この作品はいかがでしたか?
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Menside
俺たちが帰ってきた時
普段なら火がついたように騒がしくなる家は
その火が消えたように静まりかえっていた
居心地が悪くて
動きたかったけど動けなかった
話したいけど
口が開かなかった
目の前にいるドズさんとおらふくん。
2人とも目に光がなかった。
ぼんさんも動かない。
誰も一言も発さない。
そんな状態がしばらく続いて。
いつの間にか俺は自室にいた。
ヒュオオオと風の音が耳をきる。
俺の髪が風に吹かれ、靡く。
そんなことはものともせずに
頭の中では考えがぐるぐる巡っていた。
仲間の死を聞いて。
家に帰ってきて。
俺は気づいた。
俺は泣いてもなければ
悲しんでもないし
悔やんでもない。
哀しみを怒りにかえることも無い。
ただただ何も感じなかった。
そんな俺は異常だと思う。
でも
リビングで細くやつれ、幽霊のように座っている
ドズさんと
目の焦点があってなく天井を見上げ、何かぶつぶつ呟いている
おらふくん。
きっと2人も壊れているのだろう。
そんなことを考えている自分がどうしても嫌で。
嫌で
いやで
イヤで
たまらなかった。
冷たい風が頬を撫でる感触に気づき
窓を閉めようと動く。
目の端に映るブルーシート。
それがなんなのか気づいておきながら
気付かないフリ。
そっと窓を閉める。
俺達は
あの時
どうしておくべきだった?
なんとなく。
今、注意して。
意識して思い返してみて。
気づいたこと。
もう、大丈夫。
そう言った君の目からは光が消えていた
あぁ、ごめんな、おんりーチャン。
勝手に俺らの中では
救い出した”つもり”になってて。
根本的な”解決”にはなっていなくて。
ーーーーーー
ーーーーーー
MEN
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そう言って目を閉じた。
意識が闇に落ちていく中
閉じられた目からは涙が一筋流れた。
頬を伝って流れていき
ベッドに吸い込まれていった。
変な音がした気がする。
ーーー?
5時...か。
5時!?帰ってきてからそんな時間が経っていたのか。
寝たい...
寝付けねぇ...
寝返りをうち、スマホを開く。
眩しい。
嫌になってスマホを閉じる。
また、寝返りをうつ。
ふと、ベッドに座り
部屋を見渡す。
いつもと同じ風景。
いつも通りの...
考えるのも嫌になって。
俺は思考を手放した。
暑くて、気持ち悪い。
重くじめじめした空気が俺にまとわりつく
窓を開ければ涼しい風が入ってくるだろう。
だが、絶対にそれはしたくない。
クーラーを付けようと体を起こしたが
リモコンが遠い。
取る気も失せ、
ぼすっと後ろに倒れ込む。
居心地悪いなぁ
ぼーっと天井を見つめながら
そんな事をぼんやりと考える。
.........
......
そんな事をずっと考えていたら。
MEN
起きて、皆の朝ごはんを作らなければ。
そういえば昨日、
俺がいなかった時。
残された他の人は
朝ごはんを食べたのだろうか?
......
今日は月曜。
いつも通り、学校だ。
...
行きたくない。
いっそ、ズル休みするか?
こんなことを口に出していったら
きっと君は口を少し尖らせて。
ほっぺたを膨らまして。
”またそんな事いって。”
”ほら、早く皆で学校行くよ”
って。
言ってくれるのかな。
そんな少しの思い出は。
聞こえてくるサイレンで掻き消された。
ずいぶん近いサイレンだな。
そんな事を考えていると。
1階から、ドアを叩く音が聞こえた。
あれ
何で俺らの所に?
また”ーーーー”の事か?
そんな考えが頭で渦巻く。
ドズさんはーーー
確認したが、自室にはいない。
というと、リビングか?
降りる気になれないな。
今は誰にも顔を合わせたくない。
きっと俺の顔は
ぐちゃぐちゃで
ひどい顔をしているはずだから。
ぼんやりと考えながら
さっきの事を思い返す。
夢の中にさ。
おんりーがでてきたんだよな。
ーおんりー!生きてたのか!?
ー...?なんの事?
ー寝ぼけてるなら顔洗って来なよ~
ー朝ごはん今日はちゃんと俺が作ったからな!
ー嗚呼、そうか。悪い夢を見てたのか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いっそ。
あのまま、
目が覚めなかったら良かったのにな。
あの”夢”にすがりつきたかったんだ。
もう二度と、現実では叶わない”夢”
”夢”
.........
いや。
いっそなら。
この”夢”を叶えてしまってもいいかもしれないな
俺はちらりと窓の下を見やる。
さっきのサイレンの音。
てっきり、おんりーの事かと思ったけれど。
どうやら違うらしいということは
下から薄ら聞こえてくる話し声で
理解してしまった。
6時。
人が活動し始める時間。
通報されても仕方ないだろう。
ああ、羨ましいな。
きっと今頃。
おらふくんとぼんさんは
”君”に会えているのかな。
俺の部屋の窓からは
少ししか見えないけど。
おらふくんの部屋なら
見えやすいかな
そう考えた時
俺は重い体を引きずるようにして
おらふくんの部屋へと向かった。
体に重りでもついてるみたいだ。
動かしずらい。
俺は機械的にドアノブを回す。
ーギィー...
こんな静かな音すら
俺の耳には煩く感じる。
俺は窓の縁にひじを乗せ、下を見やる。
思い返される今までの日々。
俺にとっては幸せだった。
けど、おんりーにとっては
苦痛だったか?
日々を過ごしてきて
後悔したことは数え切れないほどあるが
ここまで後悔したことはなかった。
あぁ、5人いた”ドズル社”も
いつの間にか”2人”か。
そっと、窓から目線を外し
朝の光を背に受けながら部屋を後にした。
コメント
6件
あぁもうだめだ(;_;)ポロポロ