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春編
先客に会うために
いつもの時間にここに来る
香織
香織
し、失礼します
香織
（今日はいないみたい）
生木先生
香織ちゃんおはよう
今日も体調がすぐれないのかしら？
今日も体調がすぐれないのかしら？
香織
生木先生おはようございます。朝から熱っぽくって…
生木先生
あら、そう
今日は２つともベッドが空いてるから好きな方で休んでていいわよ
今日は２つともベッドが空いてるから好きな方で休んでていいわよ
香織
はい、ありがとうございます
香織
（いつもは右側だけど今日は左側にしよう）
ガラガラっ
渉
あ〜眠っ
生木先生
渉くんおはよう
今日もサボり？
今日もサボり？
渉
は？うるせーな
先行には関係ねーだろ
先行には関係ねーだろ
渉
（いつもの左側が空いてねぇ）
生木先生
相変わらず生意気ね
今日は戻って来れないから後はよろしくね
今日は戻って来れないから後はよろしくね
生木先生
くれぐれも香織ちゃんには手を出さないよーに
ただでさえ問題児なんだから
ただでさえ問題児なんだから
渉
わかってるって
早く行けよ
早く行けよ
渉
（どいつもこいつも言いたい放題言いやがって）
生木先生
生木先生
はいはい
じゃあよろしくね
じゃあよろしくね
先行が出て行った後 左側じゃないと落ち着かない俺はカーテンを思い切り開けた
渉
おい、起きてるか？
香織
は、はい！
香織
（ビックリした）
渉
そっち俺の場所なんだけど
香織
今日は私の方が先だったみたいですね
渉
（相変わらず生意気な女だな）
渉
場所変わってくれねぇか？
香織
え…
今日はこっち側がいいんですけどダメですか？
今日はこっち側がいいんですけどダメですか？
渉
（上目遣いで見てきやがって…調子狂うっつーの）
渉
仕方ねーな
今日だけだぞ
今日だけだぞ
香織
ありがとうございます！
香織
渉くん優しいですね
渉
渉
気安く君付けすんな
渉
（ドキドキしたじゃねーか）
香織
（怒らせたかな）
渉
怒ってねーから安心しろ
あと、敬語やめろ
あと、敬語やめろ
香織
う、うん
ありがとう
ありがとう
渉
俺は寝るから後はよろしくな
見た目はヤンキーだけど ぶっきらぼうで優しい
私の心は彼に惹かれていった
夏編
看護師
香織さん1番の診察室にどうぞ
香織
（緊張してきた）
先生
検査の結果をお伝えします
先生
乳がんです
香織
え…
先生
左側の胸を摘出しないと生きられません
香織
そ、そんな
香織
まだ高校生ですよ？
先生
受け入れられないかもしれませんが早めにご決断をお願いします
香織
香織
わかりました
頭が真っ白になった
一つ胸を無くすなんて嫌だ
でも生きたい
香織
（渉君…助けて）
香織ママ
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不在着信
香織
（ママから電話来てたんだ）
香織
（乳がんだったって言わなきゃ）
香織
（でも、言えないよ…）
渉
おい
香織
！？
渉
具合悪いのか？
香織
どうしてここにいるの？
渉
検査結果聞きに来たとこ
香織
そ、そうなんだ
看護師
看護師
渉さん3番の診察室へどうぞ
渉
じゃあな
香織
またね
渉
気をつけて帰れよ
香織
ありがとう
今でも覚えてるよ
渉君に会えて
気持ちが軽くなった事
秋編
渉
（マジ寒っ）
ドンっ
香織
香織
きゃああッ
渉
大丈夫か？
香織
ごめんなさい
渉
なんだ、香織じゃん
こんなとこで何やってんの？
こんなとこで何やってんの？
香織
渉君…今少し時間ある？
渉
少しだけなら付き合ってやる
香織
ありがとう
じゃあ、あそこのベンチに座ろう
じゃあ、あそこのベンチに座ろう
渉
渉
で、どうした？
香織
私、夏に病院にいたでしょ？
香織
良くない結果だったの
香織
毎日生きてるのが辛い
渉
じゃあ死ねば？
香織
え…
渉
生きたくても生きられない奴もいる
渉
毎日落ち込んで塞ぎ込んでるだけなら存在自体消せばいい
香織
ひ、ひどいよ…
香織
私がどれだけ悩んでるかわかる？
香織
左の胸を摘出しないと生きられないって言われたの
香織
私だって一応女の子なんだよ？
香織
恋もしたい
香織
結婚もしたい
香織
子供も産みたい
香織
当たり前の事が当たり前に出来ないんだよ？
渉
出来るだろ
香織
香織
え？
渉
片側だけ無くなったとしても
渉
香織は香織だろ？
渉
見た目だけで判断する奴なんてその程度だ
渉
そんな奴はこっちから捨ててやれ！
渉
どんな香織でも受け止めてくれる奴はいる
渉
…ここにな
香織
グスッ…え、ヒック
渉
だからもう泣くな
渉
自分の為に生きろ
渉
現実を受け止めてこれから前に進め
香織
グスッ、あ…りがとう
渉
（少しでも俺の言葉が生きる希望になってくれたらそれでいい）
渉
（お前は一人じゃない）
香織
そう言えば渉君も病院に居たよね？
香織
結果どうだったの？
渉
俺の事はどうだっていいんだよ
渉
気にするな
渉君は私をいつも助けてくれたね
本当にありがとう
冬編 最終章
香織ママ
早くしないと遅刻するわよ
香織
わかってるってば
香織
香織
行ってきます
香織ママ
いってらっしゃい
香織
香織
（今日も居ない）
渉君と出会ってから
保健室で話せるのが私の楽しみだった
秋以来、私達はあの公園で朝待ち合わせをしていたね
香織
（私の気持ち届いてたかな？）
お互いに好意があった事は確かな事実で
ただ恥ずかしくて言葉にして伝えられなかった
風の噂で聞いた話は、渉君の検査結果は良くなかったらしい
それでも私を励ましてくれて、いつでもそばにいてくれたね
香織
（会いたいよ…渉君）
なんで何も告げずに転校してしまったの？
生きていますか？
元気に過ごしていますか？
私は渉君の言葉のおかげで今生きています
私が望む事はこれから先もただ一つだけです
香織
香織
渉君…幸せでいてください
香織
大好きでした。
ＥＮＤ
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
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