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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

ピーーーーーーー

病室中に鳴り響いた

心停止の音

あの日、あの瞬間

俺の目の前で 母さんの命が消えた

俺がまだ小さい頃だった

それでもずっと記憶に残っている場面

もうあの音は、二度と聞きたくない

もう、二度と見たくない

顔をぐちゃぐちゃにして咽び泣く人も

嗚咽しながら涙で顔を濡らす人も

誰かの心臓が止まる 瞬間も_____

母が亡くなってからは、 父が男手一人で俺を育ててくれた

高校に入学した頃、俺は父にある事を聞かされた

実は俺には生まれつき心臓に異常があり、長くは生きられないそうだ

それほど驚きはしなかった

母の死因は、遺伝からなる心臓病であったからだ

それでも俺は無事に高校も卒業し大学へ行き 初めての彼女もできて

我ながら充実した人生だと思ってた

ある日

彼女と2人で歩いてる時だった

っ!!

急に彼女の手を握る力が 強くなった

なんだ?

彼女の様子がおかしい

はっはぁっ

体が震えているのがわかる

俺は何が起きたのか分からずパニックになり

ただ真っ青な顔の彼女を見ながら 救急車を呼び 背中をさすることしか出来なかった

次第に彼女は力が抜けたかのように

日中の日差しで光るコンクリートの上に体を打ち付けられた

すぐさま救急車で運ばれた彼女は、 病院について検査を始めた

ただ彼女が目を覚ますように祈ることしかできなかった俺は、

情けない自分を憎悪していた

検査を終えて病室で目を閉じたままの彼女を見つめていると

医師に別室に呼び出され、検査の結果を伝えられた

彼女が目を覚ましたのは三日後だった

どうやら俺の彼女は

長くて10日らしい

原因不明による癌で 腫瘍が大きく手術で取り出すことは不可能とのことだ、

余命宣告をされるほどだ きっとステージ4に違いない

前々から少しずつ症状は出ていたはずらしいが、なぜ何を言わなかったのか

そもそも原因不明ってなんだよ、ちゃんと検査したのか?

あぁ、今こんなことを考えたって仕方がないのに

あぁ、ほんとに驚いた時って 涙も出ないんだな

ただただ開いた口が塞がらない

まさか彼女が余命宣告だなんて

冷や汗がじわじわと込み上げてきて

俺は猛烈な絶望感に襲われた

なんで、なんでよりによって俺の彼女なんだ

また大切な人を失わなきゃいけないのか、?

「 ...治ることはないんですか、 」

俺は下を向いたまま医師に尋ねた

不安で声が震える

医師は眉間にしわを寄せ、深刻そうな顔をして 低い声で言った

「 ドナーが現れない限りは、残念ながら...」

ん...?ちょっとまてよ

ドナーさえいれば、彼女は助かるのか...?

俺は医師の目を真っ直ぐに見つめて聞いた

「 ドナーを、ドナーを見つければ彼女は助かるんですか?! 」

1拍あけて 医師は冷めたように言った

「 そう簡単に見つかるもんじゃ… 」

「 だったら俺がドナーなります! 」

医師の声を遮って、俺はそう叫んだ

医師は困惑しているのか 驚いているのか

数秒俺を見つけたまま固まっていた

そして、俺の前に立ち、真剣な目付きで俺を熟視する

「 いいか、君が彼女さんを助けたい気持ちは分かる。 しかし、ドナーになるということは 君の体の一部が彼女のものになるということだ 」

「 彼女がこの世に残る分、 君はこの世から消えることになるんだぞ 」

医師のあまりの威圧感に 俺は一瞬体を震わした

だが、彼女のために俺が犠牲になる, そんなことくらい分かってる

「...んなことわかってる!」

「 どうせ俺は、生まれつき心臓が悪くてどっちにしろ長くは生きられない! 」

「 病気で苦しんで死ぬぐらいなら! ...1人でも多くの命を助けるために死にたい! 」

…はぁっはぁっ、、

いつの間にか、目からぼろぼろと涙が溢れていた

あぁ、愛する人の為なら、俺はこんなにも必死になれるんだな

息継ぎをせずに叫んだため呼吸が荒くなる

鼓動が激しく脈を打つのが分かる

医師は、しばらく沈黙した後

「...そうか、分かった。」

強がって"彼女のために"とか言ってカッコつけたけど、 正直怖い

死ぬのが嫌だ

それでも、 君には生きて欲しい

その思いの方が強いのは確かだ

そろそろ手術が始まる,

彼女には俺がドナーになることは伝えなかった

代わりに手紙を残しておいた

これは遺書じゃない。手紙だ。

ラブレターだ

俺は、君の中で生きるって決めたんだ

君を笑顔にするためにこの決断をした

この思いが

君に、そして、ドナーを待ってる人に届くのなら

俺のこの行動で1人でも多くの命を助けられるのなら

たとえこの体がバラバラになっても、 臓器一つ残らなくてもいい

君が生きれるなら何でもいいから

俺がいなくなっても どうか笑顔でいて下さい

また、俺以外の人と素敵な恋をして

素敵な家庭を築いて欲しい

今まで本当にありがとう

さようなら。大好きでした。

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コメント

71

ユーザー

深夜に呼んで号泣した(´;ω;`)ブワッ

ユーザー

主人公と彼女の会話、吹き出しが全くないのに主人公の気持ち(感情)が細かく書かれていて臨場感(?)感情移入とか凄かった。主人公の「命」が彼女の中で生き続ける。彼女が臓器移植を聞いたら悲しい思いをするかもしらんけど主人公は彼女の中で生き続けられて幸せなんやろうな。 コンテスト参加ありがと~!

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