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夢のような時間がもう直ぐ終わりを告げる。 隣で佇む君は笑っていて、でも悲しそうで、誰よりも濃い時間を過ごしたのに まだ君について分からないことがあるのかと少し寂しく思った。 まぁいいや、と前を向く。 折角君と一緒にいれる最期の時間なのに気落ちするのは良くない。 自分たちのことを1ヶ月後、1年後覚えている人はそう多くないだろう。 なら最期くらい本当の自分で居ても良いかもしれないな。
そういう君の顔は今まで見た君のどの顔よりも美しくて、儚かった。
2人とも笑っていた。 これからこの夢に終わりを告げる。 悲しいはずなのに今までに感じたことのない幸福を感じるのはなぜ? 答えはわからないけど、でも。
2人
最期の言葉が君と一緒で良かったな。 きっと今自分は世界で2番目に幸せだ。 1番は今隣にいる君が良いからね。 ダイヤモンドのように輝く朝日に2人の体は吸い込まれていく。
これは、死ぬことを肯定したかった2人の物語。
1日の中で1番ダルい時間は登校の時間だと私、今瀬來花は思う。 特に「10年に1度の大寒波」などと囁かれている日は最悪だ。
來花
私はそんな憂鬱な気持ちを掻き消すように大きな声で教室に入る
まぁ、本当の憂鬱はここからかもしれないけど
凛々
沙羅
この2人は私の「いつメン」暁月沙羅と天川凛々。 出席番号が近いという単純な理由で私達は仲良くなった。 でも、2人は私と釣り合う人間ではなかった。
凛々
沙羅
凛々
沙羅
早くも私は会話に取り残される。 この2人はいわゆる才能を持った人たちだった。 凛々はYouTubeチャンネル登録者数30万人「リリィ」というインフルエンサーだった。 「女子高生の夏休み」というなんの変哲もない日常動画が大バズり。 今は多くの人が知っている有名人だった。 そして沙羅もSNSをやっている。 「さららの勉強ちゃんねる」というものだった。 登録者は凛々程ではないが5万人を超えている。 効率の良い勉強法や、毎日夜7時から11時から行なっている配信 「さららの自習室」というコンテンツが受験生などに人気なのだ。 また、沙羅の取り柄はSNSだけで無い。 勉強もできるのだ。 常に学年トップ3に入る本物の天才だった。
凛々
沙羅
凛々
凛々
沙羅
まぁ本当はSNSはやっているんだけど。 それをこの2人に言うつもりはなかった。 別にインフルエンサーでも無いし、インスタでもYouTubeでも無い。 彼女たちが存在も知っているか怪しい界隈のどこにでもありそうなアカウント。
來花
凛々
凛々がぎゃるぴでニコッと笑う 沙羅もそれをニコニコと見つめている。 どこにでもありそうな仲良し3人組。
そして周りからは見えない、確実な壁。
ダルい学校も始まってしまえがあっという間だった。 あっという間に帰る時間になる。
凛々
沙羅
來花
凛々
來花
2人
校則違反の寄り道をする2人とは真逆方向。 私は自分の家にまっすぐ突き進んでいく。 少し寂しいが、構わない。 だって今からーーーー
來花
私は人通りの多い通学路で思わず叫んでしまう。
私の推しーー2.5次元歌い手グループ『零番』の月兎(つゆ)くんのポスト通知だった。 『零番』はつい先日結成4周年を迎えた6人組グループ。 メンバーは、愛藍(あいらん)・みなと・月兎・さと。(さとまる)・いなり・運る(めぐる) リーダーであるさと。が大学時代の同級生や伸び悩んでいた個人歌い手を 集めて結成したグループだった。 私はイケボラップ担当の月兎を2年半以上推している。 彼の紡ぐラップや配信での言葉、甘く溶けるようなイケボや リスナーやメンバー想いな彼が大好きだ。
今日は彼が歌ってみたを投稿する日。 私がずっと歌って欲しかったボカロ曲「スピカ」が5時に投稿されるのだ。 ずっとDMで送っていて良かった… もし私のDMが読まれてて、私の推し曲が選ばれたのならその事実で死ねる。
來花
私はウキウキで通学路を歩く。 彼のポストひとつで今日の憂鬱が全て泡となって消える。 推しは、月兎くんはやっぱり偉大すぎる! 私は改めて彼の大切さを噛み締めた。
來花
プレミア公開終了から1分後。 私はただただ困惑していた。
來花
語彙力の限界だった。 私はハッとしてXを起動させる。
ライカ
ライカは私の推し活用のアカウント。 #月兎の月への道のり は月兎くんの専タグだ。 専タグをつけることで月兎くんに私のポストを見てもらえる可能性が高まるのだ。
ライカ
感想ポストだけでは足りなかった。 私は思いの丈を綴っていく。
早速ネッ友からの返信が来た。 私のXアカウントのフォロワー数は1028人。 その中でもやはり仲良しの子は決まってくる。 私は特に3人の子と仲良くなった。 はなみずき・うららん・なっちゃんオレンジ。 年齢も推しもバラバラ(左から愛藍・みなと・いなりのオタクだ) だけど、私たちはいつメンだった。 リアルとは違う本物の仲良し。 私は特にはなみずきとは「ニコイチ同盟」を組むほど仲良しだった。
ライカ
うららん
うららんの誤字かふざけか分からない返信に笑みが溢れる。 私はXを閉じ、再びYouTubeを起動させる。 イントロが流れ出す。 それに続く月兎の声に私は目を閉じた。
ライカ
はなみずき
なっちゃんオレンジ
うららん
ライカ
これは私達いつメンのLINEグループ『零番が0番大好き!』だ。 毎日夜11時から30分ほどLINEで会話するのが私たちのルーティーンで楽しみだ。
ライカ
はなみずき
なっちゃんオレンジ
うららん
うららんは零番のクズ男を売りにしたホスト系配信者・みなとのガチ恋だった。 彼は度々危険な発言をするが、リスナーはそれが好きらしかった。 (ちなみに今話題の彼のポストは 「同担は札束で殴れ。全ての頂点に立ち俺の零番になれ」だった) 現にうららんはゾッコンである。
うららん
ライカ
そして彼女は4人の中でも、というかみなとリスナーの中でも圧倒的な強オタだった。 私より年下の中3なのだが缶バッジの数は恐らく1000を超え、紙類は計り知れない量だ。
うららん
はなみずき
なっちゃんオレンジ
しかし彼女は他担のグッズを私たちに譲ってくれる優しい性格の持ち主だった。 強オタであることを自慢したことは一度もない。
彼女たちとなら、私は本音で語れる。 この時間が、この人たちが、私は大好きだった。
はなみずき
はなみずきが私が言おうとしてたことをそのまま言う。 さすがニコイチ!
ライカ
うららん
なっちゃんオレンジ
ライカ
楽しい時間はあっという間。 日付を超えそうな時間になり、LINEはお開きになった。 履歴を見ては幸せを噛み締める。 リアルでは物寂しい私だけど、ネットの世界だけでは主人公になれる気がした。
ふと思う。 もし零番に出会っていなかったら、月兎くんがいなかったら 私はどうなっていたんだろう? 冗談抜きで自分はこの世にいなかったと思う。 中学時代に受けた壮絶ないじめを思い出すと今でも吐き気がする。 1番辛い時期に彼は私を救ってくれた。 故に私は誓う。 「永久に彼のオタクでいよう」 と。 そして彼との思い出も、これからの未来をずっと大切にしていこう。
そう。私は勘違いしていた。 彼が永遠に存在していて、いつまでもそばにいてくれる、とーー