　おわり

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シゼは幸せになってくれー！(´；ω；｀)

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