一覧ページ

冷たい視線の監獄

第1話 - 九番の沈黙と、裏切りの鎖

2025年12月05日

#日常組

#日常脱獄

#嫌われ

深藍

クロノア（9番）

（小さく息を吐く）

クロノア（9番）

『はぁ、今日も、空は狭いな。この鉄格子越しじゃ、青さも濁って見える』

ぺいんと（8番）

よぉ、九番。またぼーっとしてんのか。飯の時間だぞ

クロノア（9番）

...ああ、ぺいんと

クロノア（9番）

『8番の、この声。冷たいな。前の、あの明るさはもう...ない』

しにがみ（6番）

（舌打ち）...チッ、飯ぐらいさっさと食えよ。見たくねぇんだよ、お前の顔

クロノア（9番）

...ごめん

クロノア（9番）

『6番まで...。あの時、俺が...。やっぱり、俺が悪いのか』

ぺいんと（8番）

別に謝罪なんていらねぇんだよ。行動で示せよ、九番

しにがみ（6番）

もう示しようがないだろ。手遅れだ、裏切り者

クロノア（9番）

（ギュッと目を閉じる）

クロノア（9番）

『裏切り者...。その言葉が、一番、心臓を抉る。でも、俺は...』

リアム・バッカード看守

おい、静かにしろ！食堂で騒ぐな、囚人ども！

ぺいんと（8番）

チッ...。看守のリアムだ。今日は機嫌が悪そうだな

しにがみ（6番）

まぁ、どうでもいい。九番、お前、俺たちのシマに近づくなよ。飯も別で食え

クロノア（9番）

…わかった

クロノア（9番）

『別...か。俺はもう、彼らの「仲間」じゃないんだ』

リアム・バッカード看守

九番、お前は少しこっちに来い。独房棟の掃除だ

クロノア（9番）

はい、看守

クロノア（9番）

『リアム看守は、いつも公平だ。彼らのように、俺を個人的に嫌ったりはしない』

ぺいんと（8番）

へっ、独房棟の掃除たぁ、ご苦労なこった。せいぜい綺麗に孤独を磨いとけよ

しにがみ（6番）

（小さく笑う）ざまぁ

クロノア（9番）

（無言で立ち去る）

クロノア（9番）

『彼らの嘲笑が、背中に刺さる。いつから、こんなことに...。あの脱獄計画の、ほんの小さな...小さなミスが、全てを変えた』

ジェイ・ステイサム看守

お、九番じゃねぇか。独房棟の掃除か。ご苦労さん

クロノア（9番）

ジェイ看守。いつもお気遣いありがとうございます

クロノア（9番）

『ジェイ看守も、俺を特別視しない。ただの囚人として扱ってくれる』

ジェイ・ステイサム看守

気にするな。真面目にやってりゃ、誰かは見てるもんだ

クロノア（9番）

…はい

クロノア（9番）

『真面目に...か。俺は、ずっと真面目にやってきたつもりだったのに。なぜ、こんなことになった』

ジェイ・ステイサム看守

（独り言のように）しかし、お前の仲間...八番と六番は、お前に随分と冷たい目ぇ向けてんな。何かあったのか？

クロノア（9番）

（一瞬、動きが止まる）...いえ、何も

クロノア（9番）

『言えるわけがない。俺が、彼らの計画を台無しにし、その結果、ぺいんとと、しにがみを、危険な目に遭わせてしまったなんて』

ジェイ・ステイサム看守

そうか。まぁ、囚人同士、色々あるんだろう。仕事に戻れ

クロノア（9番）

（膝を抱える）

クロノア（9番）

『今日の、あの時...ぺいんとが言った言葉。「手遅れだ、裏切り者」...。俺は、本当に裏切ったのか？』

クロノア（9番）

『いいや、俺は、ただ...。俺は、ただ、彼らを守りたかっただけだ。あの時、あの看守が...あの看守の罠に、彼らがハマるのが見えて...』

クロノア（9番）

『俺の判断は、彼らにとっては、最悪の裏切りだった。彼らの、命がけの、唯一の希望だったんだ...』

スティーブ・ステイサム看守

（巡回中の足音）

クロノア（9番）

（壁によりかかる）

クロノア（9番）

『スティーブ看守の巡回時間だ。この時間だけが、唯一の静寂』

スティーブ・ステイサム看守

（小声で、扉越しに）九番。お前は、悪くない

クロノア（9番）

（驚いて、息をのむ）！

クロノア（9番）

『スティーブ看守...？今、なんて...』

スティーブ・ステイサム看守

（声は小さいが、はっきりと）言われたことは、気にするな。お前は、正しい選択をした

クロノア（9番）

（心の声が溢れ出す）！

クロノア（9番）

『正しい選択...？誰にも理解されないと思っていた。この世界で、俺だけが、あの時の選択を後悔していないと、思っていた...』

クロノア（9番）

『でも、看守が...。俺を嫌っていない、この看守が、そう言ってくれるなんて』

スティーブ・ステイサム看守

（足音が遠ざかる）

クロノア（9番）

『正しい選択...。でも、その選択の結果が、これだ。親友たちからの、絶対的な、嫌悪』

道化師

オヤ、オヤ？九番サン、元気ガナイネ？

クロノア（9番）

（無視）

クロノア（9番）

『道化師...。刑務所の、奇妙な存在。いつも、人の心の隙間に入り込もうとする』

道化師

ワタシハ、知ッテイルヨ。君ガ、ソノ二人ニ嫌ワレテイル理由ヲネ

クロノア（9番）

...（振り返る）

道化師

フフフ。君ハ、彼ラノ自由ヲ奪ッタ。希望ヲ、ブチ壊シタ。ソレガ、彼ラノ憎シミノ、根源サ

クロノア（9番）

…それは、違う

クロノア（9番）

『俺は、彼らの命を...』

道化師

イイエ、ソウダヨ。人間ハネ、生きル希望ガ、生キテイル現実ヨリ、重イ時ガアルノサ

道化師

君ハ、ソノ希望ノ、殺人者。君ハ、彼ラノ世界カラ、消エルベキ存在ダ

クロノア（9番）

（心臓を掴むような痛み）...！

クロノア（9番）

『希望の、殺人者...。まさか、そこまで...』

ぺいんと（8番）

（遠くから）おい、九番！また道化師とつるんでんのか！いよいよ頭もおかしくなったか？

しにがみ（6番）

あんな奴、触るなよ、汚ぇ

道化師

（クロノアに顔を近づけて、ささやく）

道化師

...ホラネ？もう、君ノ居場所ハ、ナイノサ。彼ラハ、君ノバッドエンドヲ、望ンデイル

クロノア（9番）

（深く、冷たい絶望を感じる）

クロノア（9番）

『バッドエンド...。俺の、終着点...』

クロノア（9番）

...俺は、どうすれば

クロノア（9番）

『俺は、彼らの希望を壊した代償として、この嫌悪と、孤独を、永遠に受け入れ続けるしかないのか』

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

深藍

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

冷たい視線の監獄

第1話 - 九番の沈黙と、裏切りの鎖

作者の他の作品すべて見る

#日常組の新着小説
一覧

関連するタグ

冷たい視線の監獄

第1話 - 九番の沈黙と、裏切りの鎖

作者の他の作品すべて見る

#日常組の新着小説一覧

関連するタグ

#日常組の新着小説
一覧