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お前ここに馴染みすぎじゃねぇか?

毎日の様に、昼休みになる度に蘇枋が保健室へと訪れては、自身が置いていったであろう茶器と茶葉を、保健室にある透明ガラスの戸棚から取り出していた。

蘇枋

えぇ?そうかな?

そこの棚だって、お前の私物置きみたいになってっし。

包帯や、医療キッドと共に置かれた場所から茶葉を取り出す蘇枋を指さし桜は ぶすっと頬を膨らませた。

蘇枋

一応奥の方に入れてるよ?

他の生徒にバレねぇようにだろ!

1度茶器を水道で洗い流してから、蘇枋はポットに水を入れ、お湯を沸かす準備をした。 桜もさりげなく茶器の水滴を拭き取り手伝っている。

2人分の茶器に、たくさんの種類のお茶。 昼休みに二人で飲むことが段々と恒例化してきていた。

ほんと茶とか好きだよな。

蘇枋

そりゃあね、

蘇枋

俺の記憶も体も、ずっと変わっていないから。

2人で向かい合うようテーブルに座り、ポットに入れた水が湧き上がるのをじっくり待った。ちょっとした小さな時間。それを大切にする様に、2人は雑談をする。

大人になったみんなの事だとか、桜自身の事だとか、蘇枋は興味ありげに桜の話を聞いた。

あ、クッキー貰ったんだけど食うか?

職員会議のあと、おすそ分けで2つ貰ったのだとか。 小包に入ったちいさなクッキー2つが、桜の大きくて、豆がある手にちょこんと乗っかっていた。

今も喧嘩をしているのだろうか。 その手は少しゴツゴツとしている。

いらねぇの?

いくら待っても返事がない蘇枋に、桜は首を傾げた。確か菓子だったら食ってたよな?と、こちらをこっそり伺う様な、優しげな声だった。

蘇枋

ううん。1つ貰っておくね。

蘇枋

きっとこのお茶にも合うはずだから。

ありがとうと、礼を言い、蘇芳は桜の手からクッキーを1つ貰った。 彼から貰えたことが嬉しくて、彼が自分の好きな物を覚えてくれていて、なんだか心が暖かくなる。やっぱり好きだな。そう口に出しそうになって、慌てて口元を押えた。

蘇枋

この袋、見たことないね。どこのお菓子だろう。

最近できた菓子屋にあったらしい。

結構若者の間で人気なんだと。

俺もよくわかんねぇ。と、桜は青年らしい笑顔で笑った。 彼はかわらず、流行りの物には疎いらしい。

蘇枋

ふふ、俺も今度行ってみたいなぁ…

場所、聞いといてやるよ。

クッキーをくれた教師からだろうか。 もし女の人からだったら……嫌だな。 腹の奥底に収めていたはずの独占欲が、今にでもふつふつと溢れ出しそうになっていた。

蘇枋

ねぇ桜くん、そのお店じゃなくてもいいから、

蘇枋

今度の週末、一緒に出かけてくれない?

蘇枋

ほら、町の風景も結構変わっちゃったみたいだし、

良かったら案内して欲しい。 と、それらしい理由を並べて、今の話を遠ざけた。お願いだから、今は俺だけを見て欲しい。そんな気持ちを包み隠して。

蘇枋

前俺が行ってた和菓子屋さんも無くなっちゃったみたいでね?

蘇枋

お菓子探し、手伝って欲しいっていうか…、

ふーん?いいぜ。

確かに今のお前じゃ困ることも多いしな。と、怪しむことなく賛成してくれて、思わずほっと胸をなでおろした。 そうこうしていると、ポットのお湯が湧いたのか、先程までぶくぶくと泡立っていた水が、今は静かな程に凪いでいる。

蘇枋

お湯が沸いたみたいだね。桜君、座って待っててくれる?

何年お前のこと待ったと思ってんだ。

そんくらいよゆーだわ。

蘇枋

ふふっ、そうだね。

軽口を叩きあいながら、蘇枋は軽くお湯を入れ、茶器を温め始めた。 1度お湯を捨て、お気に入りの茶葉を準備する。

蘇枋

出来上がるまでが楽しみだね。

茶器を温め終え、Tバックを急須にいれた。 仄かな、甘くもさっぱりとした様な香りがほけんしつをつつんだ。2人分のティーカップに茶を注いで、クッキーと共にに美味しく頂いた所で、桜がポツリとかたりだす。

お前のもってくる茶って飲みやすいよな。

俺でも飲める。

それはそうだ。この茶葉は、彼を思い浮かべながら買ったのだから。ハーブ系はきっと苦手だろうな、スッキリとした味わいの物は飲んでくれるかな。甘いものはどうかな。いつも彼の顔を思い浮かべながら、買っているのだ。自分がどんな顔をしているのか、それはきっと、砂糖を煮つめた物よりも甘く、柔らかい笑顔だっただろう。

蘇枋

そう言って貰えて嬉しいよ。

ふわりと甘い茶菓子の様に、笑ってみせると、桜の白と黒とで日本に別れたアホ毛が、ビビッと何かに反応をした。

つ、つーか!そろそろ予鈴なるぞ!

さっさと戻れ!! 赤い顔を誤魔化す様、桜は人差し指をピンと引き戸を指さし、顔は蘇枋から背けられていた。

なんとも面白くない。 自分で顔を赤く染めて、照れている彼の顔を見ないなんてもったいない。 数年ぶりに、彼の赤く染った顔をみたい。

蘇枋

だめ。こっち向いて。

がっ、と音を立てて彼の頬を両手で掴み、無理やり蘇枋の方へと顔を向けさせる。 びっくりしすぎたのか、それとも他の理由なのか、桜は目を見開き、体をビクリと大きく跳ねされるだけで、抵抗はしてこなかった。

蘇枋

今は俺といるんだから、俺だけ見ていて、ね?

彼の身長が、自分より高いことをいいことに、自分の顔をフルで活用して、上目遣い、少しうるっと赤い隻眼を潤ませた。

桜の左右で違う綺麗な双眸は、大きく見開き、口からは小さく、ぐっ、と声が漏れていた。

…さっさと戻れよ。

出ていけと言っていた最初の威勢はどこへやら。桜の声はぐんと小さく、蚊が無くような小さな声だった。

蘇枋

うん。桜君を堪能してからね。

よしよし、グリグリと柔らかい頬を堪能した。

蘇枋

ふふっ、変な顔、笑

誰のせいだと……、

蘇枋

俺の所為だね。

んでそんな嬉しそうにしてんだよ

んー?ふふっ、と曖昧な返事を返し、桜の頬を優しく撫でた。桜は不貞腐れた様に、蘇枋と目線だけは合わせない様、最低限意地をはっている。

おい、ほんとにそろそろ、…

蘇枋

うん。もう行くよ。

名残惜しそうに、蘇枋の指が桜の頬から離れていった。暖かいものに包まれ、少し気持ち良さげな顔をしていた桜は、離れていく手を見つめながら、少し寂しそうな顔をしていた。

出しっぱなしにしていた茶器を片付けようとする蘇枋の手を桜は制した。 時間もないだろうし、あとは自分がやると。ふと時計に目をやると、確かにそろそろお昼休みの終わりを告げる時間が近ずいて来ていた。

蘇枋

それじゃあお言葉に甘えようかな。

おう。任せとけ。

蘇枋

桜くん、割ったりしちゃダメだよ?

誰が割るかよっ!

いつもの調子が戻った様に、軽口を叩きあった。引き戸に手を伸ばし、ドアを開け、 ひらりと軽く桜に手を振った。さっさといけ。と言われながら、しっしと手を払う様な素振りをされてしまい、流石に振り返してはくれないか、と少しだけ肩を落とした。

蘇枋

じゃあね。

おう。

本当の本当に、蘇枋が出ていった後、桜は小さく息をついた。 広げられたカップや急須を割らないようにホッと持ち上げ、洗い場へと持って行った。

置いてある柔らかなスポンジに泡を付けて、茶器をゴシゴシ洗った。 冷たい水が桜の手を濡らし、洗い終わった後も、ツゥっと水滴が零れた。 冷たい水に触れたあと、思い出すのは蘇枋の温かな体温で、先程優しい手つきで触られていた頬を、恐る恐る自分で触れた。

はぁ、あいつほんと、ふざけんなよ。

こっちがどんな気かもしらないで。 赤くなった頬は、いつまでも上気していて、熱が引く気は無かった。

自分が蘇枋の事を好きだと、そう気づかれれば、彼はどんな顔をするのだろうか。今まで通り接してはくれないだろうか。今まで通り、笑ってはくれないだろうか。もう、隣にはいてくれないだろうか。

そう考えると、先程まで激しくドクドクと動いていた心臓が、キュッと、縛られた様な気持ちになった。

この気持ちは、一生箱に入れて閉じ込めておこう。そう、もう一度数年越しに決めてから。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

5

ユーザー

今回も素敵なお話ありがとうございます✨ こんばんは。yukiです〜、私情によりこちらのアカウントからコメントさせて頂きます🙇‍♀ 年下蘇枋×年上桜、普段見られない二人がみられるこちらの作品、とても好きだったので連載再開していただき嬉しく思います😖💕 個人的には前からとても素敵な書き方だったと思うのですが、今は更に登場人物の感情などが上手く表現されていて尊敬します🙂‍↕️

ユーザー

このお話、前話した通りに投稿する気はなかったんですが、投稿していたストーリーの1つが無事完結して、時間が出来たので、久しぶりに投稿してみました笑 振り返ってこの作品をよんでたんですけど、書くのが下手すぎてちょっと笑っちゃいました笑 昔の方が恋愛要素はあったんですけど、書くのは今の方が上達してるんじゃないかという気づきがありまして、自分も勉強する機会がありました😌

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