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その夜
ふとした物音で目を覚ました麗央は、額に滲む汗に気づくと同時に、異様な息苦しさに襲われていた
麗央
喉が、つかえるように苦しい
夢の内容は思い出せないのに、心臓だけが強く跳ねて、手が震えている
怖い
なにがって――わからない。でも、怖い
(……やだ、やだ……)
ベッドの中で丸まったまま、ひとりで耐えるには限界だった
薄暗い部屋を抜けて、足音を殺して階下へ降りる
ほんの少し開いたリビングのドアの隙間から、微かにテレビの光と声が漏れていた
(……みんな、まだ起きてる……)
その事実に、ほんの少しだけ安心する
でも、ドアを開けて入っていこうとして――足が止まった
胸の奥から込み上げてくるものに、喉が詰まる。どうしても声が出せない
手が震えて、扉の縁にそっと触れたその瞬間
零斗
一番に気づいたのは、零斗だった
全員の視線が一斉に向けられる
それだけで、麗央の目からぽろぽろと涙がこぼれた
麗央
言葉にならないまま、唇を震わせて、麗央はふらふらと数歩だけ前に出る
けれど足がもつれ、その場にしゃがみこんだ
零斗
零斗が駆け寄り、その肩を抱きかかえるように支える
すぐに他の3人も立ち上がり、囲むようにして麗央の前に集まった
麗央
しゃくりあげるように泣きながら、麗央は零斗にしがみつく
腕の中で、小さな体がびくびく震えていた
蓮
蓮が、そっと問いかける
麗央はこくんともふれず、ただぴたりとくっついて離れなかった
朔矢
朔矢が冗談めかして言いながら、そっと後ろから頭を撫でる
けれど、誰も本気で茶化そうとはしなかった
麗央は、ただ静かに泣いていた
泣き疲れて、腕の中で丸くなるその姿は、まるで――
守られるために生まれてきたみたいだった
零斗の腕の中で、小さく丸まったまま泣いていた麗央は、しばらくするとしゃくりあげも落ち着き、か細く呼吸を整え始めた
蓮
低く問う蓮に、麗央はくしゃくしゃに泣いた顔のまま、こくりと頷いた
零斗
そう言って、零斗は立ち上がり、抱きかかえたまま麗央を寝室へと運ぶ
その腕に重みを預けたまま、麗央は半分眠りかけている
零斗
零斗がぼやくように言っても、麗央は目を閉じたまま、ゆっくりと鼻を鳴らしただけだった
麗央
零斗
寝室のベッドにそっと横たえると、麗央はすぐに毛布にくるまり、身じろぎをした
朔矢がその隣に腰を下ろし、乱れた髪をゆっくり撫でながら呟く
朔矢
麗央
言葉とは裏腹に、指の間から顔を隠すようにして甘えるその様子は、まさに小動物そのものだった
龍牙
龍牙がぽつりと呟いた
蓮も、壁にもたれかかりながら静かに麗央を見つめている
その瞳は、わずかに陰りを含んでいた
蓮
低く零した蓮の声に、他の3人の視線が集まる
零斗が腕を組みながら唇を噛む
零斗
朔矢が、珍しく真面目な声で返す
朔矢
朔矢
龍牙
龍牙が名を出すと、空気が一瞬、凍った
零斗
龍牙
その間も、麗央はふにゃっと毛布に包まったまま、浅い呼吸で眠っていた
時折眉を寄せ、夢の中でもなにかと戦っているようだった
蓮がそっとしゃがみ、額にかかる髪をどかしながら、静かに言った
蓮
毛布の上からそっと指先で撫でる
その動きは、まるで壊れものを扱うように慎重だった
――今度こそ、何があっても
香月の影を感じ取った4人の中で、確かに、緊張が走っていた
そして、ベッドの中の麗央は
無防備なまま、4人の甘やかしに囲まれながら、静かに、眠り続けていた
だいふく
だいふく
コメント
18件
最近塾本当に忙しすぎて見れてない(涙) 久しぶりに見れてうれしい!
大好きだす
続き楽しみにしてます!🫶🏻