コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
R I s i d e
放課後
SA
RI
放課後、帰り支度をする俺の 元へさとみが寄ってきた。
新しいクラスになってみても、仲のよさは変わらない。
ちなみにるぅとくんは吹奏楽部所属のため、放課後は基本、 俺とさとみだけだ。
SA
RI
悩むさとみをとりあえず 誘ってみる。
だって、バイト先でも会える なんてうれしすぎるじゃん。
もちろんそんな気持ち、 態度には出さないけど。
俺がバイトしているのは "ベーカリーカフェRABBIT" というカフェ兼パン屋さんで、高1の春からずっと 働いてるところ。
さとみもよく食べに 来てくれる。
SA
RI
そんな会話をして笑いあいながら、一緒に教室をあとにする。
そこまでは順調だったのに、 昇降口を出たところで 俺の足はピタッと止まった。
佐藤くん
RI
なぜならそこに彼氏である佐藤くんが立って待っていたから。
優しい顔のはずなのにどこか 悲しそうな表情の彼を見て、 『まただ』と思った。
佐藤くん
RI
佐藤くんの言葉にただ謝る ことしかできなくてうつむく。
さとみに先にRABBITへ行ってもらうように頼んで、俺は あらためて彼と向きあった。
佐藤くん
RI
佐藤くん
RI
佐藤くん
にこりと笑う佐藤くんは、1度だけ優しく俺の頭をなでる。
彼女がほしいという理由だけで付き合う人にはしないけれど、俺のことをちゃんと『好き』 だと告白してくれた人には 毎回確認をしていた。
佐藤くん
RI
ツン、と申し訳なさが募る。
俺はズルい。こうして別れ話をするたびにそれを痛感する。
付き合うときは思うんだ。
この人を好きになれたらって。
あんなやつのことなんか忘れて、幸せになってやるって。
それでも、どうしてもさとみ 以上に想うことができない。
ほかに好きな人がいるのに別の男の子と付き合うなんて、最低なことをしているのはわかっていても、気持ちは一切揺らぐ ことなくさとみへと まっすぐに向いている。
佐藤くん
RI
俺はそう簡単に、あいつの ことを忘れられない。
今回もその現実を 突きつけられた。
SA
RI
佐藤くんと別れてRABBITに 行くと、厨房に1番近い窓側の席に座っていたさとみに 別れたことがすぐバレた。
まぁ、あんな雰囲気に 居合わせればそんなこと 察するだろうけど。
その原因がさとみだなんて、口が裂けても言えるわけがない。
SA
RI
意外にも出勤時間までもう数分の猶予があった俺は、お客さんがこいつしかいないのをいい ことにその場でエプロンを つけながら話を聞く。
が、その動きはさとみの ひと言によって止められた。
SA
RI
さとみからの思わぬ報告に、 目を見開く。
え、だってそんな話 聞いてない。
RI
SA
RI
SA
RI
はぁ、とため息をついて エプロンの次に三角巾をつけた俺は、私物を置きに厨房へと 入っていく。
荷物を厨房奥のロッカーにしまい、社員である職人さんにあいさつを済ませて再びホールへ出ると、「ガーリックサンドふたつね」と何事もなかったかのように注文してくるバカがいた。
RI
SA
RI
そして、そんなバカに普通に 対応する俺も負けない くらいにはバカだと思う。
厨房にオーダーを伝えて、 できあがりを別作業を しながら待つ。
RI
SA
しばらくしてテーブルに 出来立てのガーリックサンドを運ぶと、さとみはそれを おいしそうに頬張った。
こいつは、1度気に入った ものに対しては一途な性格だ。
梅味のポテチもそう、 チョコビスケットもそう。
RABBITでも調理パンは ガーリックサンド、菓子パンはチョコあんぱんと、頼むものは 固定されている。
……やつの好みを完全に把握 している自分には、気づかないふりをしておくとして。
──カランカラン
RI
さとみはそれから1時間弱 窓側の席を占領してから、俺に 「がんばれよ」と言いのこして帰っていった。
そんなひと言で、このあと 俺のやる気が満ちあふれたことは言うまでもない。
次の日の朝
RI
SA
RI
SA
今日の登校は、たまたまタイミングが合ったさとみと一緒。
同じ学区の中学に通っていた くらいだから、俺たちは 家が近い。
お互い歩いて10分 ほどの距離だ。
ちなみに、中学は俺の家の方が近かったけど、高校になると さとみの方が近い。
SA
RI
SA
プッと同じタイミングで ふき出して笑う。
朝からこんなに楽しい登校が できるのはさとみのおかげだ。
本当は毎朝約束して一緒に 行きたいところだけど、恋人 でもない俺たちがわざわざ そこまですることもないから。
だから、通学路で登校の タイミングが合う朝は、 俺にとっては幸せな1日の 始まりだったりする。
学校
RO
RI
SA
教室へ入ると、先に登校して いたるぅとくんが俺にだけ わかるようにニヤッと笑った。
はいはい、あとでイジられて やりますよ
るぅとくんは俺からさとみの 話を聞くのが……というか、 それを話す俺をわざと からかうのが好きだ。
だからこそ、こうして一緒に 登校して来た日なんかは話を 聞きたがる。
あ、その前に佐藤くんと 別れたことを伝えないとな。
ついでにさとみがアサヒくん と別れたことも。
RO
RI
席に座ってさっそく話すと、 意外とるぅとくんは驚いた。
だって俺が別れることも、さとみが別れることもよくある話。
それなのに驚いていたのは、 別の観点からだったみたいで。
RO
RI
俺も言われてから 初めて気がついた。
さとみが別れたときには俺には彼氏がいて、俺が別れたときにはさとみには彼女がいたから。
お互い彼氏彼女がいる期間はよく被っていたけど、お互いいない期間が被るのは初めてだ。
SA
RI
背後から急に聞こえた声に、 体がビクリと反応する。
その正体は言わずともわかる。さとみしかいない。
SA
RI
SA
RI
そんなこと急に言われたら、 ドキッとしないわけがない。
なのに、サラッと言ってくる さとみがムカつく。
それはもう、 殴ってやりたいくらいに。
自覚なし発言で振りまわさ ないでよ。このバカ。
SA
それからすぐに、さとみは思いついたようにニヤッと笑う。
RI
SA
急に変な話を持ち出した さとみに、もうツッコミ どころは満載だった。
だいたい、ふたりとも恋人を 失ったのにお祝いって……。
やっぱりバカだ、こいつ。 お気楽星人すぎる。
RO
SA
そこになぜかるぅとくんまで 便乗し、計画が進んでいく。
さとみが女の子をすべて 名前で呼び捨てすること にはもう慣れた。
ヤキモチなんて、いちいち 妬いていられない。
SA
RO
RI
俺考え事をしている隙に、 計画は実行へと向かう。
もう止めることもできず、 俺たちは放課後"フリー祝い" とやらでなぜかラーメンを 食べに行くことになった。
放課後
SA
RO
RI
放課後、本当にやってきた ラーメン屋さん。
出来たて熱々のラーメンどんぶり3つが並ぶと、さっそくさとみとるぅとくんは食べ始めた。
RI
一方、猫舌な俺は ひたすら冷ます。
SA
RI
SA
そう言いながら、ウマっ、 なんてのんきに言って ズルズルと麺をすするさとみ。
こんなやつが女子に モテるんだから不思議だ。
RO
RI
るぅとくんもるぅとくんで のんきに食べていたけれど、 1番最後まで食べていたのは やっぱり俺だった。
SA
RI
結局、食べるのが遅い俺に 合わせてあれから餃子セット を頼んださとみ。
それでも食べ終わったのは 俺とほぼ同時なんだから、 男子の胃袋は恐ろしい。
お店を出てしばらく 3人で歩く。
RO
SA
RI
途中の別れ道でるぅとくんと バイバイし、俺はさとみと ふたりきりになる。
その展開はドキドキするはず なのに、俺たちの間にそんな 空気はみじんもなかった。
SA
RI
いつもと同じ、どうでもいい ことで笑って歩く帰り道。
どちらかといえば、ある意味 こっちの方が居心地がよかったりするのかもしれない。
でもやっぱり彼女として、 こいつのとなりを歩きたいよ。
そう思ってしまうのは 俺のワガママなんだろうか。
SA
RI
さとみが本来曲がるべき角を 通り過ぎて、俺の家路に入る。
なんだかんだで辺りが暗くなる時間帯であれば、こいつは必ずと言っていいほど俺を家まで 送ってくれる。
SA
RI
SA
RI
送らなくていいと言っても 送ると言いはるさとみだから、ちゃんと褒めたのに。
「棒読みすんな」と頭を ペシッと叩かれた。
SA
RI
もう少しで家だというときに、さとみが再び口を開く。
SA
RI
一瞬、耳を疑った。
次の彼氏って……。 昨日の今日でできる わけがないじゃないか。
俺は、お前が好きなのに。
RI
SA
RI
安心した、という言葉に 過剰なほど反応してしまう。
なにそれ、どういう意味だよ。
SA
RI
けげんな顔をしたのがわかったのか、さとみはどこかあわてた様子で苦笑する。
俺に彼氏ができてほしく ないって、そういう意味かと 少し期待してしまった。
そんなわけないのにね。
RI
SA
ポツリとつぶやいたさとみの その言葉には聞こえないふり。
俺だって、こうなりたくて なったわけじゃないんだから。
遊び相手でいいから、お前の 近くにいたかったんだよ。
ただ、それだけなのに。
RI
SA
家の前まで着くとさとみはいつも通りヘラリと笑って、ついでに俺の頭をグリグリとなでた。
RI
SA
RI
キッとにらんでも、こいつに そんなのが効くわけもない。
俺がどんなに髪を決めて オシャレをしても、さとみの 前では無駄というわけだ。
RI
めずらしくそれがズシンときた俺は、悟られないようにやつを軽くあしらう。
「かわいくねぇ」なんて言い ながら道を引き返すさとみに、 「知ってるよ」と小さな声で 言い返しておいた。
▶▶▶NEXT