プロローグ
その日も確か 天気が 良い日だった気がする。
あれ ? 雨が降っていたっけ?
いや 曇りだった気がする。
せら
晴。
… やっぱり晴だったか。
晴
せら。
せら
何か用があったの?
せら。 少し前まで私の肩あたりの 身長だった彼女は
今では白く深い布団に包まれている。
晴
用が無くても毎日来ますけど。
せらに会いたいからね。
せらに会いたいからね。
制服のまま病院に来た私を見て せらが眉を下げた。
せら
素直なのか 素直じゃないのか。
ふふふ と笑うのではなく
ははっと笑う彼女。
せら
制服 似合ってるね。
せらは誰にでも頭を撫でる。
晴
来る度言ってんじゃん。
ちなみに私はあははと笑う。
せらの白い手が私の頭からするりと 離れていって
せらは横になる。
せら
…。 ごめん、ベッド、倒してくれる?
晴
うん。
体温計 点滴 癖のある薬品の匂い。
独特の雰囲気に既に慣れ始めている
せらが遠く感じて
リモコンを操作する手に力が入る。
せら
今日は 大丈夫だと思ったんだけど。
来る度に今日は、今日は、と 話してくれるせらが
とても愛おしかった。
せら
…。晴。
晴
何?
せら
おいで。
また さっきの白い手が私の方へ 伸びてくる。
ふわふわしていてさらさらしていて 心地が良かった。
せら
…。
晴
…。
せら
ちゅー、 しよっか。
いたずらっ子の様な 笑みを浮かべるせら。
晴
…。ばーか。
白く 何も無い空間で私は 彼女と過ごした。
これは
彼女が確かに"今" を過ごした記録であり
"今"の彼女と"今"の私が 過ごした
最後の7日間の物語。







