いふ
囚人番号2番、飯だ。
ほとけ
……………
いふ
…2番?
このお兄さんは僕の監視をしている看守長さん。たまに話し相手になってくれる。
ほとけ
…なんでもないです
いふ
…そうか
いふ
…2番。貴様、冤罪だそうだな
ほとけ
……え?
なんで今更…それは2年前、ここに入れられた時に話したはずで
いふ
とある俺の知り合いの貴族からの話だ。
公爵が刑務所や警察署に圧をかけて貴様は死刑とされているそうだな
ほとけ
そうなんですか…?
いふ
まあなんか知らんけど、貴様は公爵に命を狙われているらしい。
ほとけ
………
いふ
…だがな、その話を所長にしても通してくれなかったんだよ。
ほとけ
ですよね、僕なんて…
いふ
………
ほとけ
どうせ僕なんて、社会のゴミなんです。
生きてる価値なんてない。だから僕はこうやって………
いふ
生きてる価値のない人間など、この世にはいないけどな。貴様以外にも何人もの死刑囚を見てきたが、奴らだって生きる価値がないと判断された訳では無い。ただ、殺すことを罰とされるほどの大罪を犯しただけだ。
ほとけ
…………
いふ
なんでお前は冤罪を晴らそうとしない…?
ほとけ
僕は、社会でもずっと蔑まれてきました…
だから、僕なんて要らないんじゃないかって。死んだ方がマシ。そんな時に僕は死刑って言われたんです。誰かを殺して死刑になるよりも、冤罪をかけられて死刑になった方が、僕以外の誰も傷つかなくて済む…
いふ
…こんなこと言うやつが、死刑囚なわけないよなぁ………
ほとけ
……
いふ
2ば…
いふ
…ほとけ。誰も傷つかないなんて嘘だ
ほとけ
…そんな訳。誰も僕のこと心配なんてしてないじゃないですか。傷ついてたら、こんなに放置されてないです
いふ
少なくとも俺は傷ついてるよ
ほとけ
……そんな慰め、要らないです
いふ
本心から言ってる。
ほとけ
……………
いふ
いいかほとけ。今お前が喋ったことは所長に伝える。所長や弁護人の手を借りて、お前の冤罪は晴らす。
ほとけ
……死なせてくださいよ
いふ
…嫌だ、俺が死なせない。
ほとけ
死にたいのに……っ!執行猶予なんて要らないんです、僕はさっさと死んでこの世から、こんな僕からおさらばしたかった……!なんで、死なせてくれないんですか!?なんで、僕を殺してくれないんですか!?
いふ
それはお前を必要としてるやつがいるからだ。
ほとけ
要らないでしょう!?僕なんて!無能な役立たずなんですっ……
ほとけ
さっさと…殺してよ……っ
いふ
俺はお前に死んで欲しくない。
ほとけ
…なんで?たった2年、僕のことを見張ってただけの人が……
いふ
…お前が好きなんだ
ほとけ
………
いふ
最初はただの死刑囚だと思ったけど…話を聞くうちに、お前の良さに気づいたんだ。
いふ
お前の生きる意味がないなら…お前の生きる意味は、俺にしてくれないか…?
ほとけ
僕の生きる意味が、あなた…?
いふ
そうだ。俺のために生きてくれたらいい。
ほとけ
あなたのために、生きる……
いふ
お前を必要としてるのは俺だ。俺が必要としてる。だからー
いふ
『生きて』
ほとけ
っ……ううっ…ポロポロ
涙を流したのなんて、何年ぶりだろう。
久しぶりに触れた、優しさに。
僕の心は耐えられなかった。
ほとけ
…!?看守長さん…?
いふ
いいよ、いっぱい泣け
ほとけ
ううっ…大好きです……っ…
いふ
…泣き止んだ?
ほとけ
はい。ありがとうございます…あの!
いふ
ん?
ほとけ
お名前、は…?
いふ
俺の名前は…
いふ
『If』だよ
ほとけ
いふくん……!大好きですっ!!
いふ
ん。じゃ、俺がなんとかしとくからな。『ほとけ』