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姉弟の正しい狂い方

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姉弟の正しい狂い方

2 - 姉弟の正しい狂い方 第2話

♥

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2021年07月18日

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陽路(ヒロ)

お前ら、…なにやってんだ…?

私たちの足元に倒れている人たちを見て

怪訝そうな目を向けてくる茶髪の男の子

私を抱きしめているシグはその人に

冷ややかな表情を返した──けれど

キーンコーンカーンコーン…

間延びしたチャイムが鳴った瞬間

にこっと人の好い笑顔に切り替わった

時雨(シグ)

先生、ちょうどよかった

翠雨(スイ)

(え…?)

廊下のほうをふたたび見てみると

タイミングがいいのか悪いのか

茶髪の彼のそばを先生が通りかかった

先生

君たちは、転校生の…

先生

どうかしたのかい? なにか困ったことでもあったかな?

時雨(シグ)

実はこの人たち、体調不良みたいで突然倒れてしまって

時雨(シグ)

運んであげてください

先生

…そう、か…わかった

時雨(シグ)

じゃあ、よろしくお願いしますね

時雨(シグ)

スイ、行こうか

翠雨(スイ)

…う、ん

優しくほほ笑むシグに戸惑いつつ頷く

茶髪の男の子の視線が気になったけれど

あまり見ないようにしてその場を去った

ふたりで肩を並べて廊下を歩きながら

校長室でされた説明をシグに伝えた

時雨(シグ)

…は?スイとクラス違うの?

翠雨(スイ)

うん…ひとりずつ人数が少ないところが2クラスあったみたいで

翠雨(スイ)

シグは2年1組、私は2年3組だよ

時雨(シグ)

寄付金上乗せして同じクラスに変えてもらおうか?

翠雨(スイ)

そ、それは申し訳ないよ

翠雨(スイ)

この高校への転校だって、お兄さまに

翠雨(スイ)

無理を言って手続きしていただいたんだし…

翠雨(スイ)

もちろん、シグが頭を下げてくれたおかげでもあるんだけど…

時雨(シグ)

…………

翠雨(スイ)

その代わり…お昼ご飯は一緒に食べよう?

翠雨(スイ)

…それじゃ、だめ…?

時雨(シグ)

…仕方ないね

時雨(シグ)

スイと離れ離れになるのは悲しいけれど

立ち止まったシグが私の体を引き寄せる

その手がブレザーの中にもぐりこんで

私の体を指先であやしくなぞった

翠雨(スイ)

ぁ、ん…っ

時雨(シグ)

離れる時間が長いぶん、充電しておかないとね

翠雨(スイ)

(い、いつ人が来てもおかしくないのに…)

翠雨(スイ)

(こんなところで、こんな触れ方…っ)

さっき茶髪の男の子に見られたことを

はっと思い出して、体がこわばった

翠雨(スイ)

っ…し、シグっ

翠雨(スイ)

学校では…

少し体を離して言いかけたとき

視界に入る、──シグの黒いチョーカー

翠雨(スイ)

…っ

──5年前

翠雨(スイ)

やぁっ…ん、しぐ…っ

翠雨(スイ)

お願い…や、やめて?

時雨(シグ)

…どうして?

時雨(シグ)

スイだって、ここをこうされるの…気持ちいいんでしょ?

翠雨(スイ)

ん、あぁ…っ

時雨(シグ)

ほら…気持ちよさそーな顔

翠雨(スイ)

だ、だめ、…だよ…っ

時雨(シグ)

なにがだめなの?

翠雨(スイ)

だって私たち、…双子の姉弟、なのに

翠雨(スイ)

血が繋がってるのに、こういうことするのは…オカシイんだって

時雨(シグ)

…………

翠雨(スイ)

シグ…っ

翠雨(スイ)

だ、だめだよ、ナイフ捨ててっ…?

時雨(シグ)

だってスイは僕が要らないんでしょ?

時雨(シグ)

だったら僕にはもう

時雨(シグ)

生きてる意味なんてないよね

翠雨(スイ)

シグ…! やめて!!

シグが両手で握ったナイフが光る

次の瞬間

血飛沫が視界を真っ赤に染めた──

時雨(シグ)

──スイ?どうかした?

顔をのぞきこまれて意識を取り戻した

翠雨(スイ)

…っ、あ

翠雨(スイ)

…う、ううん

翠雨(スイ)

もう…行こう?先生たち待たせてるし…

時雨(シグ)

そうだね、行こうか

その後、担任の先生と合流して

シグと別れて3組の教室へと連れられた

クラスメイトの前で自己紹介をしたけど

容姿のせいか、…うわさのせいか

やっぱりすごく好奇の目にさらされた

担任

柳野さんは廊下側のいちばんうしろの席ね

担任

困ったことがあったら、遠慮なくなんでも言ってちょうだいね?

翠雨(スイ)

はい…

担任

みんなも柳野さんが困ってたら必ずサポートすること!

翠雨(スイ)

(…あからさまにひいきするのはやめてほしいな…)

そんなことを思いながら席へ向かって

私は驚いて、目を見開いた

隣の席に──あの茶髪の彼がいたから

翠雨(スイ)

よ、よろしくお願いします

陽路(ヒロ)

…うん

翠雨(スイ)

(どうしよう、気まずい…)

陽路(ヒロ)

…今朝 校舎裏にいたのって、あんただよな?

翠雨(スイ)

あ…、はいっ

陽路(ヒロ)

俺、あのあと先生の手伝いさせられたんだけど

陽路(ヒロ)

あの倒れたやつら運ぶの

翠雨(スイ)

えっ…!ご、ごめんなさい

陽路(ヒロ)

なに、あいつら気絶させたのあんたなの?

翠雨(スイ)

そういうわけじゃ、ないんだけど

陽路(ヒロ)

…ならあんたが謝る理由なくね

かすかに苦笑する彼に、どきっとした

でもシグの行動は私のせいでもあるから

やっぱり罪悪感を覚えてしまう

陽路(ヒロ)

ごめん、名前なんだっけ?

翠雨(スイ)

あ、柳野翠雨…です

陽路(ヒロ)

すいう? へー、変わった名前

翠雨(スイ)

よく言われる…

陽路(ヒロ)

なんか意味ある言葉なの?

翠雨(スイ)

うん…、「青葉に降り注ぐ雨」って意味みたい

陽路(ヒロ)

ふぅん

陽路(ヒロ)

すげえ綺麗な名前なんだな

翠雨(スイ)

っ…え、…ありがとう

翠雨(スイ)

(び、びっくりした)

翠雨(スイ)

(昔から、変な名前だってからかわれることが多かったから)

翠雨(スイ)

(こんな自然に褒められると、なんだかどきどきしちゃうな…)

陽路(ヒロ)

俺は吉沢陽路(よしざわひろ)な

陽路(ヒロ)

ヒロでいいから

陽路(ヒロ)

隣の席だしこれからよろしく

翠雨(スイ)

あ、うん…っ、よろしくね

それからは休み時間になるたびに

クラスの人たちが周りに集まってきて

矢継ぎ早に質問を投げかけられた

お昼休みになってもそれは変わらずで…

クラスメイト1

柳野さん、それ地毛ってマジ!?

翠雨(スイ)

あ…うん、そうだよ

クラスメイト1

やっば! 異国の血入ってんのな

クラスメイト2

てか近くから見てもめちゃくちゃかわいーし!

クラスメイト2

ヒロ、隣の席なの羨ましすぎんだけどっ

陽路(ヒロ)

うるせーよ、つか寄りかかってくんな

翠雨(スイ)

(ヒロくん…人気者なんだな)

翠雨(スイ)

(周りに集まってくる人たちは、みんなヒロくんと仲がいいみたいだし)

翠雨(スイ)

(女の子もよくヒロくんに話しかけてる)

翠雨(スイ)

(かっこいいし落ち着いてるし…)

翠雨(スイ)

(すごくモテるんだろうなぁ…)

クラスメイト3

な、金髪さわっていー?

翠雨(スイ)

え…あ…

クラスメイト3

うーわ、めっちゃさらさら!

翠雨(スイ)

(い、いいなんてまだ言ってないのに)

翠雨(スイ)

(…なんだか、すごくべたべた触られてる…)

翠雨(スイ)

(どうしよう…っ、いやだ…)

陽路(ヒロ)

おい、お前やめろよ

翠雨(スイ)

…!

私の髪をかき混ぜてくる男の子の手を

ヒロくんが掴んで、離してくれた

陽路(ヒロ)

翠雨が気持ち悪がってんだろ

翠雨(スイ)

(っ…す、翠雨って)

翠雨(スイ)

(名前呼びされるなんて思わなかった…)

陽路(ヒロ)

お前そんなんだから彼女できねえんだよ

クラスメイト3

おまっ、心えぐんなよ!

陽路(ヒロ)

…翠雨、大丈夫?

翠雨(スイ)

う、うん…っ、ありがとう…

翠雨(スイ)

(ヒロくん、優しい人だなぁ…)

なんだか頬が熱くなるのを感じながら

ヒロくんと目を合わせると

ふとヒロくんの手がこちらへ伸びてきた

その手は乱れた私の髪を優しく直して

陽路(ヒロ)

…ん、綺麗に戻った

ほんの少しだけほほ笑むヒロくん

それにまた、どきっと高鳴る胸

──そのとき

時雨(シグ)

──スイに気安く触らないでくれる?

突然ぐいっとうしろから抱き寄せられた

姉弟の正しい狂い方

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