今年ももう咲いている
あの梅の花
まだ一月というのに
太陽に照らされ
赤々と咲いている
他の梅の花が咲くのは
三月辺りだろう
卒業の頃に咲き始め
入学の時に
散り始める
そんな梅の花なのに
あの梅は一足先に咲いている
まるで
一月に未練があるかのように
『狂い咲き』
あの梅の花の下には
お墓がある
お墓と言っても
小さな石を積んだ即席の墓だ
その下には
ペンダントが埋まっている
スミレの形をしたペンダント
スミレの花言葉は
「誠実」
君はこの花言葉通りの子だったね
いつも真面目で
困っている人が居たら助ける
優しい人
だからこそ
君が犠牲になったのかな
僕は
君が犠牲になって欲しくなかった
そう思うのは誰でも同じ
でも
君が生きていれば
他の誰かが犠牲になってたのかも しれない
優しい君だからこそ
あの時飛び込んで女の子を 助けたんだよね
ありがとう
そんな君はこの世に未練を残し
旅立って行ったからだろうか
君のペンダントを埋めてから
あの梅の花は狂い咲き
君の命日に花を散らす
少し悪足掻きを しているかのように
誰も忘れたりしないよ
だって君の命日は
多くの命が散った
3月11日