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剣持刀也
道は、一本道なはずなのに背の高い向日葵に遮られて先が見えない
僕は完全にガクくんと、はぐれてしまっていた
剣持刀也
相方を探すだけで終わっては勿体ないと、歩くペースを落として周りを見渡す
思った通り空の青に目の覚めるような黄色は、映える
空気も美味しいし来てよかったな
見上げた太陽が眩しくて手を翳す、それでも漏れ出る光に目を細めた
剣持刀也
昔、どこかでこの光景を見た気がする
こんな風に…向日葵がたくさん咲いていて
そこで誰かと
剣持刀也
小さい頃、夏休みになると田舎にある祖父母の家に2週間ほど遊びにいくのが恒例行事だった
僕が小学4年生くらいの時だろうか
神社の境内で居眠りしてしまって気付くと夕暮れ時だった事がある
不慣れな場所だったので暗くなると帰り道がわからなくなり、心細くなって泣き出してしまう僕
そんな時
?
刀也
気配もなく現れた存在に、びっくりし過ぎて涙もひっこむ
知らない大人には気を付けろと散々言われていた僕は緊張で顔が上げられずにいた
?
優しい声で頭を撫でられ、思わずコクリと頷く
?
言葉の意味は、あまり理解出来なかったけれど
何故か、この人なら大丈夫という気持ちだけが僕の中には、あった
理由は、今でも説明出来ない
ただただ不思議なほどの安心感
?
刀也
?
刀也
?
刀也
?
刀也
ふしみさん
ふしみさんが僕と同じ目線になろうと屈む 目が合うとニッコリと笑った
彼の顔は、あまりハッキリと覚えていないけど瞳が印象的な金色だった事と
手入れされた長い髪がサラサラと風に揺れて美しかった事
何より、その不思議な雰囲気が僕を魅了した
ふしみさん
刀也
ふしみさん
繋いだ手から温もりが移りそうなものだが意外にも彼の手は、ひんやりとしていた
蒸し暑い夏には、とても気持ちが良かった
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
子供ながらに変な約束をする人だなと思ったが
真っ直ぐに僕を見つめる、ふしみさんの目は、とても真剣だった
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさんが息を飲むのが伝わる
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
約束通り、振り返りたい気持ちを抑えて走って祖父の家を目指す
ちょっぴり感じた恐怖と優しくて綺麗な、ふしみさん
暗くて怖いのにワクワクした気持ちが渦巻いて僕の足を軽くした
刀也
ふしみさん
刀也
この辺りに詳しいという、ふしみさんに色んな場所を案内してもらいながら僕たちは、たくさん遊んだ
あの出来事以来、ふしみさんと僕は毎日会っている
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
顔面を手で覆って何やら呻いている、ふしみさん
顔が赤くてリンゴみたい
ふしみさん
刀也
指差す方向を目で追えば
刀也
整然と並ぶ姿は、きっと人の手が入っているのだろう養分が行き渡っていて輝いている
ふしみさん
まるで自分の庭を語るように得意気な、ふしみさん
嬉しい
きっと大切な場所を僕にも教えて、幸せのお裾分けをしてくれたんだろう
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
飽きもせず向日葵を眺めて笑い合う
ふしみさんが笑うと僕も嬉しい
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
今度は、心臓を押さえて悶える、ふしみさん
病気なのかな?大丈夫かな?
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
ビシッと僕の眼前に突き出されたのは、元気なピースサイン
真似してピースサインをすれば、ふしみさんは嬉しそうに目を細めた
ふしみさん
刀也
なんでもないと、また誤魔化して、ふしみさんは僕を抱きしめた
陽だまりみたいな匂い
慈しむような眼差し
愛しいと体全部で言われているようで
僕の胸は、きゅっと苦しくなった
刀也
ふしみさん
その後、ふしみさんに何度聞いてみても意味深に笑うばかりだった
たかが2週間程度の付き合いと言われてしまえば、そうなんだけど
僕とふしみさんは、別れを惜しむように最後の時間まで手を繋いでいた
学校の友達との方が接している時間は、断然長いのに
彼と別れるのは本当に辛いと思った
こんなの変だよね
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
言いながら、彼の長い指は僕の頬を包んで2人のおでこ同士をコツンと合わせた
ふしみさん
刀也
ふしみさん
刀也
ふしみさん
『さよなら』ではなく
『またね』と言ってほしい
なんとなく
彼を、また一人にしたくないと強く思った
『また』ってなんだろうね?
刀也
ふしみさん
僕達は、見えなくなるまで手を振り続ける
もう振り返るなとは、言われない
彼の背後で風に吹かれて揺れる向日葵が、一緒に手を振っているように見えた
小学5年生の夏
また、この季節がやってきた
祖父母への挨拶もそこそこに、急に走り出した僕を見て両親は、びっくりしていた
刀也
息が上がり汗が流れても、お構い無しで名前を呼ぶ
刀也
だけど
刀也
どれだけ呼んでも
どれだけ待っても
返事もなければ姿も見えない
閑散とした神社だけが僕の声をじっと聴いていた
あの日から、ふしみさんに会う事は無かった
紫翠