本作品を読むにあたって、''あらすじ''を読んでからにしてください
父親
チサ
ZZzzzzz.........
チサ
ペリッ...
ペリッ、ペリッ...
チサ
チサ
襖(ふすま)を少し開け、隙間から父親の様子を伺(うかが)う...
父親
飯台にどてらの背中を丸くして手紙?を書いており、
ペリッ、ペリッと、便箋(びんせん)を剥ぎ取っている様子が見える
父親
チサ
チサ
チサ
襖を閉じた
チサ
チサ
Zzzzzz......
ペリッ、ペリッ......
その後も便箋を剥ぎ取る音がしばらく続いた
次の日、本堂にて
本堂 : 寺院で、本尊を安置しておく建物
住職
住職がお経を唱えていた
父親
チサ
夕べ遅くまで寝付かれなかったチサは、堪えきれずに大きなあくびをした
やがてお経が終わり...本堂から墓地へ移るとき
住職
住職
チサ
それから、父親に...
住職
父親
父親
住職
住職
などと住職は言ったが...
実際のところ、母親の死後...父親はろくに病院通いも勤めを休むこともできていない
住職
住職
住職
住職は続けて何か言いたげに見えたが、結局何も言わずにいた
父親もそれきり、口を閉じていた
母親の墓の前にて
父親は、尻の先が苔に触れそうなほど深くしゃがんで、長いこと拝んでいた
チサ
チサは、拝みの途中で一度立ち上がってから、またしゃがんだ
父親
チサ
父親
父親
今からちょうど2年前
働きに出ていた製麺工場からバイクで帰ってくる途中...
橋の袂(たもと)で大型トラックを避けようとして、
ハンドルを切り損ね、下の河原へ頭から落ちて首の骨を折って母親は死んだ
それっきり父親はそれを自分のせいにしていた
拝みを終えると、不意に合掌していた両手を膝の間にだらりと垂らした
チサ
チサ
父親
昼の少し前、駅前の食堂にて
晩春(ばんしゅん)にしては日差しが暑いほどだったが、
それでもまだ白いものを着るには早すぎて、白ずくめのチサは一目を引いた
チサ
父親
父親
チサ
ウェイトレス
ウェイトレス
ウェイトレス
チサ
昼食を終え....
[城跡を見てから、動物園や遊園地のある公園に行って、それから海を見に行く]ことにして、
バスを待っていた
チサ
といって、側のポストを指差す
父親
それからしばらくした後、バスが来た
動物園にて
その日は、週末でも祭日でもないせいか、
昼下がりの動物園は閑散としていて、獣の匂いばかりがキツい
檻に入れられた獣達
足音を聞き付けた獣達がじっとこちらを見詰めてくる
チサ
チサ
父親
遊園地の方にも、親子連れがまったく見当たらなかった
父親
父親
チケット売場の窓口
園内を歩き始める
父親
父親
チサ
チサ
一つに絞るのは少女にとってはかなり難しかったが、
結局、賑やかな飾りに釣られて''メリーゴーラウンド''を選んだ
父親
父親
父親はそう言うと、メリーゴーラウンドのチケットばかり七回分も買った
サーカスのテントに似た形の屋根の下には、色とりどりの豆型ランプが点滅していて、
床の円板には光る棒に背中を縦に貫かれた木馬が全部で十二頭、
二列になって輪を描きながら王様の馬車を引いている。
軒下の電話ボックスみたいな小屋の中には緑色の上っ張りを着た初老の女従業員がいる
父親
初老の女従業員
初老の女従業員
父親
父親
チサは着ているものに合わせて白馬を選ぶと、父親に抱き上げて貰って跨(また)がった
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
やがてオルゴールの音楽が流れ、円板が動き出した
海へ行くには、一旦街まで戻らなければならなかった
街でバスを降り、近くのレストランの二階に来た
その店は、驚いたことに壁が鏡になっており、
チサは初めて自分の目で盛装した自分の姿を見ることができた
父親
チサ
チサ
最終的に、{オムライス、フルーツサラダ、チョコレートパフェ}をとり、
別に父親と二人でピザをとった
店員
注文した料理が全て揃い、食べ始める
父親
父親
父親はそうは言ったが、少女にとってこの量はそんなに食べきれるものではない
レストランからタクシーで海岸へとやってきた
父親
チサ
バッシャーン!!
太陽は沈み、波が激しくなってきた
チサ
父親
チサ
父親
チサ
手を強く握り締めた
父親
父親
茨の中を進み、崖縁の方へ行くと
チサ
父親
父親
バッシャーン!!
チサ
父親
チサ
チサは、暮れ方の空に白く輝いている一番星を見つけた
チサ
チサ
父親
父親
父親
その晩、海岸から戻ってきて浜の旅館に仕方なく泊まることになった
チサ
おかしな夢を見た
チサ(夢の中)
メリーゴーラウンドの木馬達
昼に遊んだメリーゴーラウンドの木馬達が軽快な蹄(ひづめ)の音と共にチサを取り囲む
チサ(夢の中)
メリーゴーラウンドの木馬達
チサ(夢の中)
チサ(夢の中)
チサ(夢の中)
メリーゴーラウンドの木馬達
コッコッコッ、カッカッ
メリーゴーラウンドの木馬達
チサ(夢の中)
''近い''
チサ
チサ
父親の顔がすぐ目の前に見えた
チサ
というと、その顔がすぐさま遠退いた
起き上がってみると、父親は浴衣の前をはだけてあぐらをかいていた
チサ
父親
チサ
父親
チサ
父親
父親
チサ
チサ
父親
父親
チサ
チサ
チサ
返事が無いのは、好きにしろという合図だと思い、
隣の寝床へ這うようにしてもぐり込み、背中に密着した
そしてすぐに分かった
父親の肩と背中がひどく震えていたことを...
チサ
今度も返事は帰ってこなかった
それから...
死んだ母親が冬の寒い晩にしてくれたように、背中に自分の体の前をぴったりと張り付けて眠りに落ちた
コメント
1件
父親はチサと共に無理心中を図ろうとしていたというオチです。