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《ビリ、ビリッ……》
紙を破る音が部屋に響く
まるで自分のものじゃないみたいに動く手を、私は黙って見つめていた
紫乃
言えなかったし、渡せなかった
あんな場面を見てしまったから
紫乃
あなたの嬉しそうな笑顔が、こんなに苦しいなんて。
紫乃
素直に祝福することくらい、簡単なはずなのに
『おめでとう』くらい、そんなの
たった一言じゃないか。
紫乃
紫乃
無くなってしまえばいいのに
こんなに悲しくなるのなら、いっそのこと、無くなってしまえ
『恋』なんて。
紫乃
机の上に散らばった、バラバラになった紙くず
もとは一通の手紙だったそれを鷲掴み
紫乃
そっと、ゴミ箱の中に落とした。