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サイレン

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サイレン

1 - サイレン

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2019年12月01日

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西崎洋平の顔色が青くなった。

同僚の研究員、川崎稔と尊敬する科学者、田端真吉の密談を耳にしたからだ。

研究室を後にしてから2人の話し声が扉越しに聞こえた。

川崎稔

博士

川崎稔

例の件ですが…

田端真吉

田端真吉

ちゃんとやったよ

田端真吉

西崎君のコーヒーに「カプセルX」をこっそり入れておいた

川崎稔

ありがとうございます

田端真吉

ただし、あれは特別な薬でね

田端真吉

青酸カリのような即効性のある毒物とは違うんだ

川崎稔

というと?

田端真吉

「カプセルX」は特定の周波数が放つ「音」に反応することで

田端真吉

体内でカプセルが溶け、毒としての役割を果たすんだ

川崎稔

その音はなんなんですか?

田端真吉

サイレンだよ

田端真吉

パトカー、救急車、消防車、警報

田端真吉

サイレンならなんでも反応する

川崎稔

それじゃあ西崎が外を歩き回れば高確率で死ぬわけですな(笑)

川崎稔

警察のパトカーやら救急車が常に街を走り回ってるから

田端真吉

田端真吉

ところがどっこい、そうは問屋が卸さん

川崎稔

田端真吉

ただそばでサイレンが鳴るだけじゃ無意味だ

田端真吉

本人の耳を通じて音を拾わない限り

田端真吉

「カプセルX」は溶けない

川崎稔

つまり、西崎が耳を塞ぐか耳栓をしている場合

川崎稔

効果は表れないわけですね

川崎稔

でも、どうしてサイレンなんですか?

田端真吉

「カプセルX」は犯罪者たちが警察に捕まり不利な証言をする懸念を視野に

田端真吉

組織が私に開発を依頼した代物だからね

田端真吉

例えば、連中の1人を追うときパトカーはサイレンを鳴らすだろう?

田端真吉

その音に反応してカプセルが体内で溶ければ

田端真吉

組織の秘密を口外される心配もなく暗殺することが可能ってことだ

川崎稔

なるほど…

川崎稔

組織の連中もそれを承知でカプセルを飲んでいるわけだから

川崎稔

常に死と隣り合わせだと覚悟して活動しているんですね

川崎稔

…野暮な質問ですけど

川崎稔

用を足すときにカプセルは…

田端真吉

もちろん、そこも考慮して開発したよ

田端真吉

特殊な粘膜で胃に張り付くから排泄されることはまずない

田端真吉

田端真吉

しかし、どうして君はそれを同僚の西崎君に飲ませる気になったんだ?

田端真吉

君と彼は同期じゃなかったのか?

川崎稔

確かに同期ですが

川崎稔

博士の助手になるためにはライバルは蹴落としてこそでしょう?

田端真吉

ぷっ…はっはっ

田端真吉

君は西崎君よりもしたたかだな(笑)

西崎の額を汗の玉が流れた。

田端博士が開発した「カプセルX」とやらは恐らく、

さっき博士が出してくれたコーヒーの中に入っていたのだろう。

西崎のショックは大きかった。

死のカプセルがこれからずっと胃に張り付いているという恐怖もあるが、

なにより仕事仲間の川崎と科学者の田端が共謀して自分をはめるなんて…。

西崎は所長に早退を申し出て、川崎たちに気付かれないよう自宅へ向かった。

とにかく、あらゆるサイレンの音を聞かないようにしなくては…。

研究所から自宅までは徒歩で約15分。

不幸なことにここ最近、救急車が走り回っているのをよく見掛ける。

当然ながらサイレンを鳴らしているので、いつもの西崎なら聞き流しているが、

今日は無意識に周囲に注意を向けながら足を進めていた。

田端博士は耳から音を拾わない限り反応は起こらないと言っていた。

が、西崎はイヤホンで音楽を聴きながらサイレンの音を遮ろうと閃いたときも、

額から流れる冷や汗は止まらなかった。

帰宅中の西崎の神経はピリピリしており、

とある歌手が歌う曲のバックでサイレンが引用されていると気付いたときも、

慌てて別の曲に切り替えるほどだった。

ようやく住み込みのアパートの部屋の前に辿り着いたときは胸を撫で下ろした。

西崎洋平

(とはいえ、今後はサイレンの音に怯えなければいけない生活か)

ドアを開けようとしたとき、横から声を掛けられた。

隣人の野村広道がコンビニの買い物袋をぶら下げ、人の好さそうな笑みを浮かべていた。

野村広道

西崎さん、仕事早いね

野村広道

体調でも悪いのかい?

西崎洋平

いや、そういうわけじゃ…

野村広道

だったらちょっと寄らないかい?

野村広道

これからテレビで応援するところだから

野村広道

さあ、さあ

半ば強引に野村に連れられ西崎は彼の部屋にお邪魔した。

野村が意気揚々とテレビを点けると、落ち着いたアナウンスに混じって、

白いユニホームを着た童顔の選手たちが守備に付くところだった。

スポーツに関心のない西崎だが、今画面に広がる球技には昔夢中だった。

野村は既に買ってきたつまみと缶ビールを2人分用意して拍手していた。

西崎はいい気晴らしになるだろうと思い、野村の横でテレビに見入った。

刑事

今の話に間違いはありませんか?

野村広道

だから間違いないって言ってるでしょうが

野村は憤懣やる方なかった。

刑事の質問がもろ自分に疑いの目を向けているからだ。

野村広道

私と彼はただテレビで盛り上がってただけなんですよ

刑事

しかし、遺体には明らかな服毒死の痕跡が見受けられます

野村広道

私が彼に毒を盛ったとでもいいたいんですか、あんたは?!

刑事

落ち着いてください

野村広道

落ち着けるはずないでしょう!

野村広道

何度も言うように私は彼と一緒に

野村広道

高校甲子園を応援しながら観ていただけなんですからね!

野村広道

私らが応援したチームの勝利で試合が終わって喜んでいたら

野村広道

急に彼が苦しみだして倒れたんですよ

野村広道

もし疑うなら彼が飲んだ缶ビールを調べてみればいい

野村のいう通り缶ビールからは毒物反応がなく、刑事は唸った。

帰宅した西崎が元気そうではなかったという野村の証言もあり、

結局、刑事たちは西崎が死亡した原因が、

甲子園のゲームセットを告げるサイレンだと気付くことなく事件は自殺と断定された。

2019.12.01 作

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