年下の幼なじみは

口元に不敵な笑みを浮かべて

あたしを見下ろした。

この表情は、よく知ってる。

怒っているときのカオだ。

彼の隠していることを暴く。

あたしが？

これじゃあ、主催者の思惑通りみたいじゃない。

彼に秘密があるから、何だというのか。

あたしに話したいことなら、とっくに話しているだろう。

話したくないのであれば、聞く必要もない。

その代わり

彼が話したいというなら

何時間だって聞いてやる。

それが

あたしたちのやり方だったはずだ。

彼は壁に背を預けて座ったまま

あたしを無視することにしたらしい。

主催者不明のゲームに乗るつもりなのだろう。

部屋はどこかの地下室のようだ。

堅く閉ざされたドアは、しっかりと施錠され

開けることは不可能だった。

６畳程度の狭い空間に

オレンジ色の裸電球が一つ。

他には置かれている物はない。

外部に助けを求めたくても、あたしは何も持っていなかった。

あたしも彼も、部屋着ではない。

家の外で何かがあったのだろうと予想はついたが、肝心の

何か

の部分が、記憶からすっぽり抜けている。

それに

彼の秘密をあたしが見つけたとして

このゲームの主催者はどうやって

秘密の真偽を確かめるのだろう。

つまりこれは

あたしだけが知らない、彼の秘密。

あたしは友人たちの顔を思い浮かべたが

隠し事をしていそうな人物に心当たりはない。

彼の言うとおり

みんながあたしに隠し事をしていたのだとしたら

あたしは彼の隣に腰を下ろして、冷たい壁に寄りかかった。

年下の幼なじみが

裸電球の下に立って、あたしを見下ろした。

口元は、不敵に微笑んでいる

彼があたしに向かって、小さな箱を放り投げた。

瞬間。

まるでサイコロを開くように

四方の壁が音を立てて、部屋の外側へと倒された。

堅牢な密室が、陳腐なハリボテに変わる。

部屋の残骸を取り囲むように、見知った顔が並んでいた。

一緒に死ぬなら 一緒に生きたっていいだろ？

あたしにしか聞こえない声で

彼がそっと囁いた。

了