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千空
それだけ言い残して、千空は作業場を離れた
柚は相変わらず小さな声で「はい……」と返したきり、視線を上げることはなかった。
——そんな様子を、少し離れた場所で見ていた男がいた。
ゲン
にこにこと笑いながら、ゲンがひょっこりと現れる。
千空はため息まじりに言った。
千空
ゲン
ゲンはひらひらと手を振りながら、千空と並んで歩き出す。
数歩進んだところで、ふと真顔になった。
ゲン
ゲン
千空は黙って前を見たまま、何も言わなかった。
ゲンは続ける。
ゲン
ゲン
千空
ゲン
ゲン
少しだけ、声に刺があった。 でもそれは、柚を見て胸がチクリとした“優しい人”の声だった。
千空はようやく足を止め、ポケットに手を突っ込んだまま言った。
千空
ゲン
千空
ゲンは目を細める。
ゲン
千空
風が吹いた。
千空
千空
ゲン
ゲンがぼそっとつぶやく。 千空は答えず、ふっと笑ったように口角を上げるだけだった。
——いつかあの子が、自分で自分を“証明”できる日が来る。
その日を信じて、千空は柚に真実を言い続ける。
夕方の空が、科学王国の空を茜色に染めていた。
人々が作業を終え、次第ににぎやかな笑い声や湯の湯気が立ち始めるころ。 柚は、ひとりで小屋の隅にしゃがみこんでいた。
ポケットには、今日使った小さなドライバーとネジが一つ。 はめたはずなのに、なぜかひとつだけ残っていた。
柚
ポツリと落とす声は、まるで自分を責めるようだった。
柚
もうとっくにみんなは、夕食に向かっている時間。
でも柚はその場を離れられなかった。
ずっと胸の奥で渦巻く言葉があった。
——役に立ててない ——必要とされてない ——あの人の言葉も、優しさじゃなくて、妥協だったんじゃないか
そんなことばかりが浮かんできて、足が動かなかった。
柚
目を伏せ、肩を震わせながら小さく呟いたその時——
——その声に、ビクリと肩を跳ねさせた。
振り向くと、そこにいたのはゲンだった。
柚
ゲン
ゲンは悪びれる様子もなく、にこにこと笑っている。
柚
柚は反射的に、また謝ってしまった。 その姿に、ゲンはゆるく首を振る。
ゲン
柚
ゲン
その言葉に、柚の目が揺れる。
ゲン
柚
柚
ゲン
ゲンは不意に、ふっと笑みを消した。
ゲン
ゲン
柚
ゲン
ゲン
柚は、はじめてそれを“病気”と言われて、ほんの少しだけ——心が楽になった気がした。
柚
柚が、ぽつりとつぶやく。
ゲンはしばらく考えてから、言った。
ゲン
柚
ゲン
ゲンはにっこりと笑う。
ゲン
ゲン
夕暮れの光が、柚の頬に当たる。
ほんのすこしだけ——彼女の目の奥に、小さな灯がともったように見えた。